異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

ちょっと黒い筆箱

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閑話

第112話 益荒男鰤①

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「「お仕事お仕事らんららーん、お仕事お仕事らんらら~ん!!」」

「あら、マツルさんにホノラさん、休暇はもう良いのですか?」

「いやぁ流石に休み過ぎると感覚が鈍ってしまうので! ウィールさん、またこれからもよろしくお願いします!」

 ホノラのお兄ちゃんが国を滅ぼしたり、魔神になった魔王ニシュラブと戦ったりで本当に色々あった休暇も終わり、また依頼をこなす冒険者としての日常が始まるのだった。

「なんか討伐系の依頼が良いわね! 強い魔物と戦えるような!」

「んぇー......俺は採取系でゆっくりカンを取り戻したいなぁ......」

 ふと目に付いたのは掲示板の一番上に貼られていた一枚の依頼だった。それを手に取って見てみると、

「討伐、“マスラオブリ”......生死は問わない。依頼難度は――SSS!?」

 難度SSSってなんだよ!? あれ、確かギルドの依頼の最高難度はSじゃなかったか!?

 次の瞬間、その場にいた全員がザワザワとし始める。

「SSSだって! マスラオブリ? って名前はよく知らないけどこれ行きましょ!」

 俺と同じくよく分かってない(多分俺達以外の顔が固いのにも気付いていない)ホノラがウィールの元へ依頼書を出しに行こうとした。

「お二人が十分強いのは私も知っていますが......このクエストを受注するのはお勧め出来ません......」

 ウィールは俯き隠すようにそう告げた。あくまで受け取らない方針のようだ。

「どういう事ですか? そこまでして受け取れない依頼を貼っておくのに何か理由があるんですか?」

「マツルさんは異世界人なので馴染みがないでしょうが、ホノラさんは聞いた事あるのではないですか?“四神影”について――――」

 シシンエイ......まぁ当然だが聞いた事は無いな。

「四神影!? マスラオブリがそれだって言うの!?」

「その通りです。今までそれらは伝説の産物として“ただそこにいるだけ”でした。しかし今それが動き出したのです......」

 うんどういう事? ナマコ神様解説プリーズ!

『はいはーい! まぁざっくりと言うなら今まで封印されてた化け物が復活したよー! みたいな感じだね。封印されてた訳じゃ無いけど』

 ほんとにざっくりだね。でも“ただそこにいるだけ”だったんだからそんなに騒ぐ必要ないんじゃないか?

『昔は大変だったんだよ? 国ごと大陸食べるわ爪で空裂いて異界の悪鬼羅刹呼び込むわで』

 なるほどそれはくっそやばいな。

「とにかく! これはなぜか依頼という形で全ギルド支部に張り出されていますが、私はサラバンド支部の受付嬢としてこの依頼を受理する訳にはいきません! 現に他の支部でこの依頼を受けた冒険者は一人も......とにかくダメなものはダメです!」

 ウィールが大きな声で自分の気持ちをぶつける。

「でもそれ、私達が倒せたら凄くかっこよくない?」

「ホノラお前今の話聞いてたのかよ!?」

「凄く強いんでしょ? 誰かに倒される前に自分で倒したいな~! 伝説の存在なんて早々戦えるものじゃ無いわよ!?」

『私もホノラちゃんの意見に賛成かな』

 ナマコ神様まで!?

『だって今までそこにいるだけだった四神影の一角が急に動き出したんだ.....もしかしたら闇の欠片関連で何かがあったのかもしれない。後は純粋にマツル君に見て欲しいってのもあるけど』

 確かに、そんな化け物に興味が無い訳では無い。寧ろ超戦ってみたい! いやでもウィールさんがここまで止める相手な訳で行けないならどうしようも――――

「どうしたの? なんの騒ぎ?」

「ロージ......ギルドマスター!!」

「いいよいいよ言い直さなくて、それで? ああ、四神影のマスラオブリの話か......いいよ。ギルドマスターとして、僕が受理する」

「まじ!?」

「本当に?」

「ホントのホントに。正直どこも有効な手段がない状態だからねぇ......ギルドとしては情報が欲しい、更に勝てれば万々歳。という訳で、現状このクエストに行きたがってる実力者は行って貰う事にしてるんだ。でもまぁ、こちらとしては情報を一つくらいは持ち帰って欲しいかな~」

「しかしギルドマスター! そうやって他の支部ではどれだけのA,Bランク冒険者が――――!! いえ、ギルドマスターの決定とあらば......」

 ウィールさんが折れる形で俺とホノラはマスラオブリが現れたという海へ出発する事になった。


◇◇◇◇


「二人とも良いですか? マスラオブリは強いという言葉で縛るのがおこがましい程の圧倒的上位種です。少しでもヤバいと感じたらすぐに逃げて下さい。これは約束ではなく契約です」

 そう言うとウィールさんは俺とホノラの手を力強く握った。不思議と絶対に契約を守らなければという気持ちになる。

「分かりました。絶対に生きて帰ってきます」

「では、行ってらっしゃいませ」

「「「行ってきます!」」」

 俺達はモフローの背に乗り、マスラオブリがいると言う海の方へと向かった。


◇◇◇◇

「ウィール、リインを呼んできて。あと僕がありったけの回復薬ポーションを用意するから準備が完了するまで“契約”の発動は待っててくれ」

「宜しいのですか? もたもたしているとマツルさん達死んでしまいますよ?」

「どうせ僕の準備が整う前に契約を果たしても死んじゃうんだから、せめてそれまでは耐えてもらおう......死ぬなよ......」
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