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第38話 遊園地-土産選び-
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あれよあれよという間に夢の世界での時間は過ぎていき。
空は日が落ちて、街灯には明かりが灯り、幻想的な夜の街並みの姿が現れた。
流れる音楽も、昼間とは打って変わって物静かでゆったりとした曲調に変わっている。
暗くなったので帰り始める客もいるのか、通りを歩く人の数は昼間よりも少なくなった。
僕たちは、最初にこのテーマパークに来た時に目にした土産物屋に訪れていた。
土産を宜しくって青木たちに言われてるからな。何か買って行かないと何を言われるか分かったものではない。
僕は大勢の客たちに混ざりながら、棚に陳列された商品を眺めていた。
小さい箱だというのにいい値段するなぁ……多分これは中身じゃなくて入れ物に金がかかってるんだろうな。
このクッキーの箱なんて、掌サイズなのに八百円もするよ。
さて……何を買っていくか。
小泉は、クランチチョコが美味いって言ってたんだよな。
クランチチョコは……この缶か。
僕は棚の下の方に並べられている楕円型の缶を手に取った。
ワンダーリゾートのキャラクターたちが全面にプリントされた派手な缶は、それなりに中身が詰まっているらしく持ち上げるとずっしりとした。
会社の連中には、この缶ひとつで十分そうだな。早い者勝ちって札を付けてデスクの上に置いといてやろう。
ついでだし、家用にもひとつ買ってくか。
缶を二つ抱えて人混みから抜け出し、そういえばミラたちの声がしないなと思って彼女たちの姿を探す。
それは、ほどなくして見つかった。
菓子売り場からは少し離れた場所にある別の陳列棚。そこに並べられた商品を、彼女たちは興味津々と見つめていた。
一体何を見てるんだ?
「何か見つけたのか?」
「あ、櫂斗さん」
声を掛けると、ミラはこちらに振り向いてきた。
「見て下さい。可愛い指輪です」
言って彼女が指差す先には、照明を浴びてきらきらと輝く指輪の数々。
宝石がキャラクターのシルエットの形になっているデザインで、色には様々な種類がある。宝石はガラスか何かでできたイミテーションだろうが、それなりに綺麗だ。女の子が好みそうなアクセサリーだな。
菓子ではなく装飾品に興味を示す辺りは、流石女だなって思う。
せっかくだし、此処に来た思い出の一環として、買ってやるか。そんな大した値段じゃないしな。
「好きなのを選べ。買ってやるから」
僕がそう言うと、ミラの表情がぱっと明るくなった。
「いいんですか?」
「ああ」
「ありがとうございます!」
ミラは早速数ある指輪の中からひとつを選んで手に取った。彼女なりに目を付けていたものがあったらしい。
アクアマリンの色を選んだのか。ミニクロで買ったワンピースも青系だし、彼女は青色が好きなのだろうか。
ミラの様子を見ていたネネが羨ましそうに言った。
「姉様ばかりずるい」
「心配しなくてもあんたにも買ってやるから。ほら、どれにするか選べ」
「♪」
嬉しそうに笑顔で指輪を物色し始めるネネ。
彼女は少し迷った後、ピンク色の指輪を選んでいた。随分可愛いのにしたんだな。
彼女たちが選んだ指輪を受け取って、クランチチョコの缶と一緒にレジへと持って行く。
指輪はこの場で身に着けていくかと訊かれたので、そうすると告げると指輪から値札を外してくれた。此処ではこんなサービスもしてるのかとちょっと感心した。
僕は受け取った指輪を後ろで待っている二人にそれぞれ手渡した。
「ほら。なくすなよ」
彼女たちは早速指輪を填めていた。ネネは右手の中指に、ミラは左手の薬指に。
「櫂斗さんが下さった指輪……大切にします!」
婚約指輪じゃないんだから……そんな大層な扱いをしなくてもいいってのに。
でも、そんなに喜んでもらえたのなら、買った甲斐があったというものだ。
少し良い気分になった僕は、クランチチョコの缶が入った袋を片手に提げて店の外に出た。
ちょっとだけ肌寒い風が頬を撫でていく。暖かくなるのはまだ当分先だなと思いながら、両腕を広げてぐっと全身を伸ばす。
ふうっと息を吐いて、二人の方を振り返る。
「それじゃ、そろそろ帰るか」
「帰ったら御飯作りますね!」
「そうか? それなら……頼むかな。あんたが作った味噌汁が飲みたい気分だよ」
「分かりました、とびきり美味しいのを作りますね!」
僕たちは肩を並べて、パークの出口に向かって歩き始めた。
朝は早かったし一日中歩きっぱなしだったし、体の方はくたくただったけど──嫌な疲れではない。
たまにはこういう時間の使い方も悪くはないものだなと、空を見上げながら僕は思ったのだった。
空は日が落ちて、街灯には明かりが灯り、幻想的な夜の街並みの姿が現れた。
流れる音楽も、昼間とは打って変わって物静かでゆったりとした曲調に変わっている。
暗くなったので帰り始める客もいるのか、通りを歩く人の数は昼間よりも少なくなった。
僕たちは、最初にこのテーマパークに来た時に目にした土産物屋に訪れていた。
土産を宜しくって青木たちに言われてるからな。何か買って行かないと何を言われるか分かったものではない。
僕は大勢の客たちに混ざりながら、棚に陳列された商品を眺めていた。
小さい箱だというのにいい値段するなぁ……多分これは中身じゃなくて入れ物に金がかかってるんだろうな。
このクッキーの箱なんて、掌サイズなのに八百円もするよ。
さて……何を買っていくか。
小泉は、クランチチョコが美味いって言ってたんだよな。
クランチチョコは……この缶か。
僕は棚の下の方に並べられている楕円型の缶を手に取った。
ワンダーリゾートのキャラクターたちが全面にプリントされた派手な缶は、それなりに中身が詰まっているらしく持ち上げるとずっしりとした。
会社の連中には、この缶ひとつで十分そうだな。早い者勝ちって札を付けてデスクの上に置いといてやろう。
ついでだし、家用にもひとつ買ってくか。
缶を二つ抱えて人混みから抜け出し、そういえばミラたちの声がしないなと思って彼女たちの姿を探す。
それは、ほどなくして見つかった。
菓子売り場からは少し離れた場所にある別の陳列棚。そこに並べられた商品を、彼女たちは興味津々と見つめていた。
一体何を見てるんだ?
「何か見つけたのか?」
「あ、櫂斗さん」
声を掛けると、ミラはこちらに振り向いてきた。
「見て下さい。可愛い指輪です」
言って彼女が指差す先には、照明を浴びてきらきらと輝く指輪の数々。
宝石がキャラクターのシルエットの形になっているデザインで、色には様々な種類がある。宝石はガラスか何かでできたイミテーションだろうが、それなりに綺麗だ。女の子が好みそうなアクセサリーだな。
菓子ではなく装飾品に興味を示す辺りは、流石女だなって思う。
せっかくだし、此処に来た思い出の一環として、買ってやるか。そんな大した値段じゃないしな。
「好きなのを選べ。買ってやるから」
僕がそう言うと、ミラの表情がぱっと明るくなった。
「いいんですか?」
「ああ」
「ありがとうございます!」
ミラは早速数ある指輪の中からひとつを選んで手に取った。彼女なりに目を付けていたものがあったらしい。
アクアマリンの色を選んだのか。ミニクロで買ったワンピースも青系だし、彼女は青色が好きなのだろうか。
ミラの様子を見ていたネネが羨ましそうに言った。
「姉様ばかりずるい」
「心配しなくてもあんたにも買ってやるから。ほら、どれにするか選べ」
「♪」
嬉しそうに笑顔で指輪を物色し始めるネネ。
彼女は少し迷った後、ピンク色の指輪を選んでいた。随分可愛いのにしたんだな。
彼女たちが選んだ指輪を受け取って、クランチチョコの缶と一緒にレジへと持って行く。
指輪はこの場で身に着けていくかと訊かれたので、そうすると告げると指輪から値札を外してくれた。此処ではこんなサービスもしてるのかとちょっと感心した。
僕は受け取った指輪を後ろで待っている二人にそれぞれ手渡した。
「ほら。なくすなよ」
彼女たちは早速指輪を填めていた。ネネは右手の中指に、ミラは左手の薬指に。
「櫂斗さんが下さった指輪……大切にします!」
婚約指輪じゃないんだから……そんな大層な扱いをしなくてもいいってのに。
でも、そんなに喜んでもらえたのなら、買った甲斐があったというものだ。
少し良い気分になった僕は、クランチチョコの缶が入った袋を片手に提げて店の外に出た。
ちょっとだけ肌寒い風が頬を撫でていく。暖かくなるのはまだ当分先だなと思いながら、両腕を広げてぐっと全身を伸ばす。
ふうっと息を吐いて、二人の方を振り返る。
「それじゃ、そろそろ帰るか」
「帰ったら御飯作りますね!」
「そうか? それなら……頼むかな。あんたが作った味噌汁が飲みたい気分だよ」
「分かりました、とびきり美味しいのを作りますね!」
僕たちは肩を並べて、パークの出口に向かって歩き始めた。
朝は早かったし一日中歩きっぱなしだったし、体の方はくたくただったけど──嫌な疲れではない。
たまにはこういう時間の使い方も悪くはないものだなと、空を見上げながら僕は思ったのだった。
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