【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか

文字の大きさ
38 / 70
第1部 貴族学園編

38 復讐

しおりを挟む
 やってしまった。光の精霊王と契約してしまった。
 後悔するにはもう遅かった。

 私は、にこにこと上機嫌の光の精霊王をにらんだ。

「ねえ、これで契約が成立したってこと?」

 ついさっき、精霊王に口づけられた手を見つめる。なんかこれ、前にもあった。契約獣のダンジョンで、手に口をつけられたよね。

「うん。僕のことはルシルってよんでね」

「ルシル……」

「そう、僕の名前! うれしいな」

 名前をつぶやいただけで大喜びする美貌の精霊王を見上げて、問い詰めたかったことには口をつぐんだ。

 ダンジョンで会った時に、すでに契約してたんじゃないかって。
 でも、まあ、どっちにしろ、今となっては契約しちゃったからいいけど。
 どうしよう、リョウ君。……姉さまは予言の王女様になっちゃったよ。光の精霊王の契約者だよ。そんなの、私らしくない。平民になりたかったのに。

 でも、どうしようもない。私は彼の力を利用して、勇者の遺産を探すんだから。そして、リョウ君にそれを捧げるのがこれからの目標なんだから。

 いっぱい泣き叫んだからか、お腹が空いた。リョウ君がいなくなってから、ほとんど食べてない。

 テーブルの上の菓子箱が目に入ったので、薔薇の形のチョコレートを一つ手に取った。一口サイズのそれを口にいれようとしたら、

「それ、毒だよ」

 すぐ側でささやかれて、驚いて手を放す。チョコレートはテーブルの上にコロンと転がった。

「毒?」

 精霊王は私に顔をくっつけて返事をした。

「うん、それ食べないほうがいいよ」

 顔を精霊王から遠ざけて、その菓子箱を手に取ってよく見た。
 このお菓子は、貴族学園からの恒例の誕生日プレゼントだって母様が言ってた。
 菓子箱をひっくり返すと、チョコレートがばらばらと床に落ちた。箱の裏には封筒に入ったカードがくっついていた。
 そっとそのカードを取り出す。

「レティシアちゃんへ お誕生日おめでとう」

 カードに書かれていた名前は、私だった。

 どういうこと? なんで私に? それに……毒?

 このチョコレートを、リョウ君が食べた。私は、母様に邪魔されて、食べられなかったけど。
 その後で、母様が魔道具で写真を……。

 私はテーブルの上の魔道写真機を手に取った。一瞬ためらってから、ボタンを押す。ジーッという音がして、写真が出て来た。
 それに写っていたのは、にっこり笑った父様と笑顔の私、そして、その間にいるのは、ブレて写ったリョウ君だった。
 顔立ちも体の線も、はっきりと写っていない。写真を撮った瞬間に、リョウ君は動いていたんだ。それで、こんなにブレまくった写真になったんだ。……魔道具が光る直前に、リョウ君が咳き込む声を聞いた。あの時、……。

「毒で苦しんで、彼の魔力が暴走したんだろうね。それが魔石に影響を与えて、黒い炎になった。全ての原因はこれだろうね」

 精霊王はテーブルの上に転がった薔薇の形のチョコレートを指でつまんだ。そして銀色の光で消滅させた。

「……リョウ君は、……事故じゃなかったの?」

 魔石の暴発じゃなかったの? 父様のせいじゃなかったの? チョコレートを食べたせいなの? 

 私に贈られてきたチョコレートが?!

 リョウ君は殺された?……誰がそんなことを? 貴族学園の先生? 本当は私を殺そうとした?

 頭が混乱した。
 さっきまで、悲しくて悲しくて、凍り付いたように感じた私の心に、じわじわと炎が燃え広がっていく。私からリョウ君を奪った相手に対する憎しみの炎が、黒炎のように体中を支配する。

 誰がリョウ君を殺したの? 何のために?
 本当は私を殺したかったの? 私の代わりにリョウ君が死んだの?

 それが誰でも、そして、理由が何であれ、私がやることは一つだけだ。リョウ君の未来を奪った犯人。私からリョウ君を奪ったやつを絶対に許さない。

 怒りで目の前が真っ赤になる。体中が熱い。

 ……殺してやる。

 リョウ君を奪った犯人に復讐してやる。

 そのためなら、私は、なんだってやる。

「ルシル、私に力を貸して。このチョコレートを贈った犯人を捜すの。それから、そいつを殺すの!」

 やることが増えた。


しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編) 王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編) 平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

処理中です...