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第110話 刻一刻
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「ふっ」
短く息を吐きながら、ジュードさんは右の腕に大剣を振るう。
狙いは、手首。掴まれる危険を真っ先に排除しようという考えなのだろう。
炎を纏った茜色の刃は、寸分狂わず手首に命中した。
がつっと固い音を立てて、刃先が手首にめり込む。
斬れる。しかし──一気に両断するには力が足りない。
腕は一瞬動きを止めると、獲物を発見した獣のようにまっすぐジュードさんに向けて開いた手を伸ばしてきた。
「ファイアボール!」
ジュードさんが掌に向かって魔術を放つ。
火球は掌に勢い良くぶち当たり、迫り来る掌の動きを横に逸らした。
その隙に、彼は腕が届く範囲の外に飛び退いた。
そこに、鳥の顔が吐き出した炎が降り注ぐ!
「ちっ」
彼は舌打ちして顔の真下に移動した。
炎が彼の肩口を掠めて何もない空間を焼き、消える。
彼は忌々しそうに顔を睨むと、僕の方に退いてきた。
「あんた、魔術が使えたのか」
「……一応は」
僕は答えた。
魔術が使えて戦わないというのはどういうつもりだと責められるかと思ったが、僕の心配はただの杞憂に終わった。
彼は視線で鳥の顔を指し示しながら、言った。
「手首に罅が入った分、脆くなってるはずだ。注意は俺が引くから、あんたは手首を狙ってくれ」
「……分かった」
鳥の顔がこちらを向く。
その目が光り輝いたのを見て、ジュードさんが僕を肘で突き飛ばしてきた!
「わっ!?」
二人の間を二本の光線が貫いていく。
ジュードさんが突き飛ばしてくれなかったら、今頃僕は光線に体を貫かれていたはずだ。
危なかった……!
背筋に冷や汗が浮かんだ。
「エンチャント・ファイア!」
再度大剣に炎を纏わせてジュードさんが壁に向かっていく。
鳥の目玉を狙って垂直に立てた大剣を突き入れる。
びきっ、と目玉が砕けて顔に罅が入る。
顔は怒ったように嘴を開くと、咬み付こうとジュードさんを狙って首を伸ばしてきた。
ジュードさんはそれを身を引いてかわし、目玉に突き立てた大剣に力を込めた。
大剣が顔を斜めに切り裂く。深く付いた傷からぱらぱらと欠片になった石が零れ落ちて、ジュードさんの靴に当たった。
左右の腕がジュードさんを捕まえようと彼に迫る。
そこを狙って、僕は魔術を放った。
「フレアボム!」
僕の掌から生まれた光が、罅の入った手首に突き刺さる。
ばんっ、と光が弾けて、手首が吹き飛ぶ。
ごろっと床に落ちた手首を蹴飛ばして、ジュードさんは壁の右側に移動した。
手首を失った腕はなくなった手首を探すように意味のない動きを繰り返している。まだ腕そのもので殴られる危険はあるにはあるが、脅威は大幅に減った。
「フレアバレット!」
右の腕を狙って更に僕は魔術を撃った。
剣を構えたジュードさんが顔に向かっていく。そのすぐ後ろに、大量の茜色の光が降り注ぐ!
ぼばばば、と破裂する光。光をまともに食らって更に砕け、短くなる腕。
もう、右の腕は肘までの長さしかない。
あれだけ短くなれば、接近しても危険はないはずだ。
僕は駆け出した。右の腕の真下に向かって。
両の掌をしっかりと壁に付けて、精神を集中させる。
これで、壁は解体できるはずだ。
間に合って良かった……!
胸中で安堵しつつ、僕は壁に魔力を流した。
ぱぁんっ!
掌を叩く衝撃。弾かれ、霧散する僕の魔力。
──壁は、僕の錬金術を弾いたのだ。
「……な!?」
僕は壁を見上げた。
壁は、こちらに迫るのを止めない。部屋に残された空間は、既に半分ほどにまで減っている。
「まだ壊せないのか、そろそろ余裕がないぞ!」
顔の攻撃を避けながらジュードさんが叫ぶ。
僕はそれに答えられず、呆然と壁を見上げていた。
短く息を吐きながら、ジュードさんは右の腕に大剣を振るう。
狙いは、手首。掴まれる危険を真っ先に排除しようという考えなのだろう。
炎を纏った茜色の刃は、寸分狂わず手首に命中した。
がつっと固い音を立てて、刃先が手首にめり込む。
斬れる。しかし──一気に両断するには力が足りない。
腕は一瞬動きを止めると、獲物を発見した獣のようにまっすぐジュードさんに向けて開いた手を伸ばしてきた。
「ファイアボール!」
ジュードさんが掌に向かって魔術を放つ。
火球は掌に勢い良くぶち当たり、迫り来る掌の動きを横に逸らした。
その隙に、彼は腕が届く範囲の外に飛び退いた。
そこに、鳥の顔が吐き出した炎が降り注ぐ!
「ちっ」
彼は舌打ちして顔の真下に移動した。
炎が彼の肩口を掠めて何もない空間を焼き、消える。
彼は忌々しそうに顔を睨むと、僕の方に退いてきた。
「あんた、魔術が使えたのか」
「……一応は」
僕は答えた。
魔術が使えて戦わないというのはどういうつもりだと責められるかと思ったが、僕の心配はただの杞憂に終わった。
彼は視線で鳥の顔を指し示しながら、言った。
「手首に罅が入った分、脆くなってるはずだ。注意は俺が引くから、あんたは手首を狙ってくれ」
「……分かった」
鳥の顔がこちらを向く。
その目が光り輝いたのを見て、ジュードさんが僕を肘で突き飛ばしてきた!
「わっ!?」
二人の間を二本の光線が貫いていく。
ジュードさんが突き飛ばしてくれなかったら、今頃僕は光線に体を貫かれていたはずだ。
危なかった……!
背筋に冷や汗が浮かんだ。
「エンチャント・ファイア!」
再度大剣に炎を纏わせてジュードさんが壁に向かっていく。
鳥の目玉を狙って垂直に立てた大剣を突き入れる。
びきっ、と目玉が砕けて顔に罅が入る。
顔は怒ったように嘴を開くと、咬み付こうとジュードさんを狙って首を伸ばしてきた。
ジュードさんはそれを身を引いてかわし、目玉に突き立てた大剣に力を込めた。
大剣が顔を斜めに切り裂く。深く付いた傷からぱらぱらと欠片になった石が零れ落ちて、ジュードさんの靴に当たった。
左右の腕がジュードさんを捕まえようと彼に迫る。
そこを狙って、僕は魔術を放った。
「フレアボム!」
僕の掌から生まれた光が、罅の入った手首に突き刺さる。
ばんっ、と光が弾けて、手首が吹き飛ぶ。
ごろっと床に落ちた手首を蹴飛ばして、ジュードさんは壁の右側に移動した。
手首を失った腕はなくなった手首を探すように意味のない動きを繰り返している。まだ腕そのもので殴られる危険はあるにはあるが、脅威は大幅に減った。
「フレアバレット!」
右の腕を狙って更に僕は魔術を撃った。
剣を構えたジュードさんが顔に向かっていく。そのすぐ後ろに、大量の茜色の光が降り注ぐ!
ぼばばば、と破裂する光。光をまともに食らって更に砕け、短くなる腕。
もう、右の腕は肘までの長さしかない。
あれだけ短くなれば、接近しても危険はないはずだ。
僕は駆け出した。右の腕の真下に向かって。
両の掌をしっかりと壁に付けて、精神を集中させる。
これで、壁は解体できるはずだ。
間に合って良かった……!
胸中で安堵しつつ、僕は壁に魔力を流した。
ぱぁんっ!
掌を叩く衝撃。弾かれ、霧散する僕の魔力。
──壁は、僕の錬金術を弾いたのだ。
「……な!?」
僕は壁を見上げた。
壁は、こちらに迫るのを止めない。部屋に残された空間は、既に半分ほどにまで減っている。
「まだ壊せないのか、そろそろ余裕がないぞ!」
顔の攻撃を避けながらジュードさんが叫ぶ。
僕はそれに答えられず、呆然と壁を見上げていた。
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