アメミヤのよろず屋

高柳神羅

文字の大きさ
162 / 176

第162話 店主、奮闘する

しおりを挟む
 破裂した魔術の光がマンイーターの胴体を深く抉る。
 マンイーターは衝撃で吹き飛び、壁にぶつかった。
 しかし、仕留めるまでには至らない。のろのろとした動きで体勢を直し、脚の何本かを鎌のように振り上げてこちらへと迫ってくる!
 その姿の何と気持ち悪いことか。
 僕は必死に首を振って叫び声を上げた。
「無理無理無理! こんなの一撃で仕留められるわけないって!」
「フレアランス」
 僕の叫びを無視して冷静に魔術を撃つシャーリーンさん。
 彼女が放った魔術はマンイーターの残っている胴体を撃ち抜き、床に着弾して小さな穴を空けた。
 胴体を失ってばらけたマンイーターの脚がばらばらと辺りに散らばる。
 それは胴体を失ってもまだ生命力が消えていないのか、先端がひくひくと痙攣するように動いていた。
 うう、気持ち悪い。夢に出そうだよ。
 シャーリーンさんは僕に目を向けると、言った。
「だから大丈夫だと言ったじゃないですか」
「一般人をさも当然のように戦わせるなよ! 泣くぞ!」
 僕はシャーリーンさんに訴えた。
 しかし彼女はしれっとした様子で僕の言葉を聞き流し、先に進もうと言ってさっさと歩き始めた。
 駄目だ、この人マイペースすぎる!
 僕は頭を抱えたくなるのを堪えて、マンイーターの脚を踏み越えてシャーリーンさんの後を追った。

 マンイーターは遺跡のそこかしこにいた。
 通路の果ての部屋にも数匹が密集していて、それを見た時は悲鳴を上げそうになったよ。
 しかも、マンイーター同士に仲間意識はないのか共食いしてる奴もいたし。
 あの巨体が重なってむしゃむしゃと同族を貪り食っている光景は醜悪の一言に尽きる。
 さっさと視界内から排除したくて、僕は懸命に魔術を撃った。
 仕留め損ねたマンイーターはシャーリーンさんが葬ってくれた。
 彼女の魔術の威力は凄まじい。僕が操る魔術の何倍も威力がある。
 これ、最初から彼女が攻撃した方が早く片付くんじゃないかって思えるくらいだ。
 彼女自身には全然その自覚はないみたいだけど。
 そんな感じでマンイーターを排除していき、部屋に設置されていた転移装置を使ってどんどん先へと進んでいった。

 遺跡の探索を始めて二時間が過ぎた。
 最深部にはまだ到着しない。
 此処に来るまでに一体何十匹のマンイーターを倒したんだか、多すぎて数える気にもならなかった。
「もうすぐです」
 シャーリーンさんは前を見据えたまま言う。
 彼女はこの遺跡の内部事情にやたらと詳しいが、その情報は一体何処で仕入れたのだろう。
 まあ、詳しいのは悪いことじゃないし、迷うよりはそっちの方がいいからその辺りのことを突っ込むつもりはないけれど。
「やっぱり……いるんだろうか。宝を守る番人みたいなのが」
「います」
 当然、と言うように彼女は答えた。
 いるか……そりゃそうだよな。この遺跡は宝を守るためのものなんだし。
「ですが、私たちの敵ではありません。安心して下さい」
「何処の世界に敵がいるって分かってて安心する奴がいるんだよ……」
 僕は半眼になって呻いた。
 シャーリーンさんの思考回路は理解し難い。
 それともこれが冒険者の普通の思考回路で、僕は冒険者じゃないから理解できないだけなのか?
 まあ何にせよ、その番人とやらと御対面したら戦わなくちゃいけないことは確かだ。
 気が重くて溜め息が出るよ。
 はあ、と溜め息を漏らす。
 と。
 シャーリーンさんが立ち止まった。
 僕は彼女の背中にぶつかって止まった。
「何?」
「着きました」
 ああ、ようやく遺跡の最深部に着いたのか。
 僕は顔を上げて前を見て──
「……げ」
 視界に入ったものを理解すると同時に、表情が歪む。
 僕たちの目の前にあったもの。
 それは、通路を目一杯塞ぐように立っている巨大なマンイーターだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか? これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

野獣と噂の王太子と偽りの妃

葉月 まい
ファンタジー
継母に勧められるまま、 野獣のように恐ろしいと噂の 王太子との縁談に向かった 伯爵令嬢のプリムローズ。 「勘違いするな。妃候補だなどと思っているなら大きな間違いだ。とっとと帰れ」 冷たくあしらわれるが 継母と異母妹の為にも 邪魔者の自分が帰る訳にはいかない。 「わたくしをここの使用人として 雇っていただけませんか?」 「…は?!」 戸惑う王太子の告白。 「俺は真の王太子ではない。そなたはこんなところにいてはならない。伯爵家に帰れ」 二人の関係は、どうなっていくのか? ⎯⎯⎯⎯ ◦◈◦◈◦◈◦⎯⎯⎯⎯ プリムローズ=ローレン(十七歳)…伯爵令嬢 母を知らずに育ち、継母や異母妹に遠慮しながら毎日を過ごしている。 自分がいない方がいいと、勧められるまま王太子の妃候補を募る通達により、宮殿へ。 野獣のように恐ろしいと噂の王太子に 冷たくされながらも いつしか心を通わせていく。 そんなプリムローズの 幸せなプリンセスストーリー♡

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

処理中です...