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十四話 決戦に向けて

●その顔が見たかった

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「もう少し我慢して下さいますか? 貪欲になってしまったその身体を満たすために、下ごしらえは念入りにしなければ……」

 脚の間から俺を見上げながら告げると、才明は服の衣嚢から軟膏の容器を取り出す。

 そして俺の帯を解き、欲情に火照った身体を暴くと、たっぷりと軟膏を後孔に塗り込めていく。

 連日の行為に慣れてしまった身体は、すぐに肉壁を柔らかくし、才明の指を心地よく味わってしまう。指の腹が俺を内側から押し上げ、グリグリと刺激されると、それだけで目の前が点滅する。

「あっ……ぁ、んン……」

 声が抑えられない。下腹部で昂り切ったものは、才明の指が動く度にビク、ビクと脈打ち、先端を濡らしてしまう。

 もっと欲しい。内に溜まっていく熱を、疼きを放ってしまいたい。
 思わず身体が揺れ、才明からの刺激を少しでも強く得ようとしてしまうが、もどかしさが増すばかり。弾けるためのきっかけにはならない。

 溺れていく俺を見つめながら、才明はかすかに呟く。

「もうそんなに蕩けた顔をして……とても扇情的ですよ。普段の貴方を知っているからこそ、なおさら煽られます」

 安易に情けない顔を晒していることが耐えられなくて、咄嗟に手で顔を隠そうとしてしまう。だが、手を運ぶ途中で肉壁をグッと押され、「あぁッ」と大きな声とともに全身が跳ね、無意識に敷布にしがみつく。

 羞恥よりも才明が欲しくてたまらない。
 もう挿れて欲しいと懇願しそうになるが、才明に口づけられて術を奪われる。

 舌と指が俺の中を掻き乱し、甘い疼きと痺れを執拗に与えてくる。これも十分な快楽だと感じるのに、それじゃないと身体の奥が嘆くように引きつってしまう。

 早く埋めて欲しいのに。
 華侯焔に抉られ尽くされ、大きく開き切ってしまった身の内の穴を満たしてくれないと――。

 ツゥ、と。熱いものが俺の目から溢れていく。
 幾筋か流れて頬を濡らした頃、ようやく才明が俺から唇を離して覗き込む。

 もどかしさに耐え切れずに涙を零してしまった俺を、才明は眉根を寄せて申し訳無さそうに見てくる。

 しかし、わずかに覗く瞳は愉悦に溢れていた。

「ああ……その顔が見たかった。私が欲しくて、欲情に身を焦がして耐えられぬ顔……もっと見せて下さい。快楽に焦れて、私を心から欲する顔を」

 後孔から指を抜くと、自らの衣服を脱ぎ、新たに軟膏をすくい取る。それを長く怒張した己のものに塗ると、先端を柔らかく淫靡な孔へ押し当てる。

 グチュ。軽く押されただけで、俺の後孔は才明を滑らかに呑み込む。

「は……っ、あぁぁ……っっ」

 先端を埋められた瞬間、俺は首を振り乱していた。
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