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九話 新たな繋がり

誠人の憶測

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 ふと仲林アナと才明の姿が重なる。

 顔も体格も何もかも違うのに、同じ気配を感じて安堵する。
 俺は仲林アナの目を真っ直ぐに見つめ、短く頷いた。

「ありがとう……貴方と出会えて、本当に良かった」

「それはこちらの台詞です。正代選手と接点を持ちたくて、わざわざ太史翔に媚びて出陣させてもらったのですから。もしそちらから動きがなければ、わざと捕虜として捕らえられ、登用して下さるよう懇願するつもりでした。いやー、先に声をかけて下さって良かったです」

 話しを聞きながら、その時のことを思い出す。
 そういえば才明を引き抜いて軍師にしようと言い出したのも華候焔だ。

 あの時は軍師級がいるなら引き抜いて、相手の戦力を削りつつ軍師を招こうという流れで、違和感を覚えることはなかった。

 だが、それすらも意図的だったとすれば?
 華候焔にとって軍師になれる素質があれば誰でも良かった訳ではなく、才明を演じる仲林アナだからこそ招きたかった――その可能性もあるのかもしれない。

「正代選手……? 何か思うことがあるのですか?」

 仲林アナに尋ねられて俺は言葉に詰まる。
 真の味方だと言ってくれた彼を、どこまで信じてもいいのだろうかと躊躇する自分がいる。

 安易に信用して裏切られたら、ゲームの真実に気付き始めている俺はどんな扱いを受けてしまうのだろうか? 嫌な予感しかしない。

 しかし信じなければ始まらない。
 俺は一旦息を飲み込んで勇気を蓄えてから、話を切り出した。

「……もしかすると華候焔は――かもしれない」

 まだ確定ではない憶測。可能性の話。
 仲林アナは聞いた瞬間に目を点にして、すぐに「ああ」と得心がいったような声を出した。

「すごくしっくりきますね。そして現実で接点を作ってもおかしくない正代選手と私をゲーム内で深く絡み合わせて、こうして現実でも繋がれるように仕向けた……なるほど。そうなれば華候焔殿もこっちでコンタクトを取りたがってるかもしれませんね。味方なのか、敵として私たちをまとめてどうにかしたいのか……どちらなのでしょうね」

 口元に手を置いて思案する仲林アナを見ながら、俺ははっきりと確信していることを告げる。

「……華候焔は俺に本気をぶつけたいと言っていた。だから、そのために動くと思う。あの人がこっちで俺に求めているものは、本気を出しても潰れないこと……それが叶うなら、誰よりも頼もしい味方になると思う」

「それは裏を返せば、期待した強さを身につけなければ裏切るかもしれない、ということにもなりますね。どっちでも厄介な人で困ります」

 ため息交じりに呟き、首を横に振った後、仲林アナは一人頷いた。

「では、正代選手は今まで通りにされて下さい。無理に自分を演じようとせず、そのままを貫かれたほうが怪しまれませんから」

「ああ、そうする。仲林アナは?」

「私は一旦オフィスに戻って取材の編集をしながら、あの方の現実の情報を探ってみます」

 さすが現場で活躍し続けるアナウンサーだと、大人の頼もしさを感じていたが――。

「スリルがあってワクワクしてきちゃいますね。現実でもこんな駆け引きができるなんて」

 ……この大胆不敵な性格、やっぱり才明だ。
 姿は違っても本質は同じなんだと痛感せずにはいられなかった。
 
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