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九話 新たな繋がり
●望みは違えども
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絶え間ない快楽に溺れていく。
息はままならず、体は英正から刻まれる快感に反応して脈打ち、俺という人間が削られていくように感じてしまう。
そうやって俺を削って、すべてを奪おうというのだろうか?
誰にも俺を奪われないように――。
「えい……せ、い……っ……」
すでに力は入らず、名を呼ぶだけでも精一杯だ。もう意味のある言葉を発することが辛い。
しかし己の望みを叶えているはずなのに、行為を続けるほど飢えているようにしか見えない英正を、このままにはできなかった。
力が入らぬ腕をどうにか伸ばし、俺は英正の頭を抱く。
柔らかな髪をひと撫ですると、英正の動きが完全に沈黙した。
「……ありが、とう……俺の、ために……尽くして、くれて……」
快楽で削られて剥き出しになった心のまま、俺は英正に礼を送る。
英正が望んでいる言葉は、俺が華候焔へ向けているものなのだろう。
口にすれば英正は喜ぶだろうし、今回の功労者への一番の労いになると思う。
だが同時に、英正は口先だけの偽りを望む男ではない。
俺を信じているからこそ、俺が口にした言葉をすべて受け止めて喜びとする――俺の言葉に偽りが混じっていると気づいた瞬間、英正の心の芯が壊れる気がしてならなかった。
俺からの言葉をしっかりと受け止めようと、英正は繋がったまま動きを止め続ける。
――そして己の中へ刻み終えてから俺を深く抱き締めた。
「誠人様……っ私のワガママに、ここまで付き合って下さって……幸せすぎて、今にも魂が召されそうです」
「召されるのは、嫌だな……英正には、生きてもらいたい」
「……っ! はいっ、必ず……誠人様がすべてを手に入れるまで、私は生き抜いてみせます」
ギュッ、と。英正の腕の締め付けが強まった。
「私のすべては誠人様のもの……この身も、心も、魂も……どうか受け取って下さい。それだけで私は報われます……」
掠れた声の睦言。甘さを伴いながらも、やけに重たい。
まるで死が間近だと確信した者のような響き。
俺の知らぬところで英正は何かを聞き、背負ったのかもしれない。
ふとそんなことを思い、俺は英正の頭に頬を当てた。
「英正……何があったのか、言えないのか?」
「……はい。申し訳ありません」
「ならば聞かない。英正の望み通りにしよう」
俺の耳が英正が息を詰まらせる音を拾う。
そして安堵のようなため息を英正が吐き出した時、俺は彼のこめかみに口付けた。
「でも覚えておいて欲しい……俺は英正に生きて欲しい。そのためなら俺は、どれだけでも英正の糧になるから……」
これが俺にできる英正への精一杯。
ヒク、と英正から嗚咽のような声が一瞬聞こえた。
だが細長い息を吐き出した後、英正は俺に小さく告げた。
「あと一回だけ……いいですか?」
また快楽に俺が削られる――ズクン、と繋がり合う所が甘く疼いて心が蕩ける。
「……好きにして、いい」
俺からの許しを得て、英正が腰を揺らし始める。
たったそれだけで小さくなっていた快感の揺らめきが大波へと変わり、瞬く間に俺を呑み込んでしまった。
息はままならず、体は英正から刻まれる快感に反応して脈打ち、俺という人間が削られていくように感じてしまう。
そうやって俺を削って、すべてを奪おうというのだろうか?
誰にも俺を奪われないように――。
「えい……せ、い……っ……」
すでに力は入らず、名を呼ぶだけでも精一杯だ。もう意味のある言葉を発することが辛い。
しかし己の望みを叶えているはずなのに、行為を続けるほど飢えているようにしか見えない英正を、このままにはできなかった。
力が入らぬ腕をどうにか伸ばし、俺は英正の頭を抱く。
柔らかな髪をひと撫ですると、英正の動きが完全に沈黙した。
「……ありが、とう……俺の、ために……尽くして、くれて……」
快楽で削られて剥き出しになった心のまま、俺は英正に礼を送る。
英正が望んでいる言葉は、俺が華候焔へ向けているものなのだろう。
口にすれば英正は喜ぶだろうし、今回の功労者への一番の労いになると思う。
だが同時に、英正は口先だけの偽りを望む男ではない。
俺を信じているからこそ、俺が口にした言葉をすべて受け止めて喜びとする――俺の言葉に偽りが混じっていると気づいた瞬間、英正の心の芯が壊れる気がしてならなかった。
俺からの言葉をしっかりと受け止めようと、英正は繋がったまま動きを止め続ける。
――そして己の中へ刻み終えてから俺を深く抱き締めた。
「誠人様……っ私のワガママに、ここまで付き合って下さって……幸せすぎて、今にも魂が召されそうです」
「召されるのは、嫌だな……英正には、生きてもらいたい」
「……っ! はいっ、必ず……誠人様がすべてを手に入れるまで、私は生き抜いてみせます」
ギュッ、と。英正の腕の締め付けが強まった。
「私のすべては誠人様のもの……この身も、心も、魂も……どうか受け取って下さい。それだけで私は報われます……」
掠れた声の睦言。甘さを伴いながらも、やけに重たい。
まるで死が間近だと確信した者のような響き。
俺の知らぬところで英正は何かを聞き、背負ったのかもしれない。
ふとそんなことを思い、俺は英正の頭に頬を当てた。
「英正……何があったのか、言えないのか?」
「……はい。申し訳ありません」
「ならば聞かない。英正の望み通りにしよう」
俺の耳が英正が息を詰まらせる音を拾う。
そして安堵のようなため息を英正が吐き出した時、俺は彼のこめかみに口付けた。
「でも覚えておいて欲しい……俺は英正に生きて欲しい。そのためなら俺は、どれだけでも英正の糧になるから……」
これが俺にできる英正への精一杯。
ヒク、と英正から嗚咽のような声が一瞬聞こえた。
だが細長い息を吐き出した後、英正は俺に小さく告げた。
「あと一回だけ……いいですか?」
また快楽に俺が削られる――ズクン、と繋がり合う所が甘く疼いて心が蕩ける。
「……好きにして、いい」
俺からの許しを得て、英正が腰を揺らし始める。
たったそれだけで小さくなっていた快感の揺らめきが大波へと変わり、瞬く間に俺を呑み込んでしまった。
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