アメミヤのよろず屋

高柳神羅

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第144話 店主だってたまには格好良い

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 茂みに隠れるように転がっている、小さな石の傍。
 そこの地面に、僕はマンドラゴラを植えた。
 根っこがしっかりと土の中に隠れるように、こんもりと土を被せてやる。
 作業を終えて、膝を伸ばして立ち上がる。
「これでいいか?」
『ありがとう』
 マンドラゴラは嬉しそうに言った。
『貴方が優しい人間で良かった。貴方みたいな人間に出会えて、わたし、幸せよ』
「もう人間に見つかったりするなよ。いつでも僕が助けてやれると思ったら大間違いだからな」
 僕はマンドラゴラを見下ろした。
 風に葉っぱを揺らすマンドラゴラは、周囲の植物と馴染んですっかり森の一員になっていた。
 此処は道とは外れた場所だから、余程のことがない限りこいつが人間に見つかることはないだろう。
『わたし、此処で精一杯生きるわ。貴方に助けられた命、大事にする』
 マンドラゴラはそう言って、さよならと僕に別れの言葉を告げた。
『さようなら。優しい人』
「じゃあね」
 僕はシルバーを連れて道がある場所へと引き返した。
 シルバーは遠くを見つめながら、言った。
『シルカ、お人好しだね。たった一本のマンドラゴラのためにこんな遠くの森まで来るなんて』
「そうだね」
 僕は苦笑した。
「今までの僕だったらまずやることはない行動だよな」
 今までの僕だったら、色々理由を付けて店からは動かなかっただろう。
 一人で歩く度胸がないのは同じだけど……前に比べたら外の世界を歩くことに対して抵抗感が薄くなってきたよなと思う。
 たった一本のマンドラゴラのために、こんな遠くまで。
 周囲に言われてずるずると引き摺られるように行動を決めたんじゃなくて、自分の意思で決断して歩いて。
 ちょっとは僕も……男らしくなったってことなのかな。
『お人好しだけど……格好良いよ』
「そうかな?」
 シルバーの言葉に、僕は若干照れ臭くなりながら前を向いた。
 ヒルコの森は、そこかしこで鳥の声を響かせながら僕たちを包み込んでいる。
 この道を自分の足で歩いて抜けたら、僕はひとつ成長できる。そう思えた。
「よし、帰ろう。家でラフィナが待ってるしね」
 僕は一歩を踏み出した。
「魔物が出たら宜しくな、シルバー」
『シルカ……魔術ができるんだから、少しは自分で戦えるようになりなよ』
「やだ。怖いもん」
『……やっぱり格好悪いよ、シルカ』
 さあ。僕たちの帰りを待ってる家へと帰ろう。
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