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第52話 麓の街オロトワ
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馬車の旅を始めて五日目の夕方。僕たちは無事にオロトワの街に到着した。
赤い屋根が連なった、見た目は綺麗な街だ。
これから山に登るのだろうか、荷物を大量に持った冒険者の姿が通りにちらほらと見える。
僕たちを乗せた馬車は、街の中心にある酒場の前で停車した。
長いこと揺れる座席に座りっぱなしだったせいか尻が痛い。
馬車を降りて尻を撫で摩る僕の横で、アラグは平然とした様子で立っている。
鎧を着てあんな揺れまくる席にずっと座っていたら多少は体に来るものだと思うのだが、全く頑丈なものである。
「此処で待ち合わせをしてるんだ。入るぞ」
言って、彼は馬車の御者にお金を支払い酒場の中に入っていった。
僕も彼の後に続いて酒場に足を踏み入れた。
まだ夕方だというのに、酒場の中は大勢の客で賑わっていた。
客の殆どは冒険者だが、中には地元人らしき普通の格好をした人間もちらほらと混ざっている。
アラグは店の奥の方にいた。
小さなテーブル席に座った冒険者と話をしている。
彼の話を聞いていた冒険者の視線が、ちらりとこちらに向いた。
藍色のローブの上に白い色の胸当てを着けた格好をした、長い金髪の魔術師だ。控え目に見てもかなり見目麗しい見た目の人物である。
魔術師は席を勢い良く立ち、笑顔を浮かべてこちらに駆け寄ってきた。
「シルカー!」
僕を突き飛ばす勢いでぶつかり、僕をぎゅっと強く抱き締める。
見た目以上に強い腕力で締め上げられて、僕は身を捩った。
「ちょっ、痛い痛い痛い!」
「久しぶりね、シルカ! こうしてまた会えるなんて夢みたいよ!」
「分かったから離れろ! 背骨が折れる!」
顔をぐりぐりと押し付けてくる相手を何とか引き剥がし、僕ははあっと息を吐いた。
「……ったく、あんたは全然変わってないな。そのすぐに抱き付く癖は直せって言ったの覚えてないのかよ」
「あら、せっかくの再会なんだもの、いいじゃないの。喜びは全身で表現してこそよ」
ウインクする相手に半眼を向けて、僕は腰に手を当てた。
この人物、名前をシャオレン・ルアンズという。一見すると長身の美女ではあるが、れっきとした男である。
彼は、アラグ同様に僕とは昔パーティを組んでいた魔術師仲間の一人なのだ。
「シルカは……ちょっと痩せたわね。肉の付き方が昔と違うわ」
「そんなの、当たり前だろ。よろず屋の店主に筋肉は必要ないからな」
僕はアラグが待っているテーブル席に移動した。
空いている席に腰を下ろし、置かれているメニューを開く。
流石酒場というだけあって、品書きが酒ばっかりだ。料理の類が殆どない。
とりあえず、簡単につまめるものを……
僕がメニューを見ている横で、アラグは席に着いたシャオレンに問いかけた。
「明日の朝に出発するが、問題はないよな?」
「ええ、準備はできてるわ。いつでも行けるわよ」
きりっとした面持ちで頷くシャオレン。
よし、このポテトサラダにしよう。
僕が注文するメニューを決めたと同時に、さっとメニューが取り上げられた。
僕からメニューを取り上げたアラグが、僕に言った。
「シルカもそれでいいな。明日の朝、山に入る。体調はしっかり整えておいてくれ」
「いいも何も、嫌だって言っても登らせるんだろ。だったら多少夜更かししたところで一緒だよ」
僕は近くを通りかかった店員を呼んで、ポテトサラダを注文した。
此処まで来てしまったからには仕方ない。山登り、やってやろうじゃないか。
魔物が出たらしっかり守ってもらうぞ?
メニューを物色するアラグと酒をちびちびと飲んでいるシャオレンを順番に見つめて、僕は胸中で彼らにそう言うのだった。
赤い屋根が連なった、見た目は綺麗な街だ。
これから山に登るのだろうか、荷物を大量に持った冒険者の姿が通りにちらほらと見える。
僕たちを乗せた馬車は、街の中心にある酒場の前で停車した。
長いこと揺れる座席に座りっぱなしだったせいか尻が痛い。
馬車を降りて尻を撫で摩る僕の横で、アラグは平然とした様子で立っている。
鎧を着てあんな揺れまくる席にずっと座っていたら多少は体に来るものだと思うのだが、全く頑丈なものである。
「此処で待ち合わせをしてるんだ。入るぞ」
言って、彼は馬車の御者にお金を支払い酒場の中に入っていった。
僕も彼の後に続いて酒場に足を踏み入れた。
まだ夕方だというのに、酒場の中は大勢の客で賑わっていた。
客の殆どは冒険者だが、中には地元人らしき普通の格好をした人間もちらほらと混ざっている。
アラグは店の奥の方にいた。
小さなテーブル席に座った冒険者と話をしている。
彼の話を聞いていた冒険者の視線が、ちらりとこちらに向いた。
藍色のローブの上に白い色の胸当てを着けた格好をした、長い金髪の魔術師だ。控え目に見てもかなり見目麗しい見た目の人物である。
魔術師は席を勢い良く立ち、笑顔を浮かべてこちらに駆け寄ってきた。
「シルカー!」
僕を突き飛ばす勢いでぶつかり、僕をぎゅっと強く抱き締める。
見た目以上に強い腕力で締め上げられて、僕は身を捩った。
「ちょっ、痛い痛い痛い!」
「久しぶりね、シルカ! こうしてまた会えるなんて夢みたいよ!」
「分かったから離れろ! 背骨が折れる!」
顔をぐりぐりと押し付けてくる相手を何とか引き剥がし、僕ははあっと息を吐いた。
「……ったく、あんたは全然変わってないな。そのすぐに抱き付く癖は直せって言ったの覚えてないのかよ」
「あら、せっかくの再会なんだもの、いいじゃないの。喜びは全身で表現してこそよ」
ウインクする相手に半眼を向けて、僕は腰に手を当てた。
この人物、名前をシャオレン・ルアンズという。一見すると長身の美女ではあるが、れっきとした男である。
彼は、アラグ同様に僕とは昔パーティを組んでいた魔術師仲間の一人なのだ。
「シルカは……ちょっと痩せたわね。肉の付き方が昔と違うわ」
「そんなの、当たり前だろ。よろず屋の店主に筋肉は必要ないからな」
僕はアラグが待っているテーブル席に移動した。
空いている席に腰を下ろし、置かれているメニューを開く。
流石酒場というだけあって、品書きが酒ばっかりだ。料理の類が殆どない。
とりあえず、簡単につまめるものを……
僕がメニューを見ている横で、アラグは席に着いたシャオレンに問いかけた。
「明日の朝に出発するが、問題はないよな?」
「ええ、準備はできてるわ。いつでも行けるわよ」
きりっとした面持ちで頷くシャオレン。
よし、このポテトサラダにしよう。
僕が注文するメニューを決めたと同時に、さっとメニューが取り上げられた。
僕からメニューを取り上げたアラグが、僕に言った。
「シルカもそれでいいな。明日の朝、山に入る。体調はしっかり整えておいてくれ」
「いいも何も、嫌だって言っても登らせるんだろ。だったら多少夜更かししたところで一緒だよ」
僕は近くを通りかかった店員を呼んで、ポテトサラダを注文した。
此処まで来てしまったからには仕方ない。山登り、やってやろうじゃないか。
魔物が出たらしっかり守ってもらうぞ?
メニューを物色するアラグと酒をちびちびと飲んでいるシャオレンを順番に見つめて、僕は胸中で彼らにそう言うのだった。
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