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第106話 遺跡に眠る封印と鍵
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夕暮れ時。客足がまばらになった店の中で魔術師用の杖を作りながら、僕は昼間ジールさんの畑で拾った例の石を眺めていた。
動く像の中に隠されていた、謎の石──
この石のせいで像が動いたのか、この石を守るために動く像に隠されていたのか、それは分からないが──どちらにせよ、この石が特別な品であることに変わりはない。
店で売りに出すにしても、この石のことを多少は知っていないと出すに出せない。
しばらくこれは倉庫の奥深くにしまっておくことになりそうだ。
そう思い、石を作業台の隅の方に寄せた時だった。
「邪魔をする。此処の店主はいるか」
一人の冒険者が、店の中に入ってきた。
男物の魔術師のローブを身に纏い、しかし背負った得物は人間の身の丈ほどもある大きさの大剣という変わった格好をした剣士だった。長い銀髪を複雑に編み込んだ髪型は婚礼時の花嫁を彷彿とさせる華やかさがあり、しかし長い前髪の陰から覗く灰色の瞳は鋭い光を放っている。何ともちぐはぐな印象を併せ持った男である。
彼は店の奥にいる僕の姿を見つけると、迷わずこちらにやって来た。
傍で伏せているシルバーをちらりと見て、僕の顔に視線を合わせ、口を開く。
「あんたが、昼間畑にあった石像を解体した錬金術師か」
「君は?」
僕が問いかけると、男は一呼吸間を置いて、答えた。
「俺は、ジュード・アヴァランという。ある遺跡にまつわる『鍵』を探して旅をしている」
彼は腰に下げていた袋から何かを取り出すと、僕に見せてきた。
「あの畑の主に聞いた。あんたは今、これと同じものを持っているはずだ」
──それは、表面に鳥を象った彫刻が施された黒い球体型の石だった。
僕はちらりと作業台の隅を見やった。
そこに置かれている石を見て、それと彼が持っている石が全く同じものであることを把握する。
少なくとも、彼は悪人には見えない。隠す必要はないだろう。
僕は相手の顔に視線を戻して、答えた。
「……確かに、持ってるけど」
「これは、二個で一組になっている。ある遺跡の封印された扉を開くための鍵なんだ」
ジュードさんは語り始めた。
その遺跡は、ガラム地方にあるクロウワ遺跡という。クロウワ岬という場所に建てられた小さな遺跡らしい。
その遺跡は遺跡としては比較的新しいもので、内部は錬金術によって施された罠が一杯だったそうだ。
罠は何とか潰して無力化させたものの、最奥に存在していた封印──閉ざされた扉を開くことはできなかったのだそう。
彼はあちこちを巡って遺跡のことを調べ、扉を開くには二個で一組になっている『鍵』が必要であることと、その『鍵』が眠っている場所を突き止めた。
ジールさんの畑にあの像が埋まっていることを教えたのはジュードさんで、発掘するように冒険者ギルドに話を持ちかけたのも彼らしい。
彼は像を発掘した後は、像を何とかして壊して中にある石を手に入れるつもりだったのだそうだ。
成程、それでギルベルトさんが……というか冒険者ギルドが発掘を請け負ってたんだな。
「あの像を解体したあんたの錬金術の腕を見込んで頼みがある」
石を腰の袋に戻して、ジュードさんは言った。
「俺と一緒に、遺跡に来てもらいたい。あんたの錬金術の腕が、あの遺跡を探索するために必要なんだ」
「…………」
もはやお約束となりつつある話の運びに、僕は渋い顔をしてこめかみの辺りを掻いた。
動く像の中に隠されていた、謎の石──
この石のせいで像が動いたのか、この石を守るために動く像に隠されていたのか、それは分からないが──どちらにせよ、この石が特別な品であることに変わりはない。
店で売りに出すにしても、この石のことを多少は知っていないと出すに出せない。
しばらくこれは倉庫の奥深くにしまっておくことになりそうだ。
そう思い、石を作業台の隅の方に寄せた時だった。
「邪魔をする。此処の店主はいるか」
一人の冒険者が、店の中に入ってきた。
男物の魔術師のローブを身に纏い、しかし背負った得物は人間の身の丈ほどもある大きさの大剣という変わった格好をした剣士だった。長い銀髪を複雑に編み込んだ髪型は婚礼時の花嫁を彷彿とさせる華やかさがあり、しかし長い前髪の陰から覗く灰色の瞳は鋭い光を放っている。何ともちぐはぐな印象を併せ持った男である。
彼は店の奥にいる僕の姿を見つけると、迷わずこちらにやって来た。
傍で伏せているシルバーをちらりと見て、僕の顔に視線を合わせ、口を開く。
「あんたが、昼間畑にあった石像を解体した錬金術師か」
「君は?」
僕が問いかけると、男は一呼吸間を置いて、答えた。
「俺は、ジュード・アヴァランという。ある遺跡にまつわる『鍵』を探して旅をしている」
彼は腰に下げていた袋から何かを取り出すと、僕に見せてきた。
「あの畑の主に聞いた。あんたは今、これと同じものを持っているはずだ」
──それは、表面に鳥を象った彫刻が施された黒い球体型の石だった。
僕はちらりと作業台の隅を見やった。
そこに置かれている石を見て、それと彼が持っている石が全く同じものであることを把握する。
少なくとも、彼は悪人には見えない。隠す必要はないだろう。
僕は相手の顔に視線を戻して、答えた。
「……確かに、持ってるけど」
「これは、二個で一組になっている。ある遺跡の封印された扉を開くための鍵なんだ」
ジュードさんは語り始めた。
その遺跡は、ガラム地方にあるクロウワ遺跡という。クロウワ岬という場所に建てられた小さな遺跡らしい。
その遺跡は遺跡としては比較的新しいもので、内部は錬金術によって施された罠が一杯だったそうだ。
罠は何とか潰して無力化させたものの、最奥に存在していた封印──閉ざされた扉を開くことはできなかったのだそう。
彼はあちこちを巡って遺跡のことを調べ、扉を開くには二個で一組になっている『鍵』が必要であることと、その『鍵』が眠っている場所を突き止めた。
ジールさんの畑にあの像が埋まっていることを教えたのはジュードさんで、発掘するように冒険者ギルドに話を持ちかけたのも彼らしい。
彼は像を発掘した後は、像を何とかして壊して中にある石を手に入れるつもりだったのだそうだ。
成程、それでギルベルトさんが……というか冒険者ギルドが発掘を請け負ってたんだな。
「あの像を解体したあんたの錬金術の腕を見込んで頼みがある」
石を腰の袋に戻して、ジュードさんは言った。
「俺と一緒に、遺跡に来てもらいたい。あんたの錬金術の腕が、あの遺跡を探索するために必要なんだ」
「…………」
もはやお約束となりつつある話の運びに、僕は渋い顔をしてこめかみの辺りを掻いた。
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