噂の補佐君

さっすん

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週に一度、俺は食堂でお昼を食べる。


というのも、いつか捺に、食堂の料理食べて舌を肥やしとけ、と言われたからである。


首席の俺は授業料や施設費もろもろ免除の為、学食ももちろん免除なのだが、なんと言ったって、俺は料理が好きだから、そういうものに頼るつもりはなかった。


食材費は学園が支払ってくれて、そこそこ良いもの食べてるつもりだったけれど、捺はプロの味を食っとけ、と言うから、週に一度だけ食堂で昼食を取るのだ。



「晴、今日は何食べるの?」



なんとなく四人で固まって歩きながら、爽は俺に聞いた。



「今日はうどんかな」



そう答えた俺に、奏はマジかよ、と顔をしかめた。



「そんなんじゃ絶対足りねぇ」


「晴はお昼はあんまり食べないもんな」



そんな事を話しながら、開け放たれた食堂のドアをくぐる。


すると、キャー!と歓声が上がった。



「相変わらずあの四人の組み合わせ最高……!!」


「お似合いだぁ……」


「というか、晴様の食堂デイ、今日だったんだ、ラッキー!」


「爽様も捺様もイケメン……!!」


「奏様の鋭い目、向けられたい……!!」



そんな歓声を聞きながら、三人は購買へ、俺は受け付けに行って、うどんを頼む。


注文が終わると、俺は先にいつも座る二階席に向かった。


のだが。


すれ違った誰かに肩が当たってしまい、その衝撃で、俺は尻もちをついた。


それと同時に食器らしきものがガシャーン!と割れる音が響く。


それだけ強い衝撃だったという事は、相手は走っていた事になる。


幸い、周りにはあまり人がおらず、被害が及んだ人間は当事者の俺とぶつかった相手だけなようだ。



「大丈夫ですか!?」



タッと誰かが駆け寄って来て、慌てた様子で尋ねられた。



「俺は大丈夫」



それより、相手が心配だ。



「大丈夫ですか?」



近くで同じく尻もちをついている相手に同じ事を聞くと、その人はきつく俺を睨んだ。


赤い瞳が俺を射抜く。



「何すんだよ、お前!

前見て歩けよ!!」



その人は近くに飛んだ眼鏡をかけながら、怒鳴った。



「あ、ごめんなさい……」



んん?


俺だけが悪いのか?


勢いに気圧され、つい謝ってしまったが、非があるのは俺だけじゃない。


でも、お前も謝れ、なんて言える程俺は立派な人間じゃない。



「謝ったから許してやる!

俺は、前川翔!お前は?」



もう俺は呆気に取られるばかりだ。


上からな言い振りに先輩かと思ったが、ネクタイの色からして一年。


突然名乗って、自分も名乗るよう言われて……。


ともかく、意地っ張りかもしれないが、本名は教えたくない。



「俺は山田やまだ太郎たろう



思いっきり偽名だ。


さすがに気付くんじゃないか、と思ったが相手はよろしくな!と言った。



信じるのかよ……。


周りは微妙な顔でこちらを見ている。



「なぁ、太郎!

お前綺麗な顔してるな!!


俺が特別に付き合ってやるよ!!」



………は?


なんて言った今。


付き合ってやるよ?


待て待て待て。


付き合ってください、ならまだ分かるけれど、付き合ってやるよ、はおかしくないか?



「いや、遠慮するよ……」



俺は割れた食器の破片を拾おうと、前川に背を向けた時、待てよ、と腕を掴まれた。


それも、強い力で。



「俺が特別に付き合ってやるって言ってるのに断るとかおかしいだろ!」



おかしくない!!


なんでこんなに自信満々なんだ、この人。



「いや、本当にいいからっ」



いつまで経っても離してもらえない腕。


逆にどんどん力が入って、ギリッと嫌な音がする。



「いっ!」



痛みで顔が歪んだ時、ふっと俺の腕から手が離れた。



「何でも強引にするのはよくないよ。

彼、嫌がってるんだからやめてあげなさい」


あずさ先輩……」



落ち着いているが、鋭い声で梓先輩は前川を注意した。


梓先輩は前川の腕を掴んでいる。



「なんだよ、お前!!」


「先輩に対しての態度がなってないんじゃない?」



楯突く前川に梓先輩は冷静に言い返す。


さすが梓先輩だ。



「俺は悪くねぇ!!

太郎が俺の言う事を聞かないから!」



喚く前川に、俺は少し恐怖を感じる。


分からないけれど、なんだかすごく怖いんだ。


じんじんと傷む腕をさすりながら、俺は目を合わせないように俯いていた。


そんな俺とは反対に、梓先輩は堂々としている。



「話にならないね。

行こうか」



荒々しく前川の腕を放し、梓先輩はそっと、俺の手を取った。



「おい、待て!!」


「そこまでだ!」



前川の声よりもずっと安定感のある声が食堂に響いた。



「風紀が来た。

行こう」



俺は梓先輩に連れられて保健室に向かった。



中村なかむら梓先輩は、保健委員長。


何かと保健室に行く機会が多い俺は、梓先輩と仲良くなった。



 「失礼します」

「失礼します……」


「お、どうした、中村と晴」



保険医の冬木ふゆき先生が、クルッと椅子を回して、俺達を見た。



「なんか冷やすものないですか?」


「冷やすものか?……分かった」



梓先輩の言葉に冬木先生は頷いた。


俺は梓先輩に座るよう促され、ベッドの端に座る。



「痕、残ってるね。

痛くない?」



そっと俺の腕を取った梓先輩。


改めて自分の腕を見て、俺もビックリする。


くっきりと手形が残っていて、少し赤くなっている。



「痛くはないです」


「ほら、持って来たぞ。

って、本当にどうしたんだ、それ。

大丈夫か?」



怪訝そうな顔で、冬木先生は駆け寄る。


そっと氷のうを腕に乗せられ、ひんやりとした感覚に、俺は、小さく声を漏らす。



「なんであんな状況になってたか、聞いてもいい?」



気遣うように梓先輩は言った。


俺は頷き、事の経緯を説明した。



「なんだそいつ」



冬木先生は眉根を寄せ、前川の奇怪な行動に驚いている。



「気を付けろよ、晴。

お前はそんな容姿なんだから、変なのに目つけられるぞ」


「変なのって……」



冬木先生の言葉に俺は苦笑いする。



「本当に気を付けてね、晴。

今回は大事に至らなかったから良かったけど、いつも警戒しなきゃダメだよ」


「分かりました。

梓先輩、冬木先生、ありがとうございます」



頭を下げると、梓先輩はポンポンと優しく頭を撫でた。


……それをして欲しかった訳ではないのだが……。











_____

side腐男子


「晴様、大丈夫かな」


「というかあの前川とかいう奴晴様にベタベタ触り過ぎ」


「オマケに梓様にもあんな口をきくなんてあり得ない」


「でもさ、晴様を守る梓様、格好良かった!」


「それ!!

いつもは柔らかい雰囲気なのに、あの時は冷静でいられない!って感じでさ!」


「晴様の手を引いて出ていって、もしかしたらお仕置きされてたりして!!」


「心配しつつ、嫉妬を抑えられなくて、俺以外に触らせないで、みたいな!」


「「良きかな~!!!!」」
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