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仲直りするには?

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 ノートをカバンから出して、何度目かになるため息をつく。
 もしかしたら、避けられているのかもしれない。
 あの日を境に、アキと会えていない。
 連絡は時々来るので、完全にシャットアウトされているわけではないだろうが。先に拒絶しておいて、会いたいとは言えないし、会う口実になるような用事もない。

 「まーた、難しい顔して、どしたー?」

「なんでもなーー…」

 「い、わけないだろー。 ほれ、 お兄ちゃんに話してみ? お兄ちゃんがちゃーんと話聞いてやるから」

 「だから、何でお前が"お兄ちゃん"なんだよ?」

 「そういう運命だから?」

 隣の席に座る優太に今度は違う意味で、ため息がこぼれる。
 いかにも小さな子を愛でてますと言わんばかりの視線に少々うんざりしていた。

 「ただこの頃、アキと会えてないなってちょっと思っただけだよ」

 「そんなの電話1本かければいいだけだろー?  なんならお兄ちゃんがかけてやろうか? "真白が倒れた"とか言えば、あいつのことだから死ぬ気で飛んでくるぞ?」

 「やめろ、バカ!」

 本当にかけようとする優太の手から携帯を奪い取り、ダイヤル画面で止まっていることに ほっとする。全く油断も隙もない。

 「向こうが避けてるかもしれねえだろ」

 あんなことがあったばかりだ、ないとは言い切れない。
 急に変な疑いをかけられた挙句、慰めたら拒絶されたのだ。失礼で面倒くさいやつだと呆れられたのかもしれない。

 「えっ、あいつ、俺の可愛い弟でいじめてんの?」

 「 何でそうなる? 俺が悪いんだよ、変な嫉妬したり、突き飛ばしたりしたから…」

 「付き合ってんだから嫉妬するのは当たり前だろー?突き飛ばしたって言ったって、あの事件の直後じゃ過敏になってて当然だし。ーーってか、事前に守れなかったくせに何寝惚けたこと言ってんのー? つー話しだろ? そんな理由で避けるようなやつに真白はやりません。お兄ちゃんが、すりおろしてお魚の餌にしてやるよ」 

 「魚の餌って…」

 「大丈夫、お兄ちゃんにすべからく任せなさい♪」

 「いや、任せられないから」

 満面の笑顔で笑えない冗談を言う優太にピシャリと言ってそっぽを向く。
 そんな真白に優太はやれやれと肩をすくめて シャーペンを回した。

 「それじゃあ、あれだな。デートのお誘いでもするしかないな」

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