ロザリンデのいつわりの薔薇 ~駆け落ち寸前に別れたあなたは侯爵家の跡取りでした~

碓氷シモン

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第一章

episode_4 まだ泣くわけにはいかない*

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 テオドールが溢れた蜜を掬い取り、右手をロザリンデの顔の前にかざして見せつけた。二本の指は濡れて、てらてらと光る透明な糸を引いていた。そのままテオドールは濡れた指を口元に持っていって、ゆっくりと舐めた。

「ああ、何という甘い香りだろう、ロザリンデ。君の身体は本当に素晴らしい。これからも私を楽しませておくれ。君と君の大事な姉マティルダの生活と、子爵家の爵位を守るためにね。そのことを忘れないように。返事は?」
「は、い、わか……り……まし、た、おにい、さま……はぁっ、ああっ!」

 本当は、こんな卑劣で破廉恥な男に屈服などしたくない。けれど、わたくしとお姉様、そしてムーア子爵家の未来は、このテオドール・ロチルド伯爵という悪魔のような男に握られている。二年あまりの間、夜ごと繰り返される執拗な責めによって、ロザリンデの身体は隅々まで開発しつくされ、義兄と義妹という二人の関係を心の底から嫌悪する理性の嘆きとは裏腹に、触れられるたびに快楽に喘ぐようになっていた。

 再び花芽を捉えたテオドールの指の動きが小刻みに早く、激しくなってゆく。それに合わせてロザリンデの息遣いが荒くなり、喘ぎ声が細く切れ切れになった。

「そろそろだな。こんなに膨れ上がって、いやらしい花芽だ。さあ、素直に気をりなさい。私に逆らっても無駄だよ。君の身体は私が一番よく知っているのだからね。ほら、ほら」
「あ、あー、あー、ああー……あっ、あああああーーーーーーっ!」

 ロザリンデが声を限りに叫ぶのと同時に、背中がぐっと反り、白い太腿が小刻みに痙攣した。頭の中で光が爆ぜ、全身から力が抜けてゆく。思わずテオドールに身体を預けてしまうのもいつものことだ。その後で猛烈な罪悪感と自己嫌悪に陥ることが分かっているのに。

 しばらく喘いでいたロザリンデが呼吸を整えてのろのろと身を起こすと、待っていたかのようにテオドールが寝椅子から降りてロザリンデの前に立った。ああ、やっぱりまだ終わらないのね……と更なる絶望に打ちひしがれたロザリンデを気に掛けるでもなく、テオドールは眉一つ動かさずに命令した。

「次は私の番だ、ロザリンデ。さあ」

 そしてトラウザーズの前を寛げると、屹立した男根をロザリンデの目の前にぬっと突き出した。それは太く、硬く、獰猛に天を突いてそそり立っていた。ロザリンデは固く目を閉じると、おずおずとその先端を口に含んで、ゆっくりと唇を上下に動かし始めた。鈴口から流れ出ていた透明な液がロザリンデの唾液と混ざり合って、塩辛い味が広がった。

「ん……んん……く……ぅ……」
「ああ、いい、ロザリンデ、そのまま、そう……もっと深く……」
「んんっ」

 浮き出た血管に舌の先が絡まって、むせそうになる。苦しくて思わず口を離そうとしても、ロザリンデの頭はテオドールにがっちりと掴まれてしまっていて逃げられない。早く終わってほしい一心で、ロザリンデは必死にテオドールの男根を根元まで咥え込んで、顎を動かし続けた。次第にテオドールの太腿が細かくピクピクと痙攣し始め、息遣いが荒くなった。

「あ……っ、ロザリンデ、もう出そうだ」
「うぅ……くっ……」
「出すぞ、ロザリンデ、一滴残らず、ちゃんと受け止めろ……! うぁ……っ! あっ、あぁっ!」

 テオドールの獣のような咆哮が響き、腰がガクガクと激しく打ちつけられた。次の瞬間、彼はロザリンデの口の中に思い切り精を放った。

「ん……ふ……ぅ……」

 やがてテオドールはロザリンデから身体を離すと、ドサリと勢いよく寝椅子に倒れ込み、大きな溜息をついた。ロザリンデは立ち上がると、腰に下げていたレティキュールから化粧紙を取り出し、口の端から溢れそうなほどに大量の白濁した液体を吐き出すと、丸めて燃えている暖炉に放り込んだ。全身から力が抜ける。床に座り込んでしまったロザリンデの耳に、すっかり冷静さを取り戻したテオドールの声が聞こえた。

「いつものことだが、そんなにそっけなく始末されると興が冷めるね、ロザリンデ」
「す、すみません、お義兄様。お許し下さい……」

 始末、というのはテオドールの子種を吐き出して暖炉にくべてしまうことだ。当初、テオドールはロザリンデにそれを飲み込むことを求めた。だがロザリンデはどうしてもそれだけは受け入れられず、いつも泣いて嫌がった。それで仕方なくテオドールが折れて、こうして証拠を隠滅することでどうにか折り合いがついた。

「まあ、処女きむすめの君にそこまで求めるのは野暮というものか、仕方あるまい。ご苦労だった、ロザリンデ。もう遅いから早く寝みなさい」

 取って付けたようなテオドールのねぎらいの言葉に、ロザリンデは黙ってはだけたままになっていたボディスのボタンを一つづつ元通りにはめ、汗ばんで顔に貼りついたほつれ毛を直した。ペチコートとスカートも元に戻し、軽く膝を曲げてお辞儀をすると、無言のまま扉へ向かう。もう義務は果たした、これ以上一秒たりともこの部屋にいたくはない。扉のハンドルに手をかけた時、再び背後からテオドールの声がしたが、ロザリンデは振り返ることなく書斎を出ると、静かに扉を閉めた。

 足音を忍ばせて廊下を歩くロザリンデの胃液が逆流し、吐き気がこみ上げる。だがまだ声を上げて泣くわけにはいかない。いくつもの扉の前を通り過ぎ、ようやく自室に飛び込んだ瞬間、ロザリンデは両手で顔を覆って床にくずおれた。
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