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第175話 クレハの決断
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「兄さん!」
僕とキクは倒れているクレハに駆け寄った。
クレハの胴着は血で真っ赤に染まり、あちこちに空いた穴から今もなお血が溢れ出ていた。
クレハは仰向けにひっくり返った格好で、腹を大きく膨らませたり縮ませたりしながら天井をぼんやりと見つめている。
僕は鞄からポーションを取り出して、クレハの口に近付けた。
これだけの負傷をただのポーションで治せるとは思っていないが、何もしないよりはマシだ。
「クレハ、ポーションだ。何とか飲み込め」
「……おう、おおきに……」
半開きになった口の中にポーションを流し込むと、クレハは噎せながらも懸命にそれを飲み込んだ。
「……何とか、勝ったな……」
ふう、と深く息をついて、クレハは笑みを見せた。
こくん、とキクがそれに頷く。
僕は空になったポーションの瓶を脇に置いて、何気なく床の方に目を向けて──
例の黒い球体が今までにないくらいの紅い光を放っていることに気が付き、目を見開いた。
何だ……動いてる!?
今までシャーリーンが立っていた浮遊する台座に視線を移す。
台座の上の水晶が、誰もいないのに青い光を発していた。
足場の上の空間に、先程のように外の光景が映し出される。
天空神殿は、眩い光に包まれていた。
あれは……地上を撃った時と同じ状態だ。
天空神殿は、例の砲撃を地上に向けて放とうとしているのだ。
おそらく、シャーリーンが指輪を投げつけた時に、指令が働いたのだろう。
このままでは、地上が消し飛んでしまう!
僕は跳ねるように立ち上がって、浮かんでいる足場に飛び乗った。
台座の水晶に手を触れるが、反応はない。
当たり前だ。今の僕は指輪を持っていないのだから。
その指輪は、床に落ちてしまった。此処から探すには床が遠すぎて無理がある。
僕は水晶を拳で叩いた。
「くそ、止められない!」
「…………」
クレハが傷付いた体をゆっくりと起こした。
よろめきながらも立ち上がり、そのまま、足場から飛び降りる。
黒い球体の元まで行き、それに両の掌を付けて、言った。
「止められへんのなら壊せばええんや。諦めるには早いで」
彼は僕たちのいる方を見上げて、笑った。
「シルカ。キク。二人は先に此処から脱出しい。此処は自分が何とかしたるさかい」
「壊すって……無茶だろ、ただの石を砕くのとは訳が違うんだぞ!」
「心配はいらんて。こう見えて自分、力には自信があるからなぁ」
鼻の下を指先で擦り、胸を張る。
彼の体から噴き出る血がぽつぽつと散って、床に赤い点々を描き出した。
「こいつを壊したら自分も此処を出る。せやから二人は先に行ってええ。外で落ち合おうや」
建物全体が震動を始めた。
もう時間がない。
僕はきゅっと唇を噛んだ。
「……早う行き」
クレハは黒い球体に視線を戻し、言った。
「早う!」
僕は浮遊する足場から通路に降りた。
そのままキクを連れて来た道を戻り、転移ポイントを踏んで部屋から脱出する。
「……キクのこと、頼んだで。シルカ」
部屋から出る瞬間、クレハの静かな声が聞こえてきたような、気がした。
僕とキクは倒れているクレハに駆け寄った。
クレハの胴着は血で真っ赤に染まり、あちこちに空いた穴から今もなお血が溢れ出ていた。
クレハは仰向けにひっくり返った格好で、腹を大きく膨らませたり縮ませたりしながら天井をぼんやりと見つめている。
僕は鞄からポーションを取り出して、クレハの口に近付けた。
これだけの負傷をただのポーションで治せるとは思っていないが、何もしないよりはマシだ。
「クレハ、ポーションだ。何とか飲み込め」
「……おう、おおきに……」
半開きになった口の中にポーションを流し込むと、クレハは噎せながらも懸命にそれを飲み込んだ。
「……何とか、勝ったな……」
ふう、と深く息をついて、クレハは笑みを見せた。
こくん、とキクがそれに頷く。
僕は空になったポーションの瓶を脇に置いて、何気なく床の方に目を向けて──
例の黒い球体が今までにないくらいの紅い光を放っていることに気が付き、目を見開いた。
何だ……動いてる!?
今までシャーリーンが立っていた浮遊する台座に視線を移す。
台座の上の水晶が、誰もいないのに青い光を発していた。
足場の上の空間に、先程のように外の光景が映し出される。
天空神殿は、眩い光に包まれていた。
あれは……地上を撃った時と同じ状態だ。
天空神殿は、例の砲撃を地上に向けて放とうとしているのだ。
おそらく、シャーリーンが指輪を投げつけた時に、指令が働いたのだろう。
このままでは、地上が消し飛んでしまう!
僕は跳ねるように立ち上がって、浮かんでいる足場に飛び乗った。
台座の水晶に手を触れるが、反応はない。
当たり前だ。今の僕は指輪を持っていないのだから。
その指輪は、床に落ちてしまった。此処から探すには床が遠すぎて無理がある。
僕は水晶を拳で叩いた。
「くそ、止められない!」
「…………」
クレハが傷付いた体をゆっくりと起こした。
よろめきながらも立ち上がり、そのまま、足場から飛び降りる。
黒い球体の元まで行き、それに両の掌を付けて、言った。
「止められへんのなら壊せばええんや。諦めるには早いで」
彼は僕たちのいる方を見上げて、笑った。
「シルカ。キク。二人は先に此処から脱出しい。此処は自分が何とかしたるさかい」
「壊すって……無茶だろ、ただの石を砕くのとは訳が違うんだぞ!」
「心配はいらんて。こう見えて自分、力には自信があるからなぁ」
鼻の下を指先で擦り、胸を張る。
彼の体から噴き出る血がぽつぽつと散って、床に赤い点々を描き出した。
「こいつを壊したら自分も此処を出る。せやから二人は先に行ってええ。外で落ち合おうや」
建物全体が震動を始めた。
もう時間がない。
僕はきゅっと唇を噛んだ。
「……早う行き」
クレハは黒い球体に視線を戻し、言った。
「早う!」
僕は浮遊する足場から通路に降りた。
そのままキクを連れて来た道を戻り、転移ポイントを踏んで部屋から脱出する。
「……キクのこと、頼んだで。シルカ」
部屋から出る瞬間、クレハの静かな声が聞こえてきたような、気がした。
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