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九話 新たな繋がり

恐るべき威力

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「見ての通り、普通の弓ならこの程度だ。まあ遠く離れた相手を確実に当てられるってだけでも役に立つんだがな」

「……役立つどころか、幅広い射程範囲内で将を狙えるのは脅威でしかないんだが……」

 俺が思ったことを呟くと、華候焔は「褒めて頂き恐縮」と愉快げに応え、すぐに肩をすくめる。

「だが勘のいい奴には避けられる時もある。弓は俺の得意武器ではないからな。専門のヤツにはどうしても精度が及ばん。だがな――」

 華候焔が弓を持った手を下すと、それを合図に後方から二人の兵士が大きな弓を運んで来る。

 そして華候焔は弓を大きな物に持ち変える。
 弓の両端に小さな滑車がつけられたもの――コンパウンドボウ。

 馬の体に取り付けてあった矢筒から華候焔が手にしたのは鉄の矢。
 キリリリ……と弦を引き絞りながら矢を構えると、華候焔の口元が嬉しげに緩んだ。

「ふむ……いいな。力が入れやすいし、普通の弓よりもさらに引ける。これならもっと――」

 独り言を呟くほどに矢が光を帯びていく。
 白い輝きは次第に赤みを増し、炎を宿したような揺らめきを生む。

 熱い。最初の一矢には熱など感じなかった。
 まるで華候焔の余りある力を燃やし、矢に詰め込んでいるように見えてくる。もしかすると本人が止めなければ、際限なく力を宿すことができるのかもしれない。

 次第に赤き光が矢の先端に集まっていく。
 凝縮されて小さくなっていく輝き――かと思えば、再び大きな輝きとなって膨らんでいく。

 辺りの空気がブルブルと震え出す。気を抜けば俺の力も吸い取られ、矢に溜め込まれてしまいそうだ。

 ククッ、と。華候焔が喉で笑った。

「普通の素材でここまで耐えられるか。ならば特殊な物で作らせばより強くなる……今日はこれくらいでいいか……っ」

 言い終えた瞬間、華候焔は矢を放つ。
 ゴォォォォォォッ、と旋風と轟音を生みながら、赤き力をまとった矢が城へ飛んでいく。

 城壁を飛び越え、城の屋根へ届いた刹那――城の上部がごっそりと消えた。

 見ていた俺も、才明も、兵士たちも、全員が息を呑む。
 心なしか城の前に配置された兵たちも固まっているように見える。

 たった一矢で城を破壊。
 投石機での攻撃でも、ここまでの威力はない。もはや大砲クラスだ。

 これが華候焔の本気なのかと俺が目を見張っていると、彼は特に誇ることもせず新たな鉄矢を手にした。

「じゃあそろそろ本気を出すとするか」

 ……今のが本気じゃない、だと?

 俺を含めた全員が華候焔の発言に固まってしまう。あまりの強さに畏怖を覚え、後ずさりする兵もいる。

 勝っているはずなのに緊張感が漂う中、華候焔は俺に手を差し出した。

「誠人様、貴方の力をお借りしたい」
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