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第ニ章 運命との戦い

第十九話 名も無き遺跡

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 時は少し進み、レイドとエレーヌはバイセン領に広がる森の内部まで来ていた。
 ここはアミアン大森林と呼ばれる森で、様々な生物が生息している。
 アミアンの狩人たちは、ここで生計を立てているわけだ。

「さて、結構奥地まで来ましたね・・・」
 エレーヌがそうつぶやく。
「え、もう奥地なのか?」
 
 辺りは一面木、木、木・・・ ずっと変わらない光景が続いていた。しまいには、自分がどこから入ってきたのか分からない始末だ。

「まあ、もう1時間もすれば山脈にあたりますからね、実質森の終着点みたいな感じです」
「この森にはよく入るのか?」
「そうですね・・・ 数日に一度奥地に入って、脅威になるような魔獣を間引くので」
「間引くって・・・」

 あのドラゴンみたいなやつでも障害にはならないのか・・・? レイドは再びバイセン家の実力に驚愕するのだった。

「おっと、話をしている間に魔獣がこちらに近づいてきましたね。私たちのことを気付いたみたいです」
「え、近づいてきているのか? どこから?」

 レイドは辺りを見回すが、何も見つからないし気配も感じない。
「なあ、やっぱり何もいないじゃない・・・」
「レイド! 後ろです!!」

 エレーヌは杖を構える。その姿を見たレイドも即座に振り返り、魔剣インテグリーを抜刀する。

「グオオオオオ!!!」
「うわああああ!!」
 飛び出してきたのは巨大な熊。その巨体から爪が振り下ろされるが、なんとか反応が間に合い、剣で受け止めた。
(お、重い!)

「ぐ・・・ぅ・・・!」
 エレーヌのおかげで初動は耐えることはできたが、長くは持たないだろう・・・

「レイド! 大丈夫ですか!」
 エレーヌは即座に魔法で反撃をした。複数の炎魔術が魔獣めがけて発射される。

「グオォ・・!」
 魔獣に魔法が命中し、体勢が崩れる。その隙をのがさず、レイドは攻撃を振り払った。

 エレーヌが近づいてきた。
「レイド、あれはジャイアントベアです! ものすごくタフな奴ですが・・・ 今回は貴方の実力を見るために、後ろで観察しておきます。いいですね!」
「ああ、分かった・・・」

 レイドは再び剣を構える。
「グオオ・・・」
 ジャイアントベアにまともな物理攻撃は通じなそうだ・・・ 
(どうする? エレーヌの魔法は使えない・・・ 急所を狙おうにも目は・・・ あ、そうだ・・・)      

 何か思いついたようだ。レイドはジャイアントベアに突撃する。
「グオオオオ!!!」
 爪を振り下ろしてきたが、レイドはそれを避けて懐に入っていく。

「レイド! 何をする気ですか!」
 本来ならば、懐に入るのは自殺行為だ。攻撃が通じず殺されるだけだろう。本来ならば・・・ の話だが。

(攻撃の隙が出来てる。やっぱりこいつはオスだよなあ!)
 レイドの剣がグサッと何かに刺さる。
「あっ」
 そう、レイドが刺したのはジャイアントベアの・・・ 睾丸だ。

「ヴ・・・ ァ・・・」
 そのままジャイアントベアは悶絶して倒れてしまった。
 なんか口から泡をふかしているぞ・・・

「レイド! まさか倒せるとは・・・! しかし・・・ 私は男性ではないから分かりませんが、その・・・ やっていることがかなり鬼畜ではありませんか?」
 エレーヌが再び近づいてきて話しかけてきた。

「ははは・・・」
 いけない。こっちも股が寒くなってきたぞ・・・

「まあ・・・ 貴方の判断の速さには感激しますが、敵の存在を確認するのが遅いです。殺気くらい感じれるようにしといてください」
「分かったよ・・・」
 レイドはそう言うと、剣を収めた。

「それはそうとも、今回はごちそうですよ! ジャイアントベアの肉はおいしいんです!」
 エレーヌがウキウキしている。

「さ、それを持って帰りましょう!」
「え、持って帰るって、どうやって・・・?」
「こう持ち上げれば、いいんです!」
 
 すると、エレーヌは何やら魔術を唱え始めた。これは、浮遊魔術だ!
 さっき狩ったジャイアントベアが、プカプカと浮かび始めた。
「さあ、帰りましょう」

(あの巨体を持ち運べるのか・・・)
 レイドはエレーヌの実力に驚かされるばかりだ。
 しかし、今回はそれが良くなかったらしい。突如として、地面が揺れ始めたのだ。

「ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!」
「な、なんですか!?」
 なんと地面が徐々に崩落し始めたのだ。

「まさか、下に空洞が? しまった! 衝撃を加えすぎてしまったか!」
 後悔してももう遅い。そのままレイドとエレーヌは、崩落していく地面と共に落ちていくのだった・・・


「いたたたた・・・ レイド、大丈夫ですか・・・」
「ああ、なんとか・・・」
 エレーヌの浮遊魔術で助かった・・・

 ほっとしているのもつかの間。レイドとエレーヌは辺りを見渡した。
 辺り一面、大理石で作られたであろう古びた柱が並んでいる。

「すみません・・・ 私の落ち度です。ここは・・・ 何かの神殿ですか?」 
「分からないが、長い間使われていなさそうだな・・・」

 不気味な雰囲気だ。明かりは上にある穴からの日差しのみで、全く奥が見えない。

「浮遊魔法を使おうにも・・・ 今は使えませんね、何かの力によって阻害されています・・・」
 エレーヌが困ったようにそう言った。どうやら歩いてここから脱出するしかないようだ。

「しかたない・・・ 別の出口を探すか・・・ ん?」
 レイドが暗闇の中に、小さな赤い光がともっているのに気が付いた。

 それが1つ、2つ、3つと・・・ だんだんと増えている!

「侵入者・・・ ハッケン・・・ 侵入者! ハッケン!」
「きゃあああ!」
「なんだ・・・!?」

 何かが近づいてきている!
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