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第1部 貴族学園編
37 闇の加護〜???視点〜
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気が付いた時には暗闇の中で、冷たい床の上に座り込んでいた。
体中が痛い。背中や足、腕が変になった気がした。
「なんで?」
ぶかぶかだった服が、ぴったりになっている。
袖を何回も折り曲げて着ていたはずなのに。
手の大きさがおかしい。足の大きさも違ってる。腕も、今までよりずっと長い。
「どうなってるの?」
「キュイ」
胸ポケットの中で契約獣のクロが鳴いた。
「クロ! 無事だったんだね。よかった」
そうだ。写真を撮ろうとして、咳き込んで、魔道具が光って、ポケットの魔王の魔石が熱くなった。取り出そうとしたけど、体が動かなくて、ぼくはそのまま黒い炎に囲まれて、……。
姉さまの怯えた紫の瞳を見た。
はやく、姉さまの所に行かなきゃ。ぼくは無事だよって安心させてあげなきゃ。
「いたっ……」
立ち上がろうとしたけど、うまく足が動かせなくて、転んでしまった。
おかしい。なんか足が長くなってる? 引きずっていた上着が膝までしかない。
ぎいーっ
扉が開く音がして、あわててクローゼットの陰に隠れた。
『もうっ! みんな勝手なんだからっ!』
女の人の声と同時に、あたりが明るくなった。ランプに火を入れたみたいだ。
『ああ、もうっ! 私が聖女!? 魔王退治に行け?!
はあっ?! 行けるわけないでしょ。 前世の記憶がよみがえっただけの平凡な村人ですよ、私は! なんで? なんでよぉ?! 魔力が半端ない? それってただの、転生者特典だから! 聖女なんかじゃないったら!』
金髪の女の人は、1人で大声で叫んでいた。
『神様、神様。ねえ、神様聞いてる? 魔王退治っていったら勇者の仕事でしょ! 私じゃなくって、勇者を召喚してよ! どうせならイケメンで顔のいい男希望! 日本の芸能人で言ったら、レン君とかシュン君みたいな子を召喚してください。お願いします!』
パンパンと手をたたいて、女神像に向って祈っている。
ああ、これって……。
『レン君とかシュン君って誰?』
女の人の言葉が、姉さまの教えてくれた勇者様の言語だったので、ついクローゼットの陰から出て、話しかけてしまった。
『誰!?』
長い金髪を一つに結わえた女の人が振り向いた。
その瞳は、姉さまと同じ鮮やかな紫色だった。
『ぼくはリョウ。あなたは?』
『い、いやぁー!!』
ぼくをじっと見て、女の人は悲鳴を上げた。そして、扉の方に走って行った。
「神官様~! 大変! 早く来て! どうしよう~、私、勇者を異世界召喚しちゃった! シュン君にちょっと似たイケメン! 神官様! 早く来てったら!! やだ! どうしたらいいの?!」
姉さまによく似た顔立ちのその女の人は、廊下に向って大声を出してから、ぼくの方にもどってきた。
『ごめんなさい、ごめんなさい。私が神様に頼んじゃったから、日本から連れてこられたんだよね。えっと、君は何歳? 高校生かな。ああ、ごめんなさい。私、未成年者の誘拐犯になっちゃったよ。うぇーどうしよう。ごめんなさい~』
頭を下げて何度も謝る女の人に、ぼくも申し訳なくなってくる。
『えっと、お姉さんのせいじゃないです。それと、ぼくは6歳です。コウコウセーって何?』
『え? はい? その体で6歳? 未来の日本人は身長伸びたの?』
『うーんと』
自分の体を見てみる。いつもと大きさが違う。
『うん、なんか大きくなっちゃった』
『君、日本人であってるよね。日本語しゃべってるし。黒髪黒目で凹凸の薄い顔。あれ? でもなんか、おかしいな? もしかして、ハーフ? それにその服装も』
女の人がぼくをじろじろ見るんで、そんなに変わってるかなって、向こうの窓ガラスに映った自分の姿を見てみた。
あ、髪が真っ黒になってる。それに、すごく背が伸びた。「学ラン」は、あれだけブカブカだったのに、今はぴったりだ。ぼくはどうなったんだ?
「キュイ、キュイ」
ポケットからクロが飛び出してきて、肩に飛び乗った。
『ねえ、それって、羽が生えたトカゲ? それとも、まさかドラゴン?』
「え?」
クロをつかんでよく見ると、体の色が真っ黒になっていた。背中には、小さい黒い羽根が生えている。
「クロ? ドラゴンになったの?」
「ガウッ」
クロは口から小さい黒い炎を吐いた。
『えー、すごいっ! ドラゴンだ。初めて見た。さすが異世界』
ぼくも初めて本物を見たよ。
そう言おうとしたら、開いていた扉から白い服を来た男の人たちが入ってきた。
「聖女リシア様! 勇者様を召喚したとは、どういうことでしょう?」
「おお、あなたが勇者様ですか?」
「よくぞいらしてくれました。勇者様」
白い服の神官たちは、ぼくの前にひざまずいた。
「私が神様にお願いしたら、日本から召喚されちゃったの。リョウ君だって」
女の子の言葉に、神官たちはぼくに頭を下げた。
「勇者リョウ様。どうかこの国をお救いください」
「聖女リシア様とともに、魔王を倒す旅に出てください」
「勇者リョウ様、お願いします」
ちがう、ぼくは勇者リョウじゃない。
そう言おうとしたけど、窓ガラスに映る自分の姿を見て気が付いた。
ぼくの目の前で手を合わせているのは、金髪に紫の目のリシアって名前の聖女で。
ぼくは、黒髪に黒い目になって、黒い「学ラン」を着ている。そして、肩の上には黒いドラゴン。
……そっか。
姉さま。
ぼくはどうやら、勇者様になっちゃったみたいだよ。
※※※※※※※※
勇者リョウの正体は、タイムスリップしたリョウ君でした。
この後、彼は104歳まで生きて、寿命で亡くなります。
ちょっと分かりづらい点は、完結後のあとがきで説明させてください。でも、大抵のことは、「異世界だから」で言い訳します。
(ごめんなさい m(_ _)m おおらかな気持ちでお許しください)
あと一話で第一部が終わります。
これから先は、一日一話更新します。
体中が痛い。背中や足、腕が変になった気がした。
「なんで?」
ぶかぶかだった服が、ぴったりになっている。
袖を何回も折り曲げて着ていたはずなのに。
手の大きさがおかしい。足の大きさも違ってる。腕も、今までよりずっと長い。
「どうなってるの?」
「キュイ」
胸ポケットの中で契約獣のクロが鳴いた。
「クロ! 無事だったんだね。よかった」
そうだ。写真を撮ろうとして、咳き込んで、魔道具が光って、ポケットの魔王の魔石が熱くなった。取り出そうとしたけど、体が動かなくて、ぼくはそのまま黒い炎に囲まれて、……。
姉さまの怯えた紫の瞳を見た。
はやく、姉さまの所に行かなきゃ。ぼくは無事だよって安心させてあげなきゃ。
「いたっ……」
立ち上がろうとしたけど、うまく足が動かせなくて、転んでしまった。
おかしい。なんか足が長くなってる? 引きずっていた上着が膝までしかない。
ぎいーっ
扉が開く音がして、あわててクローゼットの陰に隠れた。
『もうっ! みんな勝手なんだからっ!』
女の人の声と同時に、あたりが明るくなった。ランプに火を入れたみたいだ。
『ああ、もうっ! 私が聖女!? 魔王退治に行け?!
はあっ?! 行けるわけないでしょ。 前世の記憶がよみがえっただけの平凡な村人ですよ、私は! なんで? なんでよぉ?! 魔力が半端ない? それってただの、転生者特典だから! 聖女なんかじゃないったら!』
金髪の女の人は、1人で大声で叫んでいた。
『神様、神様。ねえ、神様聞いてる? 魔王退治っていったら勇者の仕事でしょ! 私じゃなくって、勇者を召喚してよ! どうせならイケメンで顔のいい男希望! 日本の芸能人で言ったら、レン君とかシュン君みたいな子を召喚してください。お願いします!』
パンパンと手をたたいて、女神像に向って祈っている。
ああ、これって……。
『レン君とかシュン君って誰?』
女の人の言葉が、姉さまの教えてくれた勇者様の言語だったので、ついクローゼットの陰から出て、話しかけてしまった。
『誰!?』
長い金髪を一つに結わえた女の人が振り向いた。
その瞳は、姉さまと同じ鮮やかな紫色だった。
『ぼくはリョウ。あなたは?』
『い、いやぁー!!』
ぼくをじっと見て、女の人は悲鳴を上げた。そして、扉の方に走って行った。
「神官様~! 大変! 早く来て! どうしよう~、私、勇者を異世界召喚しちゃった! シュン君にちょっと似たイケメン! 神官様! 早く来てったら!! やだ! どうしたらいいの?!」
姉さまによく似た顔立ちのその女の人は、廊下に向って大声を出してから、ぼくの方にもどってきた。
『ごめんなさい、ごめんなさい。私が神様に頼んじゃったから、日本から連れてこられたんだよね。えっと、君は何歳? 高校生かな。ああ、ごめんなさい。私、未成年者の誘拐犯になっちゃったよ。うぇーどうしよう。ごめんなさい~』
頭を下げて何度も謝る女の人に、ぼくも申し訳なくなってくる。
『えっと、お姉さんのせいじゃないです。それと、ぼくは6歳です。コウコウセーって何?』
『え? はい? その体で6歳? 未来の日本人は身長伸びたの?』
『うーんと』
自分の体を見てみる。いつもと大きさが違う。
『うん、なんか大きくなっちゃった』
『君、日本人であってるよね。日本語しゃべってるし。黒髪黒目で凹凸の薄い顔。あれ? でもなんか、おかしいな? もしかして、ハーフ? それにその服装も』
女の人がぼくをじろじろ見るんで、そんなに変わってるかなって、向こうの窓ガラスに映った自分の姿を見てみた。
あ、髪が真っ黒になってる。それに、すごく背が伸びた。「学ラン」は、あれだけブカブカだったのに、今はぴったりだ。ぼくはどうなったんだ?
「キュイ、キュイ」
ポケットからクロが飛び出してきて、肩に飛び乗った。
『ねえ、それって、羽が生えたトカゲ? それとも、まさかドラゴン?』
「え?」
クロをつかんでよく見ると、体の色が真っ黒になっていた。背中には、小さい黒い羽根が生えている。
「クロ? ドラゴンになったの?」
「ガウッ」
クロは口から小さい黒い炎を吐いた。
『えー、すごいっ! ドラゴンだ。初めて見た。さすが異世界』
ぼくも初めて本物を見たよ。
そう言おうとしたら、開いていた扉から白い服を来た男の人たちが入ってきた。
「聖女リシア様! 勇者様を召喚したとは、どういうことでしょう?」
「おお、あなたが勇者様ですか?」
「よくぞいらしてくれました。勇者様」
白い服の神官たちは、ぼくの前にひざまずいた。
「私が神様にお願いしたら、日本から召喚されちゃったの。リョウ君だって」
女の子の言葉に、神官たちはぼくに頭を下げた。
「勇者リョウ様。どうかこの国をお救いください」
「聖女リシア様とともに、魔王を倒す旅に出てください」
「勇者リョウ様、お願いします」
ちがう、ぼくは勇者リョウじゃない。
そう言おうとしたけど、窓ガラスに映る自分の姿を見て気が付いた。
ぼくの目の前で手を合わせているのは、金髪に紫の目のリシアって名前の聖女で。
ぼくは、黒髪に黒い目になって、黒い「学ラン」を着ている。そして、肩の上には黒いドラゴン。
……そっか。
姉さま。
ぼくはどうやら、勇者様になっちゃったみたいだよ。
※※※※※※※※
勇者リョウの正体は、タイムスリップしたリョウ君でした。
この後、彼は104歳まで生きて、寿命で亡くなります。
ちょっと分かりづらい点は、完結後のあとがきで説明させてください。でも、大抵のことは、「異世界だから」で言い訳します。
(ごめんなさい m(_ _)m おおらかな気持ちでお許しください)
あと一話で第一部が終わります。
これから先は、一日一話更新します。
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