推しのぬいとして黙って見ていられません!その婚約破棄改変します

みのすけ

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後編

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今日は貴族学園の卒業パーティー。夜会さながらに飾り付けられた会場に、煌びやかな衣装の卒業生達が集う。

フィリア様とエカテリーナも出席する。辛い学園生活を支え合って乗り越えた2人は、小説の通り唯一無二の親友となった。

フィリア様はエカテリーナと共に入場し周囲から失笑を買っている。それもそのはず、エカテリーナとフィリア様の婚約者はレベッカをエスコートしているからだ。レベッカは左右に王太子とセオを侍らせ堂々と入場する。

卒業生ではないレベッカがこの場にいること自体おかしいのだが、会場にいる者は誰も疑問に思わないらしい。王太子の側近のうち卒業生なのはセオだけで、他の側近達はパーティーに参加しないのに。

会場にいる卒業生は王太子殿下一行に羨望の眼差しを向け、エカテリーナとフィリア様に侮蔑の視線を向ける。2人にとって完全アウェイな状況だ。それを十分に分かって、王太子が高らかに宣言した。

「エカテリーナ、君との婚約を破棄する」

会場の視線が王太子一行とエカテリーナに集中する。フィリア様はエカテリーナの側にいて、エカテリーナと共に侮蔑の視線を受けている。

王太子がエカテリーナにレベッカを虐げていた疑いをかけてゆく。エカテリーナは終始黙っている。
さらにエカテリーナが未来の王太子妃に相応しくないと言い放ち、レベッカが自分の隣に相応しいと言い切った。朗々と歌い上げる様に、まるで自分に酔っている様に。

それに続く様にセオも口を開いた。

「フィリア、君にも失望したよ。エカテリーナ様と一緒にレベッカを虐げるなんて。仮にも王太子殿下の婚約者に仕える者ならば、エカテリーナ様の行動をお諌めするべきではなかったか?」

小説ではこんなセリフはない。やはりストーリーと現実に乖離が生じているのか?

するとフィリア様がセオに向き直る。学園でのフィリア様を初めて見たが、隙がなく堂々としたお姿。無礼なセオの発言にも動揺は見せない。

「セオ様、その言葉は本心から仰っているのですか?」
「フィリア、残念だよ。俺は君との婚約を破棄する」
「……婚約の件は承知致しました。後のことは父とお話し下さい。しかしながら私とエカテリーナ様は何ら恥ずべき行為をしておりません。またやってもいない罪を認めることはできません」
「フィリア、君は……」




ドドドドドドドド
ザバアアアアァァァーーー
「うわぁっ」「冷たい!何これぇー」「ゴホッゲホッ」

突然王太子とセオ、レベッカに大量の水が降りかかる。3人の真上から滝の様に水が落ちてきたのだ。
不思議なことに3人だけがずぶ濡れになっていて、近くにいたエカテリーナとフィリア様には水滴すら飛んでいない。

セオは水が口に入ってむせている様だ。
奴が話している途中に水がかかったからな。
クククッ。

すると会場の扉が一斉に開き、騎士団が生徒達の周りを取り囲む。その後に入場したのは王妃だった。
エカテリーナとフィリア様はすかさず礼をとり他の者がそれに続く。王妃は顔を上げるように指示し、会場にいる者は不安そうに頭を上げた。

「卒業の門出にこのような事態となり、王家として申し訳なく思う」

王妃は王太子に向き直る。国王や王妃が甘やかしたわけではないけれど、ロイクは国王になるには足りない王子のままだ。だからこそしっかりしたエカテリーナを婚約者に据えたのだというのに。

「ロイク、エカテリーナとの婚約は王命ぞ。其方がこの場でどうこうできるものではない。申開きがあるならば、陛下の御前でせよ」
「お待ち下さい、母上!」
「きゃっ、何するのよ!ロイク、助けて!」
「ゴホッ、ゴホッ」

騎士達にずぶ濡れのまま引き摺られていく王太子とセオとレベッカ。その姿が扉の向こうに消えると、
王妃は再び口を開いた。

「エカテリーナ、フィリア、こちらへ。
その他の者はその場でしばし待て。騎士団長から説明させる」

王妃の後にエカテリーナとフィリア様が続き、会場を後にする。3人が退出した後に会場の扉が閉まり、しばしの静寂の後……



ドドドドドドドド
ザバアアアアァァァーーー
「うわぁっ」「きゃー」「やめてぇー」

閉じられた会場から滝のような水音が大音量で響き、卒業生達の悲鳴が漏れ出ていた。
クククッ、ざまぁ。



「これでこの取引は終了だね」
(ありがとうございます、魔法使い様。感謝致します)
「いいよ、面白かったし。王命でもあるし」

紅玉の瞳を細め楽しげに笑うのは黒衣の魔法使い様。なんと彼は国王の学友にして悪友で、この国では貴重な魔法研究家であった。

私は彼と取引した。

私の記憶にある情報と引き換えに、フィリア様とエカテリーナの身の安全を確保する。私は王太子周辺に魅了の魔法が作用していることを教える代わりに、2人を王宮で保護してもらうように要請した。

私がぬいに転生した時点で小説のストーリーからは少し外れていったのだろう。学園での悪意はエスカレートし、未来の王太子妃であるエカテリーナを守るために既に王家の影が動いていた。エカテリーナとフィリア様に対する仕打ちは記録されており、危害を加えた生徒達は厳しく処分される。

黒衣の魔法使い様は国王から直接依頼され、魔法的な影響がないか関係者を探っていた。フィリア様も関係者に含まれており、魔法使い様がウィンベルデン伯爵家を探る過程で私を見つけた。私の声はこの魔法使い様のみに聞こえていたらしい。

エカテリーナとフィリア様は速やかに王宮に保護され、学園に通っている時間帯は王宮で過ごすことになる。

一方王家は秘密裏に魅了の魔法を処理しようとした。魅了の原因がレベッカであることは突き止めたが、魔法の解除に至らないまま王太子の卒業が近付いてしまう。原因であるレベッカを排除することは容易いが、魅了の魔法を正しく解かないと最悪の場合王太子が魅了の魔法に囚われたままになる可能性があるらしい。
そのため国王は学友である魔法使い様に、魅了の魔法を正しく解除するため助力を求めた。

黒衣の魔法使い様は本当は自力でなんとかできたと思う。
だが彼は何故か私の前に現れた。
彼から「レベッカの魅了の魔法を解く方法を知っているか」と尋ねられ、私は「知っている」と答えた。

小説ではレベッカが身に付けている古代魔導具により魅了の力が使えることになっている。この魔導具は香りを通して相手の好感度を上げるらしく、より近い距離で長く一緒にいる程に魅了されてゆく代物だ。

ならば香りを遮断しレベッカから魔導具を奪えばいい。頭から大量の水をぶっかけて香りを洗い流すのはどうだろうか?ずぶ濡れになった衣類を脱ぐ状況になれば、レベッカが肌身離さず身に付けている魔導具を見つけることができる。魔導具を取り上げた上でレベッカを捕えて、王太子と側近達から物理的に引き離せば魅了の効力は弱まってゆく。
さらに魔導具を解析して正しい手順で停止すれば、魅了の魔法は消える。

スマートな方法は他にもあったと思う。
だが私は王太子とセオとレベッカを濡れネズミにしたくなってしまった。彼らにはまず物理で目を覚ましてもらおう。王家から処分されるのはそれからだ。

私は魔法使い様と再度取引した。
魅了の魔法の解除方法を教える代わりに卒業パーティーに出席する卒業生をずぶ濡れにする魔法を要求する。
濡れネズミにしたいのは主犯の3人はじめ、フィリア様を嘲笑した者、侮蔑の目を向けた者、冷遇されている様を見ていて何もしなかった者、そして何も出来なかった者、つまり卒業生全員だ。

「爵位が低い家の子だから何も出来なかった」との言い分は理解できる。しかしそれが許す理由にはならない。

実際に貴族学園の教師は処分される。爵位の低い家の、さらには嫡男ではない生まれの彼らが、現実的に王太子をはじめ高位の貴族の子女を諌められないのが仕方ないとしても。

だから生徒も相応の処分は受ける。卒業生達はもちろん濡れネズミになっただけでは終わらない。

小説では卒業パーティーで断罪劇が行われて、エカテリーナが涙ながらに王太子に愛を説き、真実の愛に目覚めた王太子が魅了を打ち破るというストーリー。物語のクライマックスで感動のシーンだった。

ですが……
作者(かみ)様、小説のファンとして大変申し訳ございません。もはや王太子(バカ)が魅了を打ち破るのを待っていられません。しかもセオにフィリア様を傷付ける発言を許すなんて……

これ以上、推しのぬいとして黙って見ていられません!
ファイヤー!

そうして私が我慢の限界まで耐えたタイミングで、魔法使い様に盛大に水をぶっ掛けてもらった次第である。結果、婚約破棄のシーンは大幅に改変されてしまったのだった。

✳︎

エカテリーナとフィリア様が王家に保護された段階で、2人には魅了の魔法の存在が伝えられた。
王太子と側近達に魅了の魔法がかけられていることについて、国王自ら事情を明かし謝罪したという。それだけエカテリーナは国にとって得難い人材なのだろう。既に王太子妃教育を終了しているので王太子との婚約を解消した場合にエカテリーナの処遇が難しいという理由もある。

エカテリーナは色々考えて、王太子との婚約を一旦保留にした。今の彼女では涙ながらに愛を説いて王太子(バカ)を真実の愛に目覚めさせるのは難しいかもしれない。
彼女は既に王太子に対する熱を失っている。婚約を保留にしたのは公爵令嬢の責務と婚約者に対する同情ゆえ。王太子とは10年以上の付き合いだから簡単に切り捨てられないらしい。

一方フィリア様の婚約については、フィリア様の一存で決めて良いとされた。フィリア様は学園卒業まで様子を見ることにした。セオのこともそうだが、この政略結婚自体に考えるところがあるらしい。

そしてフィリア様は卒業パーティーでセオからの婚約破棄の意向を受け入れた。婚約は遡って白紙となり、フィリア様に記録上の瑕疵がつかないように婚約自体がなかったことにされる。

「フィリア、今までのこと本当に済まなかった。俺はおかしくなっていたんだ」
「ライナード侯爵子息、謝罪を受け入れます。なお私のことは家名でお呼び頂きます様にお願い致します」
「そんな冷たいことを言わないでほしい。君とやり直したいんだ!魔法の影響がなければ、今頃は俺たち結婚していたはずだろう?」

必死な顔のセオに対して、フィリア様はため息を吐いた。そして静かに口を開く。

「……レベッカ嬢と居るライナード侯爵子息は良く笑い、お話しも弾んでいらっしゃいましたね。私といる間はそのような様子になりませんでしたのに」

フィリア様が悲しそうに目を伏せる。儚げな美しさが最高すぎる。セオも見惚れている。

「君と婚約した当初は緊張していて、俺は気の利いたことも言えずに、その……」
「レベッカ嬢が何度も私に教えて下さいました。『セオはお話し好きな方なのよ』と。ライナード侯爵子息が私の前で無口でいるのは、義務で婚約した私に辟易しているからだと仰っておりました」
「違う、誤解だ!そんなことは思っていない」
「全てはとうに終わったこと、どうぞ貴方様が望まれた方とお幸せになって下さいませ」
「待ってくれ、フィリア!話を……」

フィリア様の腕を掴もうとしたのか、セオが手を伸ばす。

ドカッ
「ぶへっ」
セオが間抜けな声を出す。

フィリたんに触るな!クズが!

私はセオの顔に体当たりした。
ぬいだから大して痛くはないだろうけれど、テディのお尻の部分でアタックしたから顔面にクリーンヒットしたはずだ。
セオから跳ね返った私は、フィリア様の腕の中へふんわり着地する。

「えっ?テディ⁈どうして⁇」

「いやあ、急にごめんね、ウィンベルデン伯爵令嬢。王宮の担当者が至急確認したいことがあるそうだ。悪いけど一緒に来てくれるかい?」

黒衣の魔法使い様がさっと現れてフィリア様を促す。フィリア様は魔法使い様が国王の学友であることを知っている。

「あ、はい。直ぐに参ります。
それではライナード侯爵子息、失礼致します」

魔法使い様とフィリア様はさっさとその場を後にする。私もフィリア様に抱えられてその場を去る。
セオは顔を押さえてうずくまっていた。

(魔法使い様、私個人の復讐をお手伝い頂きありがとうございました)
「いいよ。これで君は私のものだろう?ハナコと呼んでもいいかい?」
(まだ魔法使い様のものではありませんよ。私がフィリたんとお別れしてからです)

私は自分の身柄(※ぬいではなく中身のみ)と引き換えに、セオへの個人的な復讐を魔法使い様に手伝ってもらった。
それがテディベアのお尻アタック!
魔法使い様の魔法で、私の身体をセオの顔面めがけて投げつけてもらった。魔法を使ったから普通に投げるよりも威力増し増しだ。

散々フィリたんを泣かせやがって、クソ野郎が!
やはり物理は正義‼︎
私は長年のモヤモヤがすっきりした。



学園を卒業したフィリア様は女官として王宮に上がる。
学園の人間関係は信じられないし両親やライナード侯爵家の態度に考えるところがあるフィリア様は、実家を出て仕事をする道を選んだ。王家に保護されたこともあり、王宮はそこそこ慣れた場所になったらしい。もちろん私はフィリア様が選んだ道を応援する。

フィリア様は王宮に住みながら仕事をする。王宮への私物の持ち込みは制限されているため、私ことテディともお別れになる。

「テディ、いつも側にいてくれてありがとう。私はもう大丈夫だよ」

旅立ちの日、最後に抱きしめてくれたフィリア様。

こちらこそ側に置いてくれてありがとう。
貴方の成長を見守ることができて、どんなに嬉しかったことか。
フィリたん、どうか幸せにね。

彼女の後ろ姿を見送りながら思う。 

もう彼女はぬいに話しかけるだけの内気な少女ではない。
両親や周りに相談し、自分の気持ちをきちんと相手に伝えられるようになった。親友を悪意から守り、理不尽に屈さない、強くて美しくて堂々とした素敵な女性だよ。

私もぬいになったからと諦めなくて良かった。

前世の私はどんなに暴れても、どんなに叫んでも、無駄だと思っていたんだ。天涯孤独の私には温かな家庭も両親の愛も手に入らなくて、お金もなくて世の中のものはほとんど手に入れられなくて、諦める方がずっと楽だったんだよ。

でもずっとフィリたんを見ていたから、私も少しは変わりたいと思えたんだよ。
本当にありがとう。
なんだか新しい自分になれたような気がする。

それもこれもフィリたんのおかげだよ。
あー、推しは尊い!

私が万感の思いに浸っていると、突然声をかけられた。

「迎えに来たよ、ハナコ」

黒衣の魔法使い様だ。紅玉の瞳が嬉しそうに細められる。
私は彼との取引でテディの身体から出ることになっている。私の存在は魔法研究家の興味をひいたらしい。彼の研究対象になろうともセオに一撃喰らわせたので私に悔いはなかった。

私は長らくお世話になった身体に感謝した。私を住まわせてくれた茶色のテディベアは経年劣化でくたくたになっている。

テディ、今日までありがとう。貴方はフィリたんにとって、かけがえのないぬいだったよ。最後に身体を酷使させてごめんね。




(魔法使い様、色々ありがとうございました。ところで私は何に意識を移されるのでしょうか?)
「ハナコの次の器(からだ)はね……これはどうかな?」
(あはは……それは良いですね)

そうして私はテディの身体から移り、黒衣の魔法使い様のところで第二の人生を送っている。
フィリア様と別れて傷心の私だったが、魔法使い様がちょくちょく国王に呼び出されるのでその度に王宮について行っている。フィリア様の姿をこっそり見られるからだ。

私はもう、自分のほしいものを諦めるつもりはない。
だからだろうか。

女官となったフィリア様の周りに、復縁を願うセオの姿を見かけると、私は全力で邪魔しに行ってしまうのだった。
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