アメミヤのよろず屋

高柳神羅

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第10話 近付く脅威の足音

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 通路の両脇から襲いかかるキングクラブを撃退しながら、僕たちは何とか広い陸地に到着した。
 岩肌剥き出しの壁に大きな穴が空いており、そこから空気が流れてきている。
 どうやら、この穴は何処かへと繋がっているようだ。
 僕たちは頷き合って、穴の中へと足を踏み入れた。
 通路はでこぼことしており、濡れているせいで足を取られやすかった。
 何とか通路を抜けると、広めの空間に出た。
 壁の一部に穴が空いており、そこから小さな滝のように水が噴き出している。
 滝は地面を抉って小さな池を作り出しており、壁に空いた別の穴から別の場所へと水が流れ出ていた。
 濃い水の匂いがするのはそのせいか。
 僕は何気なく池に近寄った。
 水面をランタンで照らすと、そこにあったのは。
「……わあぁぁぁっ!」
 僕は悲鳴を上げて池の傍から離れた。
 僕の声に驚いた二人が、びくっとして僕の方を見た。
「何だ、シルカ! 急に大声出すな! 何かあったと思うだろうが!」
「何? 池?」
 フラウが池を覗き込む。
 そして、眉間に皺を寄せた。
「……これは……フィッシュマン?」
 池には、大量の魚の残骸が浮かんでいた。
 フィッシュマン──人魚とも言うが、人間の女性の姿をした種族とは違って魚がそのまま人間になったような姿をしているため、区別するためにそう呼んでいる。
 獣人の一種で、簡単な道具を扱える程度の知能を持っており、性格は粗暴で好戦的。海や水辺に好んで生息し、独自の集落を作って生活している魔物だ。
 それが、こんなにバラバラの残骸になって此処に溜まっているなんて……
 うぅ、もろに見ちゃったよ。
 フラウの言葉につられて池を覗き込んだアラグが、水が噴き出ている穴に目を向けた。
「多分、そこの穴から流れてきたんだろうな。それで此処に引っ掛かって溜まったんだ」
「何があったんだろうね。フィッシュマンって一応それなりに知能がある魔物でしょ? それがこんな風になるなんてさ」
 フラウは池に手を突っ込んで、フィッシュマンの残骸を掴み上げた。
 ランタンの光に照らされて、引きちぎられた腕や内臓が露わになる。
「馬鹿! そんなもん拾うなよ! 捨てろ、今すぐ!」
「シルカうるさい」
 僕の言葉をぴしゃりと一喝して、フラウはううんと首を捻った。
「これは……強引に引きちぎった跡?」
「そいつらを襲った奴がいるんだろ」
 アラグはがしがしと後頭部を掻いて、滝の脇に視線を移した。
 そこには、別の場所に続く横穴があった。
「どうやら、この先に結構な大物がいるみたいだな。行ってみよう」
「なあ……もう帰らないか? 一応最下層までは来れたんだしさ」
「馬鹿、ダンジョンの全容を解明するまで帰れるわけないだろ」
 僕の心の底からの申し出は一蹴された。
 フィッシュマンの残骸を池に戻し、フラウがぽんと僕の肩を叩く。
「心配しなくていいよ。あたしたちがちゃんと守ってあげるから」
「わざわざ危険に飛び込むあんたたちの神経が分からない!」
 嫌がる僕の肩を抱いて引き摺るようにして、二人は横穴へと進んでいった。
 誰だ、二人が護衛してくれるならダンジョンを踏破できそうだなんて思った奴は!
 報酬につられてダンジョン行きを決めた過去の自分を殴ってやりたい気分になりながら、僕は二人の間に挟まれる形で横穴へと向かっていった。
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