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第54話 山登り
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緩やかな斜面の上に、幅の広い道が木々の間を縫うようにして伸びている。
木々の間から見えるのは、遠くまで緑で覆われた山々の景色だ。
何処かで鳥が囀っているのが聞こえる。
頭上に降り注ぐ太陽の光は柔らかく、吹いてくる風も穏やかで心地良い。
これが魔物のいる山でなかったら、まるきりピクニックで楽しめるような登山道であった。
「天気いいなぁ」
先頭を歩きながら、アラグがのんびりとそんなことを言った。
僕の後方を歩くシャオレンも、鼻歌を歌いながら辺りの景色に目を向けている。
僕たちが目指す洞窟は、山の中腹辺りにあるらしい。
この道の様子なら、山を登ることに関してだけは苦労しなさそうだ。
僕は鞄を掛け直しながら、まっすぐに行く先を見据えて歩を進めた。
その考えが甘いということを、山道を進んでいくにつれて思い知らされることになるとは思ってもいなかった。
山を登り始めて四時間が経過した。
この頃になると、辺りの様子はすっかり様変わりしていた。
周囲に生えている木は数がまばらになり、代わりに背の低い植物ばかりが目立つようになっていった。
道幅は狭くなり、ごろごろと岩が転がってそれが余計に歩ける場所を制限してくる。
勾配はきつくなり、一歩を上がるにも力がいるようになった。
誰だ、この山道なら苦労しなさそうなんて思った奴は。
道を塞いでいる岩をよじ登り、僕はふーっと息を吐いた。
「大丈夫? 疲れた?」
大して苦労していない様子で岩をひょいと超えるシャオレンに、半眼を向ける。
「疲れていないように見えるか?」
「体力落ちたなぁ、シルカ」
僕たちの大分前を行くアラグが、こちらに振り向きながら声を掛けてくる。
「昔は周囲のことなんかお構いなしにひょいひょい登ってたのにな。隊列を乱すなら遠慮なく置いてくぞ、とか言って」
「よろず屋に体力は必要ないんだよ! 冒険者と一緒にしないでくれ!」
僕は叫んで、奥歯を噛み締めて一歩を踏み出した。
意地でも離されてなるものか、その思いで勾配を登っていく。
立ち止まっているアラグの元に辿り着き、前方を見つめている彼の背中を見上げた。
「待たなくていいぞ。ちゃんと付いて行くから」
「シルカ、下がれ」
アラグが表情を引き締めて背中の剣を抜いた。
彼のその言葉で状況を察したらしいシャオレンが、僕の肩を掴んでぐいっと引っ張ってくる。
僕は後方に追いやられながら、アラグの先にあるものに目を向けた。
細い道を塞ぐように──
分厚い鱗に全身が覆われた灰色の大きな蜥蜴が、こちらをじっと見つめている様子が見えた。
ロックリザード!
「シャオレン、派手な魔術は道を崩す可能性があるから使うなよ」
「それくらい分かってるわよ。これでも貴方よりは山に登ってる経験があるんですからね」
指輪を填めた手をわきわきと動かしながら、シャオレンが不敵な笑みを浮かべる。
二人の邪魔にならないように、僕はその場から離れて木の傍に身を寄せた。
木々の間から見えるのは、遠くまで緑で覆われた山々の景色だ。
何処かで鳥が囀っているのが聞こえる。
頭上に降り注ぐ太陽の光は柔らかく、吹いてくる風も穏やかで心地良い。
これが魔物のいる山でなかったら、まるきりピクニックで楽しめるような登山道であった。
「天気いいなぁ」
先頭を歩きながら、アラグがのんびりとそんなことを言った。
僕の後方を歩くシャオレンも、鼻歌を歌いながら辺りの景色に目を向けている。
僕たちが目指す洞窟は、山の中腹辺りにあるらしい。
この道の様子なら、山を登ることに関してだけは苦労しなさそうだ。
僕は鞄を掛け直しながら、まっすぐに行く先を見据えて歩を進めた。
その考えが甘いということを、山道を進んでいくにつれて思い知らされることになるとは思ってもいなかった。
山を登り始めて四時間が経過した。
この頃になると、辺りの様子はすっかり様変わりしていた。
周囲に生えている木は数がまばらになり、代わりに背の低い植物ばかりが目立つようになっていった。
道幅は狭くなり、ごろごろと岩が転がってそれが余計に歩ける場所を制限してくる。
勾配はきつくなり、一歩を上がるにも力がいるようになった。
誰だ、この山道なら苦労しなさそうなんて思った奴は。
道を塞いでいる岩をよじ登り、僕はふーっと息を吐いた。
「大丈夫? 疲れた?」
大して苦労していない様子で岩をひょいと超えるシャオレンに、半眼を向ける。
「疲れていないように見えるか?」
「体力落ちたなぁ、シルカ」
僕たちの大分前を行くアラグが、こちらに振り向きながら声を掛けてくる。
「昔は周囲のことなんかお構いなしにひょいひょい登ってたのにな。隊列を乱すなら遠慮なく置いてくぞ、とか言って」
「よろず屋に体力は必要ないんだよ! 冒険者と一緒にしないでくれ!」
僕は叫んで、奥歯を噛み締めて一歩を踏み出した。
意地でも離されてなるものか、その思いで勾配を登っていく。
立ち止まっているアラグの元に辿り着き、前方を見つめている彼の背中を見上げた。
「待たなくていいぞ。ちゃんと付いて行くから」
「シルカ、下がれ」
アラグが表情を引き締めて背中の剣を抜いた。
彼のその言葉で状況を察したらしいシャオレンが、僕の肩を掴んでぐいっと引っ張ってくる。
僕は後方に追いやられながら、アラグの先にあるものに目を向けた。
細い道を塞ぐように──
分厚い鱗に全身が覆われた灰色の大きな蜥蜴が、こちらをじっと見つめている様子が見えた。
ロックリザード!
「シャオレン、派手な魔術は道を崩す可能性があるから使うなよ」
「それくらい分かってるわよ。これでも貴方よりは山に登ってる経験があるんですからね」
指輪を填めた手をわきわきと動かしながら、シャオレンが不敵な笑みを浮かべる。
二人の邪魔にならないように、僕はその場から離れて木の傍に身を寄せた。
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