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第8話 橋を架ける
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開けている場所に出た。
道は崖に寸断されて途切れており、崖の下には水の流れがある。
そこかしこに鍾乳洞ができており、ぽつぽつと水が垂れ落ちている。
光る珊瑚は此処にも生えており、渓谷全体を淡く照らしてくれているお陰で地形がよく見える。
崖から向こう岸を覗くと、十メートルほど先に道の続きがあるのが見えた。
これは……跳んで渡れるような距離ではないな。
僕が崖を覗いていると、アラグの溜め息が聞こえてきた。
「さっきのは此処の崖が崩れた音だな。前に来た時よりも谷が大きくなってやがる」
どうやら、此処ら一帯は川があるせいで足場が脆くなっているらしい。
「シルカ、出番だ。此処の道を繋いでくれ」
此処を繋ぐのか……
僕は足下の地面の様子を確認した。
湿気を含んだ岩の地面は、固さはとりあえず申し分ない。
対岸までは十メートル。何とか……いけそうだ。
僕は深呼吸をして、両手を地面にしっかりと付けた。
掌に魔力を込めて、脳内に橋を築くイメージを描く。
ばしっ、と辺りの地面に僕の魔力が迸る。
地面が変形し、崖の先端が向こう岸に向かって延びていく。
──この橋を架けるという作業は、厳密に言うと橋を新しく作っているのではない。足場を魔力で変形させて、橋のように伸ばしているのだ。
当然、橋の材料となる足場の岩は、橋ができていくほど質量を取られて薄くなっていく。考えなしに橋を作ろうとすると、足場の方が崩れてしまうため注意が必要だ。
今回作る橋は十メートルほどなので、流石に足場が崩れるほどに岩が薄くなるといったことはないだろうが、何事にも万が一ということがある。警戒するに越したことはない。
そうして、橋が谷の半ばほどまでできた時。対岸から黒いものがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。
大きな翼に、鋭い爪。キィキィと甲高い声を発する、牙剥き出しの口。
あれは──
「ケイブバット! 音に反応して出てきたな」
剣を抜くアラグ。
「フラウ、撃ち落とせ! シルカの方に近付けさせるな!」
「了解!」
フラウが杖を頭上に翳して、声高に叫んだ。
「サンダーバレット!」
彼女の杖の先端が淡い紫に輝き、幾つもの光の球が生まれて迫り来るケイブバットを捉えた。
ばちっ、ばちっと雷撃が迸り、フラウの魔術を食らったケイブバットが次々と谷底に落ちていく。
しかし、飛んでくるケイブバットの数はまだまだ多い。
「アイシクルランス!」
氷の槍が、ケイブバットの翼に風穴を空ける。
飛べなくなったケイブバットが地面に落ちる。それを剣で両断して、アラグは僕に向かって言った。
「シルカは橋作りを止めるな! お前の方には意地でも近寄らせないから安心しろ!」
「頼むよ!」
僕は意識を橋に集中させた。
今此処で橋作りを止めたら、せっかくここまで作った橋が崩れてしまう。完成するまで、この作業を止めるわけにはいかないのだ。
「ウィンドスラッシュ!」
ざん、と体を斜めに真っ二つにされたケイブバットが僕の目の前に落ちてくる。
どさ、と目の前に臓物が丸見えの死骸が転がったので、僕は思わず悲鳴を上げた。
「うわぁぁ!?」
「死体を見たくらいで騒ぐな! びっくりするだろ!」
「無茶言うな! 馬鹿!」
ちょっぴり涙目になりながら、何とか意識を橋の方に集中させる。
橋は八割がた完成した。後少しだ。
「ファイアボール!」
フラウの魔術がケイブバットを三匹まとめて消し炭にする。
火の粉が散り、一瞬だけ場が明るくなった。
「おりゃっ!」
アラグが振るった剣が飛んでいた最後のケイブバットを両断する。
ケイブバットが地面に落ちた時、ようやく橋が完成した。
「橋、できたぞ!」
「こっちも丁度終わった。大した数じゃなかったな」
剣を背に戻し、アラグは僕の背後に立った。
完成した橋を見て、頷く。
「よし、これで先に進めるな。やっぱりお前を連れてきて正解だった」
「ケイブバットっていえば翼が素材になるんでしょ? 持ってく?」
足下に散らばったケイブバットの死骸を見つめながらフラウが尋ねてくる。
いや、とアラグは首を振った。
「ケイブバットはそんなに珍しい魔物じゃないからな。パスだ。持ち帰れる量には限りがあるからな」
ケイブバットの翼は皮素材として用いられている。指輪などの装飾品に使われているのだ。
僕としても、ケイブバットの素材はそんなに魅力には感じない。冒険者たちがよく店に持って来てくれる素材だから、在庫が結構あるのだ。
どうせ持って帰るなら、もっと珍しくて価値のある素材でお願いしたい。
「先に進むぞ」
僕たちは隊列を整えて、橋を渡って更に先へと進んでいった。
道は崖に寸断されて途切れており、崖の下には水の流れがある。
そこかしこに鍾乳洞ができており、ぽつぽつと水が垂れ落ちている。
光る珊瑚は此処にも生えており、渓谷全体を淡く照らしてくれているお陰で地形がよく見える。
崖から向こう岸を覗くと、十メートルほど先に道の続きがあるのが見えた。
これは……跳んで渡れるような距離ではないな。
僕が崖を覗いていると、アラグの溜め息が聞こえてきた。
「さっきのは此処の崖が崩れた音だな。前に来た時よりも谷が大きくなってやがる」
どうやら、此処ら一帯は川があるせいで足場が脆くなっているらしい。
「シルカ、出番だ。此処の道を繋いでくれ」
此処を繋ぐのか……
僕は足下の地面の様子を確認した。
湿気を含んだ岩の地面は、固さはとりあえず申し分ない。
対岸までは十メートル。何とか……いけそうだ。
僕は深呼吸をして、両手を地面にしっかりと付けた。
掌に魔力を込めて、脳内に橋を築くイメージを描く。
ばしっ、と辺りの地面に僕の魔力が迸る。
地面が変形し、崖の先端が向こう岸に向かって延びていく。
──この橋を架けるという作業は、厳密に言うと橋を新しく作っているのではない。足場を魔力で変形させて、橋のように伸ばしているのだ。
当然、橋の材料となる足場の岩は、橋ができていくほど質量を取られて薄くなっていく。考えなしに橋を作ろうとすると、足場の方が崩れてしまうため注意が必要だ。
今回作る橋は十メートルほどなので、流石に足場が崩れるほどに岩が薄くなるといったことはないだろうが、何事にも万が一ということがある。警戒するに越したことはない。
そうして、橋が谷の半ばほどまでできた時。対岸から黒いものがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。
大きな翼に、鋭い爪。キィキィと甲高い声を発する、牙剥き出しの口。
あれは──
「ケイブバット! 音に反応して出てきたな」
剣を抜くアラグ。
「フラウ、撃ち落とせ! シルカの方に近付けさせるな!」
「了解!」
フラウが杖を頭上に翳して、声高に叫んだ。
「サンダーバレット!」
彼女の杖の先端が淡い紫に輝き、幾つもの光の球が生まれて迫り来るケイブバットを捉えた。
ばちっ、ばちっと雷撃が迸り、フラウの魔術を食らったケイブバットが次々と谷底に落ちていく。
しかし、飛んでくるケイブバットの数はまだまだ多い。
「アイシクルランス!」
氷の槍が、ケイブバットの翼に風穴を空ける。
飛べなくなったケイブバットが地面に落ちる。それを剣で両断して、アラグは僕に向かって言った。
「シルカは橋作りを止めるな! お前の方には意地でも近寄らせないから安心しろ!」
「頼むよ!」
僕は意識を橋に集中させた。
今此処で橋作りを止めたら、せっかくここまで作った橋が崩れてしまう。完成するまで、この作業を止めるわけにはいかないのだ。
「ウィンドスラッシュ!」
ざん、と体を斜めに真っ二つにされたケイブバットが僕の目の前に落ちてくる。
どさ、と目の前に臓物が丸見えの死骸が転がったので、僕は思わず悲鳴を上げた。
「うわぁぁ!?」
「死体を見たくらいで騒ぐな! びっくりするだろ!」
「無茶言うな! 馬鹿!」
ちょっぴり涙目になりながら、何とか意識を橋の方に集中させる。
橋は八割がた完成した。後少しだ。
「ファイアボール!」
フラウの魔術がケイブバットを三匹まとめて消し炭にする。
火の粉が散り、一瞬だけ場が明るくなった。
「おりゃっ!」
アラグが振るった剣が飛んでいた最後のケイブバットを両断する。
ケイブバットが地面に落ちた時、ようやく橋が完成した。
「橋、できたぞ!」
「こっちも丁度終わった。大した数じゃなかったな」
剣を背に戻し、アラグは僕の背後に立った。
完成した橋を見て、頷く。
「よし、これで先に進めるな。やっぱりお前を連れてきて正解だった」
「ケイブバットっていえば翼が素材になるんでしょ? 持ってく?」
足下に散らばったケイブバットの死骸を見つめながらフラウが尋ねてくる。
いや、とアラグは首を振った。
「ケイブバットはそんなに珍しい魔物じゃないからな。パスだ。持ち帰れる量には限りがあるからな」
ケイブバットの翼は皮素材として用いられている。指輪などの装飾品に使われているのだ。
僕としても、ケイブバットの素材はそんなに魅力には感じない。冒険者たちがよく店に持って来てくれる素材だから、在庫が結構あるのだ。
どうせ持って帰るなら、もっと珍しくて価値のある素材でお願いしたい。
「先に進むぞ」
僕たちは隊列を整えて、橋を渡って更に先へと進んでいった。
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