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第116話 封印されていた宝
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ナナイたちが僕の元を訪れてから二日が過ぎた。
今頃、彼女たちは封印の中に眠っている宝を手にしている頃だろう。
彼女たちは手に入れた宝をわざわざ僕のところに見せに来ると言っていたから、早ければそろそろ此処に来るはずである。
僕は宝には興味はないが、彼女たちが持ってくる冒険譚を聞くことは嫌いではない。
面白い話を持って来てくれることを期待しよう。
そんなことを考えつつ、店先を箒で掃除していると。
上空から、青白く光る大きなものが降りてきた。
それは僕の目の前に降り立って、上に乗っている人間を残して消え去った。
「シルカちゃん、ただいまー」
真っ先に僕の傍に来たのはナナイだった。
やや遅れてブランとイオンがやって来る。
この様子……無事に扉の封印は解けたみたいだな。
「この人たち、シルカちゃんの知り合いなんだってね。行くところが同じだから、ついでに乗せてもらっちゃった」
「まさか俺たちの他にも封印を解こうとしてる奴がいたなんてな。宝を狙うライバルじゃなくて良かったぜ」
ブランは背負っている大きめの麻袋を下ろして、僕の前に差し出してきた。
「この通り、宝は手に入れてきた。約束だからな、お前に見せてやる」
「此処じゃ店に来るお客さんの邪魔になるから、店の奥でな」
僕は三人に店の中に入るように言って、戸口をくぐった。
作業台の上に、ブランは麻袋の中身を取り出して置いた。
それは、一見するとただの骨董品のように見える品ばかりであった。
魚の意匠が彫刻されたオパール色の竪琴。
懐中時計のような形の大きなコンパス。
所々が破れた古めかしい羊皮紙。茶色の紙面には、楽譜が記されている。
これが……あの扉に封印されていたもの?
「これが、俺たちがクラシュの森の洞窟で手に入れてきた宝だ」
「……何と言うか、普通の骨董品だな」
僕はコンパスを手に取った。
コンパスの針は、静かに北を指している。特に変わったところはない、普通のコンパスだ。
「海賊王の宝を隠した場所に関係する鍵と言われていたコイン……それで封印されていた道具……」
コンパスを作業台の上に戻して、僕は小首を傾げた。
「本当に、これが海賊王の宝に関係した品なのか?」
「これらを使えば宝物がある場所が分かるんじゃないかというのが、私たちの考えなんですぅ」
イオンはコンパスに手を伸ばした。
「例えばこれは、方角を示す道具じゃなくて、宝物の在り処を示す道具であるとかぁ……」
次に竪琴と楽譜を手に取る。
「この楽譜に書かれている曲をこの楽器で演奏すれば、宝物が出てくるとかぁ……きっとそういうものなんじゃないかって思いますぅ」
「……成程」
僕はイオンから楽譜と竪琴を受け取った。
楽譜に書かれている曲は、そんなに複雑なものではない。初見でも何とか弾けそうなくらいの短い曲だ。
僕は竪琴を構えて、静かに曲を奏でた。
長いこと調律なんてされていないだろうに、竪琴から奏でられる音は音の外れもなく美しいものだった。
ほう、と音色に聞き入るナナイたち。
僕が曲を奏で終えると、彼女たちから拍手が起こった。
「シルカ、お前楽器の演奏なんてできたのか?」
「……昔、路銀稼ぎのために吟遊詩人の真似事をしてた時期があってね。その時に覚えたんだよ」
冒険者生活をしていると、冒険者ギルドから受けられる仕事(クエスト)の報酬だけでは食べていけない時というものが出てくることもある。
そんな時のために、色々なことをやるのだ。独自に街で仕事を請け負ったり、行商人の真似事をしたり……僕の場合は、それが吟遊詩人の仕事だったというわけだ。
当時無愛想だった僕の芸で客を集められたかどうかは……黒歴史に近い話なので、その辺りは訊かないでもらえると有難い。
「よし、決まりだな」
頷くブラン。
「シルカ、お前も俺たちと一緒に来い」
「……は?」
彼の言葉に、僕の目は点になった。
今頃、彼女たちは封印の中に眠っている宝を手にしている頃だろう。
彼女たちは手に入れた宝をわざわざ僕のところに見せに来ると言っていたから、早ければそろそろ此処に来るはずである。
僕は宝には興味はないが、彼女たちが持ってくる冒険譚を聞くことは嫌いではない。
面白い話を持って来てくれることを期待しよう。
そんなことを考えつつ、店先を箒で掃除していると。
上空から、青白く光る大きなものが降りてきた。
それは僕の目の前に降り立って、上に乗っている人間を残して消え去った。
「シルカちゃん、ただいまー」
真っ先に僕の傍に来たのはナナイだった。
やや遅れてブランとイオンがやって来る。
この様子……無事に扉の封印は解けたみたいだな。
「この人たち、シルカちゃんの知り合いなんだってね。行くところが同じだから、ついでに乗せてもらっちゃった」
「まさか俺たちの他にも封印を解こうとしてる奴がいたなんてな。宝を狙うライバルじゃなくて良かったぜ」
ブランは背負っている大きめの麻袋を下ろして、僕の前に差し出してきた。
「この通り、宝は手に入れてきた。約束だからな、お前に見せてやる」
「此処じゃ店に来るお客さんの邪魔になるから、店の奥でな」
僕は三人に店の中に入るように言って、戸口をくぐった。
作業台の上に、ブランは麻袋の中身を取り出して置いた。
それは、一見するとただの骨董品のように見える品ばかりであった。
魚の意匠が彫刻されたオパール色の竪琴。
懐中時計のような形の大きなコンパス。
所々が破れた古めかしい羊皮紙。茶色の紙面には、楽譜が記されている。
これが……あの扉に封印されていたもの?
「これが、俺たちがクラシュの森の洞窟で手に入れてきた宝だ」
「……何と言うか、普通の骨董品だな」
僕はコンパスを手に取った。
コンパスの針は、静かに北を指している。特に変わったところはない、普通のコンパスだ。
「海賊王の宝を隠した場所に関係する鍵と言われていたコイン……それで封印されていた道具……」
コンパスを作業台の上に戻して、僕は小首を傾げた。
「本当に、これが海賊王の宝に関係した品なのか?」
「これらを使えば宝物がある場所が分かるんじゃないかというのが、私たちの考えなんですぅ」
イオンはコンパスに手を伸ばした。
「例えばこれは、方角を示す道具じゃなくて、宝物の在り処を示す道具であるとかぁ……」
次に竪琴と楽譜を手に取る。
「この楽譜に書かれている曲をこの楽器で演奏すれば、宝物が出てくるとかぁ……きっとそういうものなんじゃないかって思いますぅ」
「……成程」
僕はイオンから楽譜と竪琴を受け取った。
楽譜に書かれている曲は、そんなに複雑なものではない。初見でも何とか弾けそうなくらいの短い曲だ。
僕は竪琴を構えて、静かに曲を奏でた。
長いこと調律なんてされていないだろうに、竪琴から奏でられる音は音の外れもなく美しいものだった。
ほう、と音色に聞き入るナナイたち。
僕が曲を奏で終えると、彼女たちから拍手が起こった。
「シルカ、お前楽器の演奏なんてできたのか?」
「……昔、路銀稼ぎのために吟遊詩人の真似事をしてた時期があってね。その時に覚えたんだよ」
冒険者生活をしていると、冒険者ギルドから受けられる仕事(クエスト)の報酬だけでは食べていけない時というものが出てくることもある。
そんな時のために、色々なことをやるのだ。独自に街で仕事を請け負ったり、行商人の真似事をしたり……僕の場合は、それが吟遊詩人の仕事だったというわけだ。
当時無愛想だった僕の芸で客を集められたかどうかは……黒歴史に近い話なので、その辺りは訊かないでもらえると有難い。
「よし、決まりだな」
頷くブラン。
「シルカ、お前も俺たちと一緒に来い」
「……は?」
彼の言葉に、僕の目は点になった。
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