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九話 新たな繋がり
褒美の独占
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軽く本気を出しただけでこうなるのか……。もしかするとその気になれば、華候焔一人だけで城を二つ三つは陥落させてしまうかもしれない。
なんて強さだと憧れを覚えながら、心の奥底に恐れが芽生える。
その気になれば俺のすべてを壊して奪うことができるのだと――。
「これで戦は終わりだ。後は敵が撤退するのを待って城に入ればいい。自兵を一人も減らさず、誠人様には力を上げるための経験が手に入り、城も奪取できる……良いことずくめだろ」
隣で自慢してくる華候焔へ、近くに控えていた才明がため息をつく。
「確かに凄いですね。しかしお二人しか戦に関わらないとなれば、他の将や兵たちに経験が入りませんから、それはそれで困ります。いくら華候焔殿が最強をさらに磨かれたとしても、毒殺されてしまえば終わりですから」
「それは十分理解してる。だからいつもは他のヤツらに譲っているんだよ。俺が本気出すだけ、誰の成長にも繋がらないからな」
「分かっておられるなら良かったです。でも、今回は非常にありがたかったです。私が考えていたものがどれほどの威力なのか、この目で見ることができましたから。しかも誠人様の力が加われば、より強く……選べる選択肢が増えて本当に嬉しいです」
華候焔に釘を刺すようなことを良いながら、それ以上にコンパウンドボウを試せたことが嬉しかったらしく、明らかに才明の顔が喜びに輝いている。表情そのものはいつもの笑みなのに、まとう空気があまりに明るくて、別人かと疑いたくなってしまう。
素直な才明の反応に華候焔がフッと一笑する。
「しっかり戦略を練ってくれよ。できれば早急に太史翔を潰して、上で余裕を見せている領主たちに並びたい」
「出る杭は打たれますからね。打たれる前にさっさと出切って、打たれないようにしたいところです」
これでやっと持ち城を三つに増やしたというのに、華候焔と才明は無謀なことを何食わぬ顔で言い合う。
だが、彼らなら最小の力で大きな戦力差を覆してしまうのだろう、という確信があった。
このゲームを勝ち上がりたいと望む俺には、彼らの不敵さがありがたい。
俺もこれからは二人の不敵さにあやかりたいと思っていると、何やら熱い視線を感じて顔を向ける。
口端をニヤリと引き上げながら、俺に熱を帯びた視線を送る華候焔。
何を望んでいるのかはすぐに分かってしまった。
「さあ。今回の戦は俺と誠人様だけが結果を出した。だからもちろん褒美は――」
「ふふ、分かっておりますよ。本日の褒美は華候焔殿の独り占め……私は後日に独り占めできるよう、戦略を練ることに専念しますね」
コンパウンドボウを用意したのは才明だ。その武器を使っての結果。彼も褒美を求める権利はあるのに、今回はそれを放棄した。
何か狙いがあるのだろうか? と内心首を傾げる俺に、華候焔は馬を寄せ、手を伸ばして頬を撫でた。
「話はついた。さっさと城を占領して、褒美を頂く準備をしましょうぞ」
俺に対して本気を出すと言った華候焔と、これから体を合わせる――。
羞恥とともに、それとはまた違う熱に体を火照らせながら、俺はかすかに頷いた。
なんて強さだと憧れを覚えながら、心の奥底に恐れが芽生える。
その気になれば俺のすべてを壊して奪うことができるのだと――。
「これで戦は終わりだ。後は敵が撤退するのを待って城に入ればいい。自兵を一人も減らさず、誠人様には力を上げるための経験が手に入り、城も奪取できる……良いことずくめだろ」
隣で自慢してくる華候焔へ、近くに控えていた才明がため息をつく。
「確かに凄いですね。しかしお二人しか戦に関わらないとなれば、他の将や兵たちに経験が入りませんから、それはそれで困ります。いくら華候焔殿が最強をさらに磨かれたとしても、毒殺されてしまえば終わりですから」
「それは十分理解してる。だからいつもは他のヤツらに譲っているんだよ。俺が本気出すだけ、誰の成長にも繋がらないからな」
「分かっておられるなら良かったです。でも、今回は非常にありがたかったです。私が考えていたものがどれほどの威力なのか、この目で見ることができましたから。しかも誠人様の力が加われば、より強く……選べる選択肢が増えて本当に嬉しいです」
華候焔に釘を刺すようなことを良いながら、それ以上にコンパウンドボウを試せたことが嬉しかったらしく、明らかに才明の顔が喜びに輝いている。表情そのものはいつもの笑みなのに、まとう空気があまりに明るくて、別人かと疑いたくなってしまう。
素直な才明の反応に華候焔がフッと一笑する。
「しっかり戦略を練ってくれよ。できれば早急に太史翔を潰して、上で余裕を見せている領主たちに並びたい」
「出る杭は打たれますからね。打たれる前にさっさと出切って、打たれないようにしたいところです」
これでやっと持ち城を三つに増やしたというのに、華候焔と才明は無謀なことを何食わぬ顔で言い合う。
だが、彼らなら最小の力で大きな戦力差を覆してしまうのだろう、という確信があった。
このゲームを勝ち上がりたいと望む俺には、彼らの不敵さがありがたい。
俺もこれからは二人の不敵さにあやかりたいと思っていると、何やら熱い視線を感じて顔を向ける。
口端をニヤリと引き上げながら、俺に熱を帯びた視線を送る華候焔。
何を望んでいるのかはすぐに分かってしまった。
「さあ。今回の戦は俺と誠人様だけが結果を出した。だからもちろん褒美は――」
「ふふ、分かっておりますよ。本日の褒美は華候焔殿の独り占め……私は後日に独り占めできるよう、戦略を練ることに専念しますね」
コンパウンドボウを用意したのは才明だ。その武器を使っての結果。彼も褒美を求める権利はあるのに、今回はそれを放棄した。
何か狙いがあるのだろうか? と内心首を傾げる俺に、華候焔は馬を寄せ、手を伸ばして頬を撫でた。
「話はついた。さっさと城を占領して、褒美を頂く準備をしましょうぞ」
俺に対して本気を出すと言った華候焔と、これから体を合わせる――。
羞恥とともに、それとはまた違う熱に体を火照らせながら、俺はかすかに頷いた。
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