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九話 新たな繋がり
予期せぬ来訪
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「入ってくれ白澤。話を聞かせてくれ」
俺が言い終えた直後に扉がバンッと勢いよく開き、白澤が俺の前まで飛んでくる。
そして動揺を現わすように虚空でクルクルと回りながら俺に告げてきた。
「誠人サマー、お喜び下さいー! 英正が戻って来ましたー」
英正の名が耳に届いた瞬間、俺は目を見開く。
思わず身を乗り出して白澤へ尋ねる。
「本当か! 無事に戻ったのか?」
「ええ、ケガひとつせず戻って来ましたー。しかも――」
もったいぶるようにンッフッフーとくぐもった笑いを漏らしてから、白澤は話を続けてくれた。
「――澗宇を連れて来ちゃいましたー」
……待て。格付け三位の領主が、わざわざこちらに出向いたというのか!
力関係で言えば、明らかに俺のほうが弱小だ。所有している土地も、召し抱えている武将数も、資材や街の発展も、何もかも澗宇が上だ。それなのに俺を呼びつけるのではなく、自ら足を運ぶとは……。
驚きで固まる俺の隣で、華候焔が小さく舌打ちするのが聞こえてきた。
「アイツ、何を考えているんだ……なあ長毛玉。澗宇以外には誰が来ている?」
「それが……護衛の武将ひとりだけですー。近くに小隊が潜んでるかと思って調べてみたんですけど、見当たらなかったですー」
「大した自信だな。護衛の武将は誰だ?」
「侶普ですー。華候焔に次ぐ猛者ですー」
「知っている奴だ。力は俺のほうが上だが、侶普は軍師級の知力の持ち主……奴に内情を知られるのは面白くないな……」
華候焔は低く唸り、物憂げなため息をつく。
澗宇は華候焔にとっての特別。互いによく知っている相手だからこそ、最低限の護衛でここまで来たのかもしれない。
華候焔がいるならば傷つけられることはないだろう、という確信を澗宇は持っているのか。
二人の間にある特別さを感じて、胸の奥がずしりと重くなる。
だが華候焔は俺に誠意を見せてくれた。本気をぶつけたいとも言ってくれた。
俺たちの間にも特別は築かれているのだと思うと、うつむかずに前へ進める気がした。
「英正の頑張りを無駄にせぬよう、澗宇と話をしていかねば。すぐ支度して会いに行く。白澤、案内してくれ」
「はいー。貴賓室で待って頂いておりますので、どうぞお越し下さいー。ワタシは澗宇に誠人サマが会談したいことをお伝えしてきますー」
一礼代わりにクルリと空を縦に回ると、白澤はフワフワと浮かびながら部屋を出ていく。
バタンと扉が閉まってから、俺は華候焔を見た。
「すまないが、朝の戯れはここまでだ。今すぐ準備しなければ――」
「手伝おう。領主同士の会談なら正装したほうがいい」
ニヤリと笑ってから華候焔が俺の肩に手を置く。
「領主の格は気にするな。俺が誠人に仕え続けている……それだけで一目置かれる。言わなくても誠人なら大丈夫だと思うが、堂々としていればいい」
「……ありがとう、焔」
俺は華候焔の手に己の手を重ね、顔を綻ばせた。
俺が言い終えた直後に扉がバンッと勢いよく開き、白澤が俺の前まで飛んでくる。
そして動揺を現わすように虚空でクルクルと回りながら俺に告げてきた。
「誠人サマー、お喜び下さいー! 英正が戻って来ましたー」
英正の名が耳に届いた瞬間、俺は目を見開く。
思わず身を乗り出して白澤へ尋ねる。
「本当か! 無事に戻ったのか?」
「ええ、ケガひとつせず戻って来ましたー。しかも――」
もったいぶるようにンッフッフーとくぐもった笑いを漏らしてから、白澤は話を続けてくれた。
「――澗宇を連れて来ちゃいましたー」
……待て。格付け三位の領主が、わざわざこちらに出向いたというのか!
力関係で言えば、明らかに俺のほうが弱小だ。所有している土地も、召し抱えている武将数も、資材や街の発展も、何もかも澗宇が上だ。それなのに俺を呼びつけるのではなく、自ら足を運ぶとは……。
驚きで固まる俺の隣で、華候焔が小さく舌打ちするのが聞こえてきた。
「アイツ、何を考えているんだ……なあ長毛玉。澗宇以外には誰が来ている?」
「それが……護衛の武将ひとりだけですー。近くに小隊が潜んでるかと思って調べてみたんですけど、見当たらなかったですー」
「大した自信だな。護衛の武将は誰だ?」
「侶普ですー。華候焔に次ぐ猛者ですー」
「知っている奴だ。力は俺のほうが上だが、侶普は軍師級の知力の持ち主……奴に内情を知られるのは面白くないな……」
華候焔は低く唸り、物憂げなため息をつく。
澗宇は華候焔にとっての特別。互いによく知っている相手だからこそ、最低限の護衛でここまで来たのかもしれない。
華候焔がいるならば傷つけられることはないだろう、という確信を澗宇は持っているのか。
二人の間にある特別さを感じて、胸の奥がずしりと重くなる。
だが華候焔は俺に誠意を見せてくれた。本気をぶつけたいとも言ってくれた。
俺たちの間にも特別は築かれているのだと思うと、うつむかずに前へ進める気がした。
「英正の頑張りを無駄にせぬよう、澗宇と話をしていかねば。すぐ支度して会いに行く。白澤、案内してくれ」
「はいー。貴賓室で待って頂いておりますので、どうぞお越し下さいー。ワタシは澗宇に誠人サマが会談したいことをお伝えしてきますー」
一礼代わりにクルリと空を縦に回ると、白澤はフワフワと浮かびながら部屋を出ていく。
バタンと扉が閉まってから、俺は華候焔を見た。
「すまないが、朝の戯れはここまでだ。今すぐ準備しなければ――」
「手伝おう。領主同士の会談なら正装したほうがいい」
ニヤリと笑ってから華候焔が俺の肩に手を置く。
「領主の格は気にするな。俺が誠人に仕え続けている……それだけで一目置かれる。言わなくても誠人なら大丈夫だと思うが、堂々としていればいい」
「……ありがとう、焔」
俺は華候焔の手に己の手を重ね、顔を綻ばせた。
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