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「遅れてすみません」
前のドアから教室に入って、ホワイトボードに文字を書く先生に挨拶をする。
「佐野、大丈夫?
保健室行ってたって聞いたけど」
心配してくれる数学の先生に、大丈夫です、と笑って見せ、窓際の自分の席に座る。
机から数学の教科書とノートを出して急いで板書を写す。
すると突然、前に座る奏が振り返って、何か紙を机に置いた。
ノートの切れ端らしいそれは、二つ折りされていて、開くと殴り書きされた、文字が目に入った。
大丈夫か?
確かにそう書いてある。
俺はにやけてしまうのを抑え込んで、その紙の裏に、大丈夫、ありがとう、と書いた。
やはり奏は優しいな。
というか、奏が数学の授業を受けているのは珍しい。
奏は勉強が得意なようだが、数学はめっぽう弱い。
ギリギリ赤点を免れているくらいだ。
そもそも数学が嫌いらしく、授業をサボる事が多い。
でも、今日は参加している。
もしかして、心配してくれたのか?
そうだったら、嬉しいな。
俺はそっと奏の机に紙を置いた。
数学の授業が終わると、すぐに捺と爽が俺の席に集まって来た。
「お前、大丈夫なのか?」
「晴、俺達めっちゃ心配した」
少し焦っているのか、心なしか早口で言う二人にクスクス笑う。
「もう大丈夫。
心配掛けてごめんな」
二人はホッとしたように、そうか、と優しく微笑んだ。
「にしても聞いた時はめちゃくちゃ焦ったよ。
一年に絡まれて保健室言った、とか言われたからさ」
それは抜粋し過ぎだ……。
「大した事ない。
ただ、強く腕を掴まれて赤くなったから冷やしに保健室行っただけだから」
「それ見せて」
突然捺が俺の腕を取って、痕を確認する。
「うわ、けっこうくっきり残ってるじゃねぇか!」
「そいつムカつくな……」
思っていたより奏は驚いて、爽はいつもの性格らしからぬ事を呟いた。
爽はなんだか禍禍しいオーラを纏っている。
二人を宥めようと口を開いた時、ごめん、と捺が弱々しい声で言った。
俺は驚き、捺を見る。
捺は俯いて、どんな表情なのか分からなかったが、いつもの余裕は感じられなかった。
「守るとか偉そうな事言ったのに、結局守れなかった……。
ごめん、晴」
本当に後悔しているようで、今にも泣きそうなか弱い声。
なんで、捺が謝るんだよ……。
「捺。
あのさ、捺は何にも悪くないよ。
そうやって、俺の事思って落ち込んだり、後悔したりしてくれるの、正直嬉しいけどさ、でもやっぱりちょっと嫌だな」
「晴……」
ゆっくり顔を上げた捺。
その顔は酷く疲れているように見えた。
俺はそんな捺を少しでも元気付けたくて、目一杯の笑顔を見せた。
すると捺は一呼吸置いて、いつもは見せない、安堵の柔らかい笑みを浮かべた。
「にしても、捺もあんな顔するんだね」
「いつもはバカとかアホとか罵倒するくせに」
「二人は俺の事なんだと思ってるんだよ」
いつもの捺のちょっと冷たい目に、俺はホッとした。
「晴」
「ん?」
捺は優しく俺の名前を呼んだ。
するとおもむろに痕が残っている俺の腕をすくいあげ、チュッと軽くキスをした。
「消毒、な」
いたずらに笑う捺。
俺はというと、された事に驚愕と羞恥を感じ、意味を持たない言葉を口から漏らしてしまう。
「な、は、ちょ、ま……!」
「じゃあ、俺もしないとね」
今度は爽が同様に、腕を取って口付けた。
な、なんなんだ、二人共!
消毒って……!
困惑する俺。
奏はチッと舌打ちをして、二人よりも長く、腕に口付けた。
「晴の顔真っ赤」
「これくらいで顔赤くするなんて初々し過ぎだ……」
「こういうスキンシップ、増やして行くか?」
「絶対ダメ!!」
_____
side腐男子
昼休みの終わりがけに戻って来た赤坂、青野、緑谷。
その時は焦燥が感じられた。
でも、佐野が教室に入って来た時、酷く安堵していたみたいだった。
めっちゃ心配してたんだね!!分かるよ!!
緑谷なんかいつもサボる数学の授業に参加して佐野を待ってたもんね!!
んで、授業終わったらすぐに佐野の所に行って心配して……。
はぁ~!佐野愛され過ぎ~!!
佐野総受けとかマジ俺得!!
しかも消毒って言ってキス!!!!
佐野の反応は可愛いし、超良き!!
ごちそうさまでした
前のドアから教室に入って、ホワイトボードに文字を書く先生に挨拶をする。
「佐野、大丈夫?
保健室行ってたって聞いたけど」
心配してくれる数学の先生に、大丈夫です、と笑って見せ、窓際の自分の席に座る。
机から数学の教科書とノートを出して急いで板書を写す。
すると突然、前に座る奏が振り返って、何か紙を机に置いた。
ノートの切れ端らしいそれは、二つ折りされていて、開くと殴り書きされた、文字が目に入った。
大丈夫か?
確かにそう書いてある。
俺はにやけてしまうのを抑え込んで、その紙の裏に、大丈夫、ありがとう、と書いた。
やはり奏は優しいな。
というか、奏が数学の授業を受けているのは珍しい。
奏は勉強が得意なようだが、数学はめっぽう弱い。
ギリギリ赤点を免れているくらいだ。
そもそも数学が嫌いらしく、授業をサボる事が多い。
でも、今日は参加している。
もしかして、心配してくれたのか?
そうだったら、嬉しいな。
俺はそっと奏の机に紙を置いた。
数学の授業が終わると、すぐに捺と爽が俺の席に集まって来た。
「お前、大丈夫なのか?」
「晴、俺達めっちゃ心配した」
少し焦っているのか、心なしか早口で言う二人にクスクス笑う。
「もう大丈夫。
心配掛けてごめんな」
二人はホッとしたように、そうか、と優しく微笑んだ。
「にしても聞いた時はめちゃくちゃ焦ったよ。
一年に絡まれて保健室言った、とか言われたからさ」
それは抜粋し過ぎだ……。
「大した事ない。
ただ、強く腕を掴まれて赤くなったから冷やしに保健室行っただけだから」
「それ見せて」
突然捺が俺の腕を取って、痕を確認する。
「うわ、けっこうくっきり残ってるじゃねぇか!」
「そいつムカつくな……」
思っていたより奏は驚いて、爽はいつもの性格らしからぬ事を呟いた。
爽はなんだか禍禍しいオーラを纏っている。
二人を宥めようと口を開いた時、ごめん、と捺が弱々しい声で言った。
俺は驚き、捺を見る。
捺は俯いて、どんな表情なのか分からなかったが、いつもの余裕は感じられなかった。
「守るとか偉そうな事言ったのに、結局守れなかった……。
ごめん、晴」
本当に後悔しているようで、今にも泣きそうなか弱い声。
なんで、捺が謝るんだよ……。
「捺。
あのさ、捺は何にも悪くないよ。
そうやって、俺の事思って落ち込んだり、後悔したりしてくれるの、正直嬉しいけどさ、でもやっぱりちょっと嫌だな」
「晴……」
ゆっくり顔を上げた捺。
その顔は酷く疲れているように見えた。
俺はそんな捺を少しでも元気付けたくて、目一杯の笑顔を見せた。
すると捺は一呼吸置いて、いつもは見せない、安堵の柔らかい笑みを浮かべた。
「にしても、捺もあんな顔するんだね」
「いつもはバカとかアホとか罵倒するくせに」
「二人は俺の事なんだと思ってるんだよ」
いつもの捺のちょっと冷たい目に、俺はホッとした。
「晴」
「ん?」
捺は優しく俺の名前を呼んだ。
するとおもむろに痕が残っている俺の腕をすくいあげ、チュッと軽くキスをした。
「消毒、な」
いたずらに笑う捺。
俺はというと、された事に驚愕と羞恥を感じ、意味を持たない言葉を口から漏らしてしまう。
「な、は、ちょ、ま……!」
「じゃあ、俺もしないとね」
今度は爽が同様に、腕を取って口付けた。
な、なんなんだ、二人共!
消毒って……!
困惑する俺。
奏はチッと舌打ちをして、二人よりも長く、腕に口付けた。
「晴の顔真っ赤」
「これくらいで顔赤くするなんて初々し過ぎだ……」
「こういうスキンシップ、増やして行くか?」
「絶対ダメ!!」
_____
side腐男子
昼休みの終わりがけに戻って来た赤坂、青野、緑谷。
その時は焦燥が感じられた。
でも、佐野が教室に入って来た時、酷く安堵していたみたいだった。
めっちゃ心配してたんだね!!分かるよ!!
緑谷なんかいつもサボる数学の授業に参加して佐野を待ってたもんね!!
んで、授業終わったらすぐに佐野の所に行って心配して……。
はぁ~!佐野愛され過ぎ~!!
佐野総受けとかマジ俺得!!
しかも消毒って言ってキス!!!!
佐野の反応は可愛いし、超良き!!
ごちそうさまでした
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