噂の補佐君

さっすん

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「晴、少しいいか」



今日も今日とていつも通り生徒会室に向かっていると、後ろから声を掛けられた。


振り返ると、そこには一番の頼れる先輩がいた。


チラチラとすれ違う生徒は彼を見て、立ち止まる者もいる。



「どうしたんですか?あつし先輩」



俺は敦先輩に話し掛けられたのがすごく嬉しくて、駆け寄った。



「相変わらずのようだな、晴」



無表情だけれど、全く嫌味ではない。


多分、俺の事を久しく思っている。



古賀こが敦先輩は、風紀委員長。


俺は一年の時、風紀委員の補佐をしていたから、当時風紀委員だった敦先輩とは今でも仲良くさせてもらっている。



「今日の食堂での件を聞きたいのだが、今時間あるか?」


「はい、大丈夫です」



本当は書類仕事が残っているから生徒会室に行った方がいいのだが、敦先輩がわざわざ迎えに来てくれたのが嬉しくて、俺は頷いてしまった。


あとで会長に連絡しよう。


これは断じてサボりなんかではない。



「そうか。

風紀室で話すから付いて来い」


「えっ、わっ」



敦先輩は俺の手を握ったかと思ったら、そのままどんどん前に進む。


お互いの指が絡まって、簡単には離れないようになっている。


こんな事するような人ではないはずだ。


何かあったのだろうか。


……にしても、敦先輩早い。


身長差がけっこうあるから、一歩の大きさも随分異なる。


俺は正直付いて行くので必死だ。



「あ、晴!久し振り」



ガラッと勢いよく風紀室のドアを開けると、そこは昨年と全く変わっていなかった。


中央にあるソファーに座るのは、超癒し系の国見くにみゆう先輩だ。


悠先輩は敦先輩の優秀な右腕、つまり副委員長だ。



「ふふっ、晴、座って」



ほんわかとした笑みで手招きする悠先輩。


久し振りにめっちゃ癒されている。


つられて俺も笑ってしまう。



俺は悠先輩の向かいに座り、敦先輩は悠先輩の隣に座る。


机に置かれた湯呑みには、冷たい緑茶が注がれていて、その香りに俺は安心しきってしまう。


とその時、俺のズボンのポケットに入っていた携帯が震えた。


電話だ。


携帯を取り出して画面を確認すると、そこには『会長』の文字が。


……そういえばまだ遅刻する事伝えてなかったな。


いつもならとっくに生徒会室で仕事を始めている時間だ。



「すみません、ちょっと」


「どうぞ」



微笑んで電話に出る事を許可してくれる悠先輩。


俺はそれに軽く頭を下げて、風紀室を出てから、電話に出た。



「もしも」

「遅い!!ワンコールで出ろ!!」



そんな無茶な……。


とてもお怒りの様子なので、それは言わないが。



「お前、今どこにいる」



少し冷静さを取り戻した会長がそう尋ねた。



「風紀室です」


「何故そんな所にいるんだ。

それに、遅刻するなら遅刻するでちゃんと連絡しろ」


「は、はい、すみません……」



怒られてしまった……。


言い訳だが、本当に連絡するタイミングがなかったのだ。


敦先輩に連れらている時、なんだか話掛けづらい雰囲気だった。



「今日の昼食の件か?」


「あ、そうです。

会長もご存知だったんですね」



俺がそう言うと、まぁな、となんとも言えない返事が来た。


そしてしばらく沈黙が流れる。



「会長?

切っても構いませんか?」



敦先輩達を待たせている為、早いとこ切り上げたい。



「待て!

……その、怪我の方は大丈夫なんだろうな」


「あ、はい。

大した怪我じゃないですし、心配する程のものでは……」


「別に心配などしていない!!

切るぞ!!」



プチッと電話は切れて、無機質な音が耳に入ってくる。



どうしたんだ、会長。


もしかして照れているのだろうか。


相変わらず会長は照れ屋だな。


今頃顔を赤くしているかもしれない。


俺は一人でクスクス笑ってしまう。



「すみません、お待たせしました」


「電話、片岡君から?」



悠先輩の問いにはい、と頷いて見せると、そっか、と笑った。



「晴は愛されてるね」


「え?」



突拍子のない言葉に俺は困惑する。


何故先程の会話から愛されてる、という話になるのか、全く掴めない。



「そろそろいいか」



深く聞こうと思ったら、しびれを切らした敦先輩に聞かれ、俺は頷く。
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