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十話 至高への一歩

確信に変わる時

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   ◇ ◇ ◇

 いつになくゲーム後の倦怠感はひどかった。

 行為にかける時間が長ければ、それだけ体力も消耗するものだが……人数が増えて、身体の至る所が激しく感じて絶頂の果てを何度も味わってしまうと、精気がごっそり奪われるらしい。

 早くベッドから身体を起こして、あの人に会いに行きたいというのに。
 思考ばかりが焦るものの、今だ回復していない身体は弛緩し、寝返りすら打てないほどだった。

 ジッとしていると、腰の奥にぽっかりと穴が開いたような感覚を嫌でも知ってしまい、落ち着かなくなってくる。

 こんなことを続けていたら、ゲームを終える日が来ても、後ろを抉られたくて我慢できなくなりそうだ。

 男に飢えて自ら誘ってしまう日が来るかもしれない。
 そう思うと惨めで泣きたくなってくる。だが、気を失う間際に聞いた華侯焔の声が、俺の揺らぎそうになる心を支えてくれる。

 まずは確かめなければ。

 俺は腹に力を入れ、身を震わせながら起き上がる。
 どうにかベッドに腰掛け、軽く目を閉じて深呼吸を繰り返し、少しずつ力を溜め、全身に力を行き渡らせていく。

 ……大丈夫。薄っすらと身体が痺れたような感覚だが、どうにか動けそうだ。

 ゆっくりと立ち上がり、フラつきながら部屋のドアへと歩いていく。

 俺が知りたいことは、このまま休んで待っていれば自ずと答えが近づいてくるだろう。だが、今は一秒でも早く確かめたい。自分の足であの人の元へ――。

 ――ガチャ、とドアが開く。
 目の前に軽く息を切らせた東郷さんが現れて、思わず俺は立ち尽くしてしまう。

 俺と視線を合わせ、一瞬だけ見つめ合う。
 しかしすぐに俺の肩を掴み、素早く部屋に入ってドアを閉めると、壁に手をついて俺を追い詰める。

「正代君……よく考えて答えて欲しい。俺に何か言いたいことは?」

 どこで誰が聞いているか分からない。ここは盗聴されていると思ったほうがいいだろうと考えながら、俺は告げる言葉を探す。

 なるべく言葉は短いほうがいい。それでいて間違いなく東郷さんに伝えられる言葉。

 おもむろに俺は東郷さんの首にしがみつき、恋人が再開を喜ぶように顔を寄せ、彼の耳元で息だけの声で小さく囁く。


「……焔……っ」


 東郷さんは何も言わなかった。
 ただ俺を深く懐に招き、力強く抱き締める。

 無言の抱擁。これが東郷さんからの返事。
 きっとそうだろうとは思っていた。けれど、憶測ではなく確信に繋がり、俺の胸には熱く込み上げてくるものがあった。


 間違いない。
 華侯焔は東郷さんだ。
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