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第一章
episode_2 青い寝椅子*
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「お義兄様、てが、み……を……書くのです……よね?」
右手から離れようとしないテオドールの唇から逃れようと、ロザリンデは体をよじって後ろに下がろうとした。だがそれは無駄な抵抗だった。テオドールの左手はロザリンデの右手をがっちりと捕まえて離さない。ようやく唇を離したかと思うと、テオドールはやおらロザリンデにぐっと近づいて、耳元に顔を寄せた。
「ああ、手紙か。何、少し時間があったから、君を待っている間に書き終えてしまったよ。呼びつけておいてすまないね」
そう囁くと、首筋にふっと息を吹きかける。ロザリンデの肩がビクッと跳ねた。
「あ……っ……ならば、今日はもうご用はございませんね……わたくし、休ませていただいて……あぁっ」
言葉の最後は小さな叫び声になった。
「何を言うんだい、ロザリンデ? 君にはまだやるべきことがあるだろう? さあ、あっちに座って」
「い、いや、です……お義兄様……」
「嫌?」
テオドールの片方の眉がぴくりと跳ね上がった。ロザリンデはヒッと息を飲んで、ますます身を固くした。そんな義妹の様子をいかにも楽しそうに見下ろしながら、テオドールがぞっとするような冷酷な声で言った。顔には柔和な笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
「そうか、嫌か。それは困ったね」
「あの……いえ、そうではなくて……」
「ロザリンデ。毎回同じことを言わせないでくれ。君とマティルダと子供たちが日々不自由なく生活し、ムーア子爵家の称号を維持できているのは誰のおかげだ?」
「……」
悔しそうに顔を背けて無言を貫くロザリンデに向かって、テオドールは大げさに溜息をつくと、片手でロザリンデの顎を掴んで強引に自分のほうを向かせた。
「答えなさい、ロザリンデ。家名が断絶してもいいのか? マティルダとお前が路頭に迷ってもいいのか?」
「それは……その……いいえ、いけません。ムーア子爵家がなくなってしまうことは、絶対に許されません。それに、お義兄様のお力添えなしには、わたくしもお姉様も、生きてゆくことはできません……」
「良く分かってるじゃないか。ならば、君も義務を果たしたまえ。私の言うことが分かるね?」
「……はい……」
ロザリンデは力なく頷いて、青いビロード張りの寝椅子に腰をかけた。すかさずテオドールがぴったりと体を密着させて隣に座ってくる。背後から腕を回され、首筋に生暖かく湿ったもの……テオドールの唇と舌を感じて、背筋がぞわりと震えた。
テオドールの指がボディスの前中心に規則正しく並んだボタンを一つづつ外し、そのままコルセットの中に侵入してくるのも、いつものことだ。それでもロザリンデは毎回身体をこわばらせる。だがテオドールはそんなロザリンデの無言の抵抗など意にも介さない。巧みに二つの膨らみをまさぐり、ロザリンデの呼吸を荒くする。不意に薔薇色の頂きをきゅっと摘ままれて、思わず声が漏れた。
「は……あっ……」
「ん? どうした? ああ、君はここをこうされると弱いんだったね」
「い、いや……」
「嫌? 嘘は良くない、ロザリンデ。私の目にはとても嫌がっているようには見えないよ。それに嫌だと言われても止めるつもりはないから、抵抗しても無駄だ」
ロザリンデの心が屈辱に震える。
今、自分を執拗に愛撫しているのは、血を分けた姉の夫。もちろん、この男を好きだと思ったことは一度もない。むしろこの舐めるようなねっとりとした目つきと、薄い唇から時折覗き見える赤い舌を目にするたびにどうしようもない嫌悪感がこみあげてくる。おまけに、妻と子供が寝ている部屋のすぐ近くで義妹にこんな破廉恥なことをして平然としていられるなんて、その神経の図太さには吐き気を催すほどだ。
それに加えて、何よりもロザリンデの心に影を落とすのは、姉マティルダが四人の子の母となった今でも、結婚当初から変わらず心の底から夫を愛し、尊敬し、崇拝していることだった。義兄テオドールは妻の愛情と信頼を逆手に取って、仕事を手伝ってもらうという名目で義妹を呼びつけては、夜な夜なその身体をいいように弄ぶ。そんな鬼畜な男の指に責められて感じてしまう自分は、なんと罪深く惨めな女なのだろう。だが心に反して、毎夜、身体は熱く火照り、子宮の奥が疼くのを止められない。テオドールの指で擦られ、硬く尖った胸の頂きが、いっそう敏感になっているのが自分でもはっきりと感じ取れた。
(ダメ、感じてはいけない……ああ、でも……)
「ぁあっ!」
唇を固く結んで声を抑えようとしたが、空しい試みだった。痺れを切らしたテオドールが、頂きを爪で軽く弾いたかと思うと、後ろから舌を這わせて来たのだ。そのまま白い膨らみをゆっくりと舐め上げられて、ロザリンデは身をくねらせた。
「お、義兄さ……ま……お止めください……いけないわ、こんなこと……お姉様を裏切るなんて……」
「裏切ってなどいない。伯爵家の仕事を義妹に手伝ってもらっているだけじゃないか。現にマティルダは露ほども疑っていない」
「でも……ひゃあ……んっ!」
テオドールは容赦なくロザリンデの胸の頂きを口に含み、舌で転がしたり軽く歯を立てたりして、思いのままに弄び始めた。ロザリンデの肌はじっとりと汗ばみ、太腿の間が熱くほてって、ぬるぬると湿り気を帯びる。
(ああ、わたくしは、いつの間にこんな淫らな身体になってしまったの……ここにはひとかけらの愛もないというのに……ごめんなさい、お姉様……)
「あっ、あ、あぁ…」
閉ざされた空間の中で、罪に流され穢されていく自分が許せなくて情けなくて、ロザリンデの目尻に涙が溜まっていた。
右手から離れようとしないテオドールの唇から逃れようと、ロザリンデは体をよじって後ろに下がろうとした。だがそれは無駄な抵抗だった。テオドールの左手はロザリンデの右手をがっちりと捕まえて離さない。ようやく唇を離したかと思うと、テオドールはやおらロザリンデにぐっと近づいて、耳元に顔を寄せた。
「ああ、手紙か。何、少し時間があったから、君を待っている間に書き終えてしまったよ。呼びつけておいてすまないね」
そう囁くと、首筋にふっと息を吹きかける。ロザリンデの肩がビクッと跳ねた。
「あ……っ……ならば、今日はもうご用はございませんね……わたくし、休ませていただいて……あぁっ」
言葉の最後は小さな叫び声になった。
「何を言うんだい、ロザリンデ? 君にはまだやるべきことがあるだろう? さあ、あっちに座って」
「い、いや、です……お義兄様……」
「嫌?」
テオドールの片方の眉がぴくりと跳ね上がった。ロザリンデはヒッと息を飲んで、ますます身を固くした。そんな義妹の様子をいかにも楽しそうに見下ろしながら、テオドールがぞっとするような冷酷な声で言った。顔には柔和な笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
「そうか、嫌か。それは困ったね」
「あの……いえ、そうではなくて……」
「ロザリンデ。毎回同じことを言わせないでくれ。君とマティルダと子供たちが日々不自由なく生活し、ムーア子爵家の称号を維持できているのは誰のおかげだ?」
「……」
悔しそうに顔を背けて無言を貫くロザリンデに向かって、テオドールは大げさに溜息をつくと、片手でロザリンデの顎を掴んで強引に自分のほうを向かせた。
「答えなさい、ロザリンデ。家名が断絶してもいいのか? マティルダとお前が路頭に迷ってもいいのか?」
「それは……その……いいえ、いけません。ムーア子爵家がなくなってしまうことは、絶対に許されません。それに、お義兄様のお力添えなしには、わたくしもお姉様も、生きてゆくことはできません……」
「良く分かってるじゃないか。ならば、君も義務を果たしたまえ。私の言うことが分かるね?」
「……はい……」
ロザリンデは力なく頷いて、青いビロード張りの寝椅子に腰をかけた。すかさずテオドールがぴったりと体を密着させて隣に座ってくる。背後から腕を回され、首筋に生暖かく湿ったもの……テオドールの唇と舌を感じて、背筋がぞわりと震えた。
テオドールの指がボディスの前中心に規則正しく並んだボタンを一つづつ外し、そのままコルセットの中に侵入してくるのも、いつものことだ。それでもロザリンデは毎回身体をこわばらせる。だがテオドールはそんなロザリンデの無言の抵抗など意にも介さない。巧みに二つの膨らみをまさぐり、ロザリンデの呼吸を荒くする。不意に薔薇色の頂きをきゅっと摘ままれて、思わず声が漏れた。
「は……あっ……」
「ん? どうした? ああ、君はここをこうされると弱いんだったね」
「い、いや……」
「嫌? 嘘は良くない、ロザリンデ。私の目にはとても嫌がっているようには見えないよ。それに嫌だと言われても止めるつもりはないから、抵抗しても無駄だ」
ロザリンデの心が屈辱に震える。
今、自分を執拗に愛撫しているのは、血を分けた姉の夫。もちろん、この男を好きだと思ったことは一度もない。むしろこの舐めるようなねっとりとした目つきと、薄い唇から時折覗き見える赤い舌を目にするたびにどうしようもない嫌悪感がこみあげてくる。おまけに、妻と子供が寝ている部屋のすぐ近くで義妹にこんな破廉恥なことをして平然としていられるなんて、その神経の図太さには吐き気を催すほどだ。
それに加えて、何よりもロザリンデの心に影を落とすのは、姉マティルダが四人の子の母となった今でも、結婚当初から変わらず心の底から夫を愛し、尊敬し、崇拝していることだった。義兄テオドールは妻の愛情と信頼を逆手に取って、仕事を手伝ってもらうという名目で義妹を呼びつけては、夜な夜なその身体をいいように弄ぶ。そんな鬼畜な男の指に責められて感じてしまう自分は、なんと罪深く惨めな女なのだろう。だが心に反して、毎夜、身体は熱く火照り、子宮の奥が疼くのを止められない。テオドールの指で擦られ、硬く尖った胸の頂きが、いっそう敏感になっているのが自分でもはっきりと感じ取れた。
(ダメ、感じてはいけない……ああ、でも……)
「ぁあっ!」
唇を固く結んで声を抑えようとしたが、空しい試みだった。痺れを切らしたテオドールが、頂きを爪で軽く弾いたかと思うと、後ろから舌を這わせて来たのだ。そのまま白い膨らみをゆっくりと舐め上げられて、ロザリンデは身をくねらせた。
「お、義兄さ……ま……お止めください……いけないわ、こんなこと……お姉様を裏切るなんて……」
「裏切ってなどいない。伯爵家の仕事を義妹に手伝ってもらっているだけじゃないか。現にマティルダは露ほども疑っていない」
「でも……ひゃあ……んっ!」
テオドールは容赦なくロザリンデの胸の頂きを口に含み、舌で転がしたり軽く歯を立てたりして、思いのままに弄び始めた。ロザリンデの肌はじっとりと汗ばみ、太腿の間が熱くほてって、ぬるぬると湿り気を帯びる。
(ああ、わたくしは、いつの間にこんな淫らな身体になってしまったの……ここにはひとかけらの愛もないというのに……ごめんなさい、お姉様……)
「あっ、あ、あぁ…」
閉ざされた空間の中で、罪に流され穢されていく自分が許せなくて情けなくて、ロザリンデの目尻に涙が溜まっていた。
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