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九話 新たな繋がり
合わせ技
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「俺の力……?」
「領主と深い絆を結んだ将は、互いの技を合わせて威力を増幅することができる。俺は誠人様にとっての特別な将であると自負している」
確かに華候焔は俺にとっての特別だ。今朝のやり取りを抜きにしても、初めて登用した将で、体どころか心まで許し始めている者。
俺は短く頷くと、背中にある竹砕棍を手にして馬上で構えを取る。
技のために意識を集中させていくと、いつもとは違う力が体の奥から込み上げてくるのが分かった。
「そのまま続けてくれ。俺も気を高められるだけ上げていく」
華候焔がきびきびとした声で俺に指示を出すと、再びコンパウンドボウを構えて力を溜め始める。
力が高まるにつれ、味わったことのない感覚に包まれる。
隣から伝わってくる華候焔の気配。熱くて、重くて、目に見えない縄のようなもので俺たちが縛り付けられていく。
そうして華候焔の力に俺が煽られていく。
どこまでも心が昂っていく。終わりなく睦み合っている時に感じる胸奥の高揚と似ている気がする。
延々と華候焔と共に空へ昇っていくかのような感覚。
あまりに胸が動悸を覚えてしまい、気を抜けば歓喜のあまり気を失いそうなほどだ。
きっと己を失えば技は出せなくなるだろう。
華候焔を幻滅させたくない一心で俺は自分を保ち続け、今の俺が高められるだけの力を宿す。
ふと華候焔を見やれば、わずかに顎をしゃくって城を指す。
力が混じり合っているせいか、華候焔の意図が手に取るように分かる。
俺は竹砕棍の先端を城に向け、華候焔の矢と違わぬ角度で並ぶ。
二人の狙いが定まった瞬間、辺りの空気が俺たちに吸い込まれるよう渦巻いていく気配がした。
「行くぞ。技を放て」
華候焔の声を合図に、俺は力を解放した。
「炎舞撃……っ!」
竹砕棍の周りに炎が生まれてその身にまとう。
そして華候焔が矢を放つと同時に、竹砕棍は俺の手を離れた。
パァッ、と竹砕棍が割ける。
細い鋼鉄が矢に絡み、炎の渦を生み出しながら敵城へと飛んでいく。
さながら大きな火の玉が放たれたような光景。
一帯が赤く照らされ、敵側からのざわつきが聞こえたような気がしたその時――ドガァァァァァァァァァァァッ! 轟音と共に城の上部がほとんど壊れ落ち、見た目に敵城が壊滅したのが分かった。
「おおっ、思った通りだ。投石機よりも遥かに威力があるな。爆炎昇龍とでも名付けようか。どう思う、誠人様?」
どこかスッキリとした顔をしながら華候焔が俺に尋ねてくる。
崩壊した城の前で敵兵たちが慌てふためき、散り散りになろうとしていくのが見える。
確かにたった二人だけで戦を終わらせてしまった。その合わせ技の威力に俺は茫然としてしまう。
「領主と深い絆を結んだ将は、互いの技を合わせて威力を増幅することができる。俺は誠人様にとっての特別な将であると自負している」
確かに華候焔は俺にとっての特別だ。今朝のやり取りを抜きにしても、初めて登用した将で、体どころか心まで許し始めている者。
俺は短く頷くと、背中にある竹砕棍を手にして馬上で構えを取る。
技のために意識を集中させていくと、いつもとは違う力が体の奥から込み上げてくるのが分かった。
「そのまま続けてくれ。俺も気を高められるだけ上げていく」
華候焔がきびきびとした声で俺に指示を出すと、再びコンパウンドボウを構えて力を溜め始める。
力が高まるにつれ、味わったことのない感覚に包まれる。
隣から伝わってくる華候焔の気配。熱くて、重くて、目に見えない縄のようなもので俺たちが縛り付けられていく。
そうして華候焔の力に俺が煽られていく。
どこまでも心が昂っていく。終わりなく睦み合っている時に感じる胸奥の高揚と似ている気がする。
延々と華候焔と共に空へ昇っていくかのような感覚。
あまりに胸が動悸を覚えてしまい、気を抜けば歓喜のあまり気を失いそうなほどだ。
きっと己を失えば技は出せなくなるだろう。
華候焔を幻滅させたくない一心で俺は自分を保ち続け、今の俺が高められるだけの力を宿す。
ふと華候焔を見やれば、わずかに顎をしゃくって城を指す。
力が混じり合っているせいか、華候焔の意図が手に取るように分かる。
俺は竹砕棍の先端を城に向け、華候焔の矢と違わぬ角度で並ぶ。
二人の狙いが定まった瞬間、辺りの空気が俺たちに吸い込まれるよう渦巻いていく気配がした。
「行くぞ。技を放て」
華候焔の声を合図に、俺は力を解放した。
「炎舞撃……っ!」
竹砕棍の周りに炎が生まれてその身にまとう。
そして華候焔が矢を放つと同時に、竹砕棍は俺の手を離れた。
パァッ、と竹砕棍が割ける。
細い鋼鉄が矢に絡み、炎の渦を生み出しながら敵城へと飛んでいく。
さながら大きな火の玉が放たれたような光景。
一帯が赤く照らされ、敵側からのざわつきが聞こえたような気がしたその時――ドガァァァァァァァァァァァッ! 轟音と共に城の上部がほとんど壊れ落ち、見た目に敵城が壊滅したのが分かった。
「おおっ、思った通りだ。投石機よりも遥かに威力があるな。爆炎昇龍とでも名付けようか。どう思う、誠人様?」
どこかスッキリとした顔をしながら華候焔が俺に尋ねてくる。
崩壊した城の前で敵兵たちが慌てふためき、散り散りになろうとしていくのが見える。
確かにたった二人だけで戦を終わらせてしまった。その合わせ技の威力に俺は茫然としてしまう。
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