アメミヤのよろず屋

高柳神羅

文字の大きさ
148 / 176

第148話 遺跡を目指す旅

しおりを挟む
 入口が封印されている遺跡──ゼルニウス遺跡は、アメミヤから馬車で南に三日ほど行った場所にあるクチョクという町から徒歩で一日程度東に行ったところにあるという。
 それを馬車に乗る直前に聞かされた僕は、そんなに大量の食糧なんて用意してないとクレハに訴えた。
 せいぜい一日とか、その程度の移動距離だと思ってたんだよ。
 僕が準備不足だったんじゃない。クレハがきちんと前情報として教えてくれなかったのが悪いんだ。
 クレハは笑いながら、食糧なら自分の分を分けるからと言った。
 全く……先行き不安だ。
 僕たちを乗せた馬車は、一路クチョクの町を目指してアメミヤを発った。
 移動中は、クレハと色々な話をした。彼らが天空神殿を追いかけるきっかけになった話や、彼らの普段の生活についてなど。
 彼らが天空神殿を追いかけるようになったのは、ある街で旅の吟遊詩人が歌っていた天空神殿にまつわる歌を聞いて興味を抱いたのがきっかけらしい。
 冒険者が冒険を始める理由なんてそんなもんだ、とクレハは笑っていた。
 それを聞きながら、僕は自分が冒険者になったきっかけって何だったっけ、とふと思った。
 確か何か人生の転機になるようなことがあったのがきっかけだったと思うのだが、いかんせん十年前のことだからか、ちゃんとした記憶は残っていない。
 まあ、僕の過去の話なんてそんなに面白いものでもないから、今更聞きたい奴なんていないだろうけどね。
 僕が話したのは、冒険者を引退してからの話が主だった。冒険者を引退したきっかけについては話さなかったが、錬金術で作った商品を売って暮らしてきたことや、最近は錬金術師の弟子の面倒を見ていることなんかを話した。
 僕の話を、クレハは楽しそうに聞いていた。始終にこにこしながら「へぇ」とか「そうなん?」とか相槌を打っていた。
 キクの話にもなった。
 何でもキクは最近冒険者になったらしく、故郷を出てまだ間もないらしい。たまたま里帰りをしていたクレハを追いかけるように故郷を飛び出して、そのまま魔術師になったのだそうだ。
 魔術師としての腕前は、何とか魔物を相手に物怖じしないで魔術を唱えられる程度。使える魔術は基礎的なものが多く、現在は魔術の腕を磨くために修行をしているらしい。
 まだまだシルカの足下には及ばんよ、とクレハは笑っていた。
 魔物に怯むことなく戦えるってだけで僕よりも凄い魔術師だと思うんだけどね、僕は。
 そんな感じで会話を楽しみつつ、道中出てきた魔物をクレハとキクに蹴散らしてもらって、僕たちはひとまずの目的地であるクチョクの町に到着した。
 クチョクは村に毛が生えたような、町として見るには随分と田舎っぽい発展具合の町だった。
 通りを牛や馬が歩いてるし。牧歌的というか、のどかな集落だ。
 町に着いた時には既に日が暮れかけていたので、その日は宿に泊まり、翌日に遺跡に向かうことになった。
 長いこと馬車の揺れる座席に座っていた疲れを癒すように、僕は部屋に入りすぐに寝てしまった。
 翌日。
 曇った空の下、雨が降る心配をしながら僕たちは遺跡を目指して町を出発した。
 現れる魔物を倒しながら、平原を歩くこと一日。
 空が随分と暗くなった頃に、ようやく目的地であるゼルニウス遺跡に到着した。
 遺跡の探索は翌日に持ち越しということになり、僕たちは遺跡の前で夜営をした。
 焚き火を熾して、その周囲で食事を摂りながら遺跡調査の手筈についてを話し合う。
 手筈といっても、特に確認し合うことはない。今まで通りに出てきた魔物を対処するのはクレハとキクの二人で、僕の担当は遺跡の仕掛けや罠を解除することだ。
 遺跡の中では油断しないようにしよう、と互いに頷き合って、僕たちは眠りに就いた。
 無事に何事もなく探索が終えられますように。
 柔らかい草の絨毯を寝床にしながら、僕はそう願った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか? これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

野獣と噂の王太子と偽りの妃

葉月 まい
ファンタジー
継母に勧められるまま、 野獣のように恐ろしいと噂の 王太子との縁談に向かった 伯爵令嬢のプリムローズ。 「勘違いするな。妃候補だなどと思っているなら大きな間違いだ。とっとと帰れ」 冷たくあしらわれるが 継母と異母妹の為にも 邪魔者の自分が帰る訳にはいかない。 「わたくしをここの使用人として 雇っていただけませんか?」 「…は?!」 戸惑う王太子の告白。 「俺は真の王太子ではない。そなたはこんなところにいてはならない。伯爵家に帰れ」 二人の関係は、どうなっていくのか? ⎯⎯⎯⎯ ◦◈◦◈◦◈◦⎯⎯⎯⎯ プリムローズ=ローレン(十七歳)…伯爵令嬢 母を知らずに育ち、継母や異母妹に遠慮しながら毎日を過ごしている。 自分がいない方がいいと、勧められるまま王太子の妃候補を募る通達により、宮殿へ。 野獣のように恐ろしいと噂の王太子に 冷たくされながらも いつしか心を通わせていく。 そんなプリムローズの 幸せなプリンセスストーリー♡

処理中です...