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第二話 焦熱~繭の戯れ
#3 そんなに感じて大丈夫?
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Dの手がキャミソールの裾からするりと入りこんできた。熱い掌があっというまに柔肌の脇腹を直につかまえる。
今日はもうずっとシリコンの小さな突起でしか触れられていない。それだけに、男の生の手肌が、ついぞないくらい生々しく、新鮮だった。
「あっ……」
さらりと触れられたくらいで、どうしてこんなに感じるのか。
うぶな娘でもあるまいに。
腹を撫で、へそに戯れて、背中に廻り込み、また腹をまさぐる。
ぞわぞわと体内にパルスが残響して、蝶子を奥から沸騰させていく。
「んんっ」
どうしようもなく背がしなり、愛撫を求めるように柔肌を吸いつかせて、蝶子は悶えた。
「は…、ああぁ…」
腹に円を描いていた手が、く、と胸を押し上げてきた。
「……!」
掌にこぼれるほどの丸いふくらみをそっと寄せ上げ、しかし手中に納める手前で引き下がる。中心まで触れないうちに引いては、また押し上げてくる。寄せては返す波のように何度も何度も繰り返し、静かに、だが力強く、容赦なく。
今日はまだ一度も触れられていない桜色の突起が、甘く切なく尖って震えている。もう限界だった。
「は……ん…」
(早く……)
大きな手が胸の丘に寄せて返すたびに、今度こそ、今度こそ……と、これから与えられるであろう快感への期待に、胸が高鳴る。
「ぁん」
逸る気持ちが身体の中で暴れだす。ついには、みずから男の手に勃ちきった尖りを押し付けようと、身をくねらせてしまうほど。
だが。
(焦らさないで。早く触って。うんと弄って……)
どんなに思っても、そんなすがるような台詞を口にするのは、蝶子のプライドが許さなかった。
泣き濡れて哀れに懇願するのは、蝶子の作中の女達であって、蝶子ではない。作者である蝶子は彼女達を意のままに弄ぶ側の人間だ。男に命じて求める快楽を提供させることはしても、跪くことはしない。
その時だ。
ゆさ、と揉み上げられた波の頂点で、疼く紅蕾が図らずも布地にこすりつけられ、快感の電撃が全身を貫いた。
「ああああああっ!」
いきなりすぎる強い刺激に両脚が跳ね、腰が浮き上がる。
Dが艶のある吐息をこぼして、身をかがめてきた。
「ああ、すごい効果ですね。これだけのことで、そんなに感じて」
布越しに唇が、キャミソールの下では長い指が、どちらもきわどく戯れて、蝶子を焦らす。
「大丈夫ですか? これからいつものように触れてしまいますよ?」
「あああぁ……」
そう言われて、この先に待つものを想像したのだろう。
目を固く閉じてふるふると震える様子は、まるで男を知らない処女のようでさえあった。
「蝶子さん、可愛い」
思わず、といった調子でDが呟きをこぼした。
そしてキャミソールがぐいと捲り上げられ、陶然と見下ろす男の目の前に豊かな胸がさらけ出された。
すでにたっぷりと快感のこもった乳房は、やわやわと持ち上げられるだけで甘く痺れ、ゆさんと揺られると先端まで歓びのパルスが走る。
「あん!」
ゆっくりと、本当にゆっくりと、指先が近づいてきた。
それだけで、ちりちりと乳首が疼くようだった。
蝶子はただでも乳首が弱い。こんなにも感じやすくさせられた今日の身体で、いつものような弄られたら。
(怖い)
この店でそんなことを思うのは初めてだった。
「あ……」
Dの指先はいよいよ接近していた。もういつ触れてもおかしくない。
「蝶子さん、大丈夫です。酷いことは絶対にしませんから。私に身をゆだねて、力を抜いて」
優しくなだめられて、蝶子のプライドが目を覚ました。
(そんな小娘に言うような台詞、この私に言うんじゃないわ)
「何言ってるの。私は怖がってなんかないわ。今日はあなたに任せたんだから、好きにしなさい。最高の体験をさせてくれるんでしょ」
口では強がっていても、だ。
発情しきった顔、ぴくぴくと跳ねる肌、弾けそうな乳首、切なげに揺れる白い脚。
全身が蝶子の現状を暴露していた。
まだ今は意地と理性が残っている。
だが、そんな抵抗もいつまでもつだろう。
暴走する本能にどこまで溺れずにいられるのか。
堕ちるのは時間の問題なのか。
まだ夜は始まったばかり。
肝心のところを触れられもしていない。
一度も昇りつめていない。
前戯すら、まだこれからと言っていい。
本当のプレイはここからなのだ。
「ええ、謹んで」
そう言って、綺麗に手入れされた爪先が、蝶子の乳首に触れた。
つ……。
おそるおそる、と言っていいほどの慎重さで、爪の先をそっと置く。そんなままごとのような刺激が、今の蝶子には、脳までしびれるほどの衝撃だった。
先端のわずかなくぼみに爪が置かれただけで、甘いパルスが走ってじんじんする。
「あん」
「もう少し、いきますね」
「ふ」
かり……。
「あああっ」
かり、かり、かりかりかりかり──。
側面をそっと引っかかれて、あまりの刺激に悲鳴をおさえきれなかった。
「あっ、あっ、あああああああああああああぁっ!」
触れられているのは先だけだというのに手足の先まで快感がうずまき、下腹部でどくどくと熱塊がふくらんでいく。
「あんっ……っぁ…」
「蝶子さんの弱いところ」
二本の指が、乳首の突端のすぐ先で、小さく蠢いた。
触れてはいない。だがまるで触れているかのような、先端をくにくにと捏ねるかのような動きだった。
「こんなに綺麗で、感じやすくて」
蝶子の身体がびくんと跳ねた。
「う、そ……」
触れられてもいないそこに、むずむずと甘い痺れが走るのだ。
Dの指先と乳首との間に、見えない糸がつながってでもいるかのようだ。そこから、焦れったいほどの淡い快感が、乳房全体に広がっていく。
(何これ)
思わず凝視した。
その瞬間、優しい指先がついにぴとりと張り付いた。
すりっ。
脳天まで突き抜ける甘美な刺激が暴れ出す。
なすすべもなく、身体を駆け巡る快感に、ただ悶えた。
「………っ!!!」
すり、すり、すりすりすり……。
ビクビクビクッ───
「あああああっ」
声が抑えられない。
(嘘、嘘、すごい)
くるくると優しく撫でられているだけだ。それなのに、信じられないほどの快感が、次から次へと蝶子を襲う。ほとんど物理的な電流かと思うほどの性感だ。こらえようもなく、全身が痙攣し、悶え、跳ねる。
「あっ、あっあっあっ、ああああああっ」
「とくに左ですよね。弱いの」
と、二本の指で、くにゅんと摘ままれた。
「ああああああぁっ」
「大丈夫、両方してあげますよ」
くにくにくにくに──。
「ああああああああああああああああああああああああああああああぁっ」
(無理、もう無理っ)
無論、そんなことが言える蝶子ではない。
くに、くに、くに、くにゅん──。
男の指戯はねっとりと続く。
「あっ、あっ、あっ──! ぁ、ぅ……」
いつのまにか、ぽろぽろと涙がこぼれていた。
「可愛い。そんなに感じて」
かりり──
「ひ……!!!」
(だめ、これ、おかしくなる……)
「蝶子さん」
鉄を熔かしたようなその眼差しで見られるだけで、見られたところから熱が上がっていく。
(いきたい。いきたい。早く、早く早く早く──!)
頭がぼうっとして、もうそれ以外のことが考えられない。
耳元で、艶のある声が甘くささやいた。
「でも蝶子さん、今日は中イキしましょうね」
その声と言葉に反応して、子宮が悶える。
熱い。もう本当に熱い。
身をよじっても、腰をくねらせても、ちっともおさまらない。
「せっかくだからこれを使いますよ」
ぼんやりと見上げた視界に、Dの美しい顔と、あのスティック。
そしてわずかに残る蝶子の意気地を、罪な宣告が容赦なく打ち砕いた。
「ポルチオでパルス、試してみましょ?」
ただ達するだけでは済まさない。
とでも言いたげな低い声に、全身がぞくりと泡立つ。
怖い。けれど──。
蝶子は眼を閉じて、身をゆだねた。
次ページへ続く
今日はもうずっとシリコンの小さな突起でしか触れられていない。それだけに、男の生の手肌が、ついぞないくらい生々しく、新鮮だった。
「あっ……」
さらりと触れられたくらいで、どうしてこんなに感じるのか。
うぶな娘でもあるまいに。
腹を撫で、へそに戯れて、背中に廻り込み、また腹をまさぐる。
ぞわぞわと体内にパルスが残響して、蝶子を奥から沸騰させていく。
「んんっ」
どうしようもなく背がしなり、愛撫を求めるように柔肌を吸いつかせて、蝶子は悶えた。
「は…、ああぁ…」
腹に円を描いていた手が、く、と胸を押し上げてきた。
「……!」
掌にこぼれるほどの丸いふくらみをそっと寄せ上げ、しかし手中に納める手前で引き下がる。中心まで触れないうちに引いては、また押し上げてくる。寄せては返す波のように何度も何度も繰り返し、静かに、だが力強く、容赦なく。
今日はまだ一度も触れられていない桜色の突起が、甘く切なく尖って震えている。もう限界だった。
「は……ん…」
(早く……)
大きな手が胸の丘に寄せて返すたびに、今度こそ、今度こそ……と、これから与えられるであろう快感への期待に、胸が高鳴る。
「ぁん」
逸る気持ちが身体の中で暴れだす。ついには、みずから男の手に勃ちきった尖りを押し付けようと、身をくねらせてしまうほど。
だが。
(焦らさないで。早く触って。うんと弄って……)
どんなに思っても、そんなすがるような台詞を口にするのは、蝶子のプライドが許さなかった。
泣き濡れて哀れに懇願するのは、蝶子の作中の女達であって、蝶子ではない。作者である蝶子は彼女達を意のままに弄ぶ側の人間だ。男に命じて求める快楽を提供させることはしても、跪くことはしない。
その時だ。
ゆさ、と揉み上げられた波の頂点で、疼く紅蕾が図らずも布地にこすりつけられ、快感の電撃が全身を貫いた。
「ああああああっ!」
いきなりすぎる強い刺激に両脚が跳ね、腰が浮き上がる。
Dが艶のある吐息をこぼして、身をかがめてきた。
「ああ、すごい効果ですね。これだけのことで、そんなに感じて」
布越しに唇が、キャミソールの下では長い指が、どちらもきわどく戯れて、蝶子を焦らす。
「大丈夫ですか? これからいつものように触れてしまいますよ?」
「あああぁ……」
そう言われて、この先に待つものを想像したのだろう。
目を固く閉じてふるふると震える様子は、まるで男を知らない処女のようでさえあった。
「蝶子さん、可愛い」
思わず、といった調子でDが呟きをこぼした。
そしてキャミソールがぐいと捲り上げられ、陶然と見下ろす男の目の前に豊かな胸がさらけ出された。
すでにたっぷりと快感のこもった乳房は、やわやわと持ち上げられるだけで甘く痺れ、ゆさんと揺られると先端まで歓びのパルスが走る。
「あん!」
ゆっくりと、本当にゆっくりと、指先が近づいてきた。
それだけで、ちりちりと乳首が疼くようだった。
蝶子はただでも乳首が弱い。こんなにも感じやすくさせられた今日の身体で、いつものような弄られたら。
(怖い)
この店でそんなことを思うのは初めてだった。
「あ……」
Dの指先はいよいよ接近していた。もういつ触れてもおかしくない。
「蝶子さん、大丈夫です。酷いことは絶対にしませんから。私に身をゆだねて、力を抜いて」
優しくなだめられて、蝶子のプライドが目を覚ました。
(そんな小娘に言うような台詞、この私に言うんじゃないわ)
「何言ってるの。私は怖がってなんかないわ。今日はあなたに任せたんだから、好きにしなさい。最高の体験をさせてくれるんでしょ」
口では強がっていても、だ。
発情しきった顔、ぴくぴくと跳ねる肌、弾けそうな乳首、切なげに揺れる白い脚。
全身が蝶子の現状を暴露していた。
まだ今は意地と理性が残っている。
だが、そんな抵抗もいつまでもつだろう。
暴走する本能にどこまで溺れずにいられるのか。
堕ちるのは時間の問題なのか。
まだ夜は始まったばかり。
肝心のところを触れられもしていない。
一度も昇りつめていない。
前戯すら、まだこれからと言っていい。
本当のプレイはここからなのだ。
「ええ、謹んで」
そう言って、綺麗に手入れされた爪先が、蝶子の乳首に触れた。
つ……。
おそるおそる、と言っていいほどの慎重さで、爪の先をそっと置く。そんなままごとのような刺激が、今の蝶子には、脳までしびれるほどの衝撃だった。
先端のわずかなくぼみに爪が置かれただけで、甘いパルスが走ってじんじんする。
「あん」
「もう少し、いきますね」
「ふ」
かり……。
「あああっ」
かり、かり、かりかりかりかり──。
側面をそっと引っかかれて、あまりの刺激に悲鳴をおさえきれなかった。
「あっ、あっ、あああああああああああああぁっ!」
触れられているのは先だけだというのに手足の先まで快感がうずまき、下腹部でどくどくと熱塊がふくらんでいく。
「あんっ……っぁ…」
「蝶子さんの弱いところ」
二本の指が、乳首の突端のすぐ先で、小さく蠢いた。
触れてはいない。だがまるで触れているかのような、先端をくにくにと捏ねるかのような動きだった。
「こんなに綺麗で、感じやすくて」
蝶子の身体がびくんと跳ねた。
「う、そ……」
触れられてもいないそこに、むずむずと甘い痺れが走るのだ。
Dの指先と乳首との間に、見えない糸がつながってでもいるかのようだ。そこから、焦れったいほどの淡い快感が、乳房全体に広がっていく。
(何これ)
思わず凝視した。
その瞬間、優しい指先がついにぴとりと張り付いた。
すりっ。
脳天まで突き抜ける甘美な刺激が暴れ出す。
なすすべもなく、身体を駆け巡る快感に、ただ悶えた。
「………っ!!!」
すり、すり、すりすりすり……。
ビクビクビクッ───
「あああああっ」
声が抑えられない。
(嘘、嘘、すごい)
くるくると優しく撫でられているだけだ。それなのに、信じられないほどの快感が、次から次へと蝶子を襲う。ほとんど物理的な電流かと思うほどの性感だ。こらえようもなく、全身が痙攣し、悶え、跳ねる。
「あっ、あっあっあっ、ああああああっ」
「とくに左ですよね。弱いの」
と、二本の指で、くにゅんと摘ままれた。
「ああああああぁっ」
「大丈夫、両方してあげますよ」
くにくにくにくに──。
「ああああああああああああああああああああああああああああああぁっ」
(無理、もう無理っ)
無論、そんなことが言える蝶子ではない。
くに、くに、くに、くにゅん──。
男の指戯はねっとりと続く。
「あっ、あっ、あっ──! ぁ、ぅ……」
いつのまにか、ぽろぽろと涙がこぼれていた。
「可愛い。そんなに感じて」
かりり──
「ひ……!!!」
(だめ、これ、おかしくなる……)
「蝶子さん」
鉄を熔かしたようなその眼差しで見られるだけで、見られたところから熱が上がっていく。
(いきたい。いきたい。早く、早く早く早く──!)
頭がぼうっとして、もうそれ以外のことが考えられない。
耳元で、艶のある声が甘くささやいた。
「でも蝶子さん、今日は中イキしましょうね」
その声と言葉に反応して、子宮が悶える。
熱い。もう本当に熱い。
身をよじっても、腰をくねらせても、ちっともおさまらない。
「せっかくだからこれを使いますよ」
ぼんやりと見上げた視界に、Dの美しい顔と、あのスティック。
そしてわずかに残る蝶子の意気地を、罪な宣告が容赦なく打ち砕いた。
「ポルチオでパルス、試してみましょ?」
ただ達するだけでは済まさない。
とでも言いたげな低い声に、全身がぞくりと泡立つ。
怖い。けれど──。
蝶子は眼を閉じて、身をゆだねた。
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