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一章 初夜
12 約束
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「また勝手にイッたな? 悪い子だ」
ずちゅっ…!
咎めるように重く突き上げられて、腰が浮く。
「い、あああああっ!だめっだめっ!今だめっ!!」
「ならやめない」
ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっっ──。
若妻は高い悲鳴を上げながら悶え、乱れ乱れた。
泣き叫ぶ嬌声は、屋敷中に聞こえているだろう。
使用人達も義母も、今この部屋で何が行われているかを察しているだろう。
それは明日帰宅する夫の耳にも入るだろう。
「いやあぁ──…」
飛び立とうとする鳥のように身を伸ばし、引きずり降ろされては繋ぎ留められ、深く撃ち込まれた熱杭に身の内を灼かれ。
気まぐれに花芽を嬲られるたびに果て飛び、すすり泣く。
白魚の両手は、言霊の呪縛により、もはや陵辱者の共犯となって、己の胸を苛み続ける。
「や、め、たすけ、あっ……いやぁ……──ッ!!」
「そうだ。お前はそうして嫌がって泣き叫んでおればよい」
つかのま逃がれていた花芽が、またぐいと押された。
その高いところから、どうやって降りてくればいいのか、もう帰り道がわからない。
「嫌がっても嫌がっても、私に力づくで犯される」
「い、や、ぁ……」
「抱き潰して、私の形に変えてやる」
「いや、やあぁ……」
濡れそぼった声だけが墜ちていく。
いいや、本当は、わかっていた。
それは、彼女のための逃げ道。
力で君臨するこの当主が望めば、この家で叶わないことなどない。
夫の留守に忍んで来る必要など端からなかったのだ。
それを、こんなふうに。力づくで犯すと言いながら。
そして実際にこんなにひどくし、彼女を滅茶苦茶に壊しておきながら。
なのに、そんな甘い逃げ道をつくったりするなどと。
「ひどい……」
ひどくて、ずるくて、そして優しい。
「ひどい、おじさま。ひどい……」
それは果てしない闇だった。
無垢で艶冶なはなびらが、はらり、はらりと、翻りながら散っていく、底の知れない闇だった。
男は小さな声で彼女の名を呼んだ。
眩しそうに見上げるその顔に浮かぶのは、まぎれもなく憧憬。
届かぬ太陽に手をのばす欲深い男の。
水面の月をすくおうとする悲しい男の。
舞い落ちる淡雪を掌中に留めようとする愚かな男の。
「んぁ……」
「構わぬ。欲しいだけやる。全部、お前のものだ」
小さな身体を、天に捧げて踊らせていた頃があった。
ちょうどこんなふうに、眩しい空を見上げて。
その空よりも眩しい笑顔を見上げて。
彼女の願いを叶えてやれたら、どんなに良かったことだろう。
「……お、じさま……?」
とろとろに蕩けた瞳は、あどけないほどに澄んでいた。
もう何もわからなくなっているのだろう。
そう、わかっていない。
とっくに、彼女みずからが欲し求めていたのだと、本人はわかっていない。
逃げる女を男が貪り尽くしていたのではない。
貪欲に求める女に、男が与え続けていたのだ。
「約束したろう?」
二人で彼女の心にほどこした暗示は強力で、その封印を解くことは一生ないと思っていた。
──約束しよう。いつかお前が大人になって、それでもそれを望むなら。私の全てを、お前にやろう。
だが本当は、彼こそが望んでいたのかもしれない。
息子と睦み合う彼女の姿は、彼を病ませた。
夜ごと聞こえる甘い声が、彼を狂わせた。
幽閉した老父といまだに通じる年上の妻は、彼を膿ませた。
いいや、それはもしかしたら、十五で娶らされた女がそもそも父の子を身籠っていたと知ったその日から。
いつも少し間に合わなかった。
何もかもが手遅れで、欲したものは目の前で手からすり抜けていった。
いつも失ってから気づく。大事なものだけが手に入らない。
うんざりだった。
女ひとり奪うことなど、いとも容易いことだった。
身も心も粉々に砕いて、生き人形にしてやるつもりだった。
だが──。
ぐぢゅっっ!
「あんっ」
濡れて掠れたかぼそい声が、最後の糸を断ち切った。
ぐいと身体を起こし、華奢な身体をひといきに組み敷く。足首をつかみ、腰を高く上げさせ、身体を折りたたむ。きっと息苦しいほどに圧迫している。乱暴に扱うと折れてしまいそうな白い裸体が、哀れに軋んでいる。
不安げにおののく唇。震える睫毛。揺れる瞳。
深く曲げさせた脚を開き、泡立つ花口めがけて、体重をかけた。
「ッッッ───…!」
もはやひとり遊びなど許さない。
奥を穿ちながら、芽芯を捏ね、胸の実を弾く。
「あああああああああぁぁっっ!!!」
「堕ちるなら、もろともに」
びゅくびゅくと己のしるしを最奥に刻んで、熱い身体を折れそうなほど抱きしめた。
失神してしまった細い身体を腕に抱き、小さな顔を掌中にすくう。
一晩じゅう泣きはらし、汗や唾液や何やかやでどろどろに汚れていた。
細い眉は悲しげに寄せられ、睫毛がぴくぴくと揺れて痛々しい。
すり、と指の背を頬にすべらせる。
いつも幸せそうに笑っていた小さな唇が哀れを誘う。
一生見ている他ないと思っていたそれに、震える唇で、初めて触れる。
風が過ぎるほど幽(かす)かに。
愛で撫でるほどおずおずと。
*
部屋の外が騒がしい。
近づいてくる荒々しい足音。
必死に引き止める使用人達の声。
猛り狂う怒号。
──ああ、帰ってきたのか。
ずず、と彼女の中から己を抜いた。
ひくひくと喘ぐ花唇が、こぷん、こぷん、とよだれをこぼして泣いている。
見ても見ても見飽きない。
外ではがつんがつんと扉が叩かれている。
鍵を打ち壊す派手な音がした。
ばたーーーんと扉が打ち破られて、朝の光が差し込んだ。
終わらない夜が明け、甘美な夢が果てる。
第一章 完
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
たくさんの人に読んでいただき、嬉しく思います。
エロが主題(!)だったため、設定等の記述は限界まで省きました。
省きすぎてわかりにくかった方にはすみません。
思う存分ねちねちエロエロを書きたおせて、私自身はとても楽しく書けたお話でした。
ありがとうございました。
そして二章に続きます。
引き続きお読みいただけると嬉しいです。
umi拝
ずちゅっ…!
咎めるように重く突き上げられて、腰が浮く。
「い、あああああっ!だめっだめっ!今だめっ!!」
「ならやめない」
ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっっ──。
若妻は高い悲鳴を上げながら悶え、乱れ乱れた。
泣き叫ぶ嬌声は、屋敷中に聞こえているだろう。
使用人達も義母も、今この部屋で何が行われているかを察しているだろう。
それは明日帰宅する夫の耳にも入るだろう。
「いやあぁ──…」
飛び立とうとする鳥のように身を伸ばし、引きずり降ろされては繋ぎ留められ、深く撃ち込まれた熱杭に身の内を灼かれ。
気まぐれに花芽を嬲られるたびに果て飛び、すすり泣く。
白魚の両手は、言霊の呪縛により、もはや陵辱者の共犯となって、己の胸を苛み続ける。
「や、め、たすけ、あっ……いやぁ……──ッ!!」
「そうだ。お前はそうして嫌がって泣き叫んでおればよい」
つかのま逃がれていた花芽が、またぐいと押された。
その高いところから、どうやって降りてくればいいのか、もう帰り道がわからない。
「嫌がっても嫌がっても、私に力づくで犯される」
「い、や、ぁ……」
「抱き潰して、私の形に変えてやる」
「いや、やあぁ……」
濡れそぼった声だけが墜ちていく。
いいや、本当は、わかっていた。
それは、彼女のための逃げ道。
力で君臨するこの当主が望めば、この家で叶わないことなどない。
夫の留守に忍んで来る必要など端からなかったのだ。
それを、こんなふうに。力づくで犯すと言いながら。
そして実際にこんなにひどくし、彼女を滅茶苦茶に壊しておきながら。
なのに、そんな甘い逃げ道をつくったりするなどと。
「ひどい……」
ひどくて、ずるくて、そして優しい。
「ひどい、おじさま。ひどい……」
それは果てしない闇だった。
無垢で艶冶なはなびらが、はらり、はらりと、翻りながら散っていく、底の知れない闇だった。
男は小さな声で彼女の名を呼んだ。
眩しそうに見上げるその顔に浮かぶのは、まぎれもなく憧憬。
届かぬ太陽に手をのばす欲深い男の。
水面の月をすくおうとする悲しい男の。
舞い落ちる淡雪を掌中に留めようとする愚かな男の。
「んぁ……」
「構わぬ。欲しいだけやる。全部、お前のものだ」
小さな身体を、天に捧げて踊らせていた頃があった。
ちょうどこんなふうに、眩しい空を見上げて。
その空よりも眩しい笑顔を見上げて。
彼女の願いを叶えてやれたら、どんなに良かったことだろう。
「……お、じさま……?」
とろとろに蕩けた瞳は、あどけないほどに澄んでいた。
もう何もわからなくなっているのだろう。
そう、わかっていない。
とっくに、彼女みずからが欲し求めていたのだと、本人はわかっていない。
逃げる女を男が貪り尽くしていたのではない。
貪欲に求める女に、男が与え続けていたのだ。
「約束したろう?」
二人で彼女の心にほどこした暗示は強力で、その封印を解くことは一生ないと思っていた。
──約束しよう。いつかお前が大人になって、それでもそれを望むなら。私の全てを、お前にやろう。
だが本当は、彼こそが望んでいたのかもしれない。
息子と睦み合う彼女の姿は、彼を病ませた。
夜ごと聞こえる甘い声が、彼を狂わせた。
幽閉した老父といまだに通じる年上の妻は、彼を膿ませた。
いいや、それはもしかしたら、十五で娶らされた女がそもそも父の子を身籠っていたと知ったその日から。
いつも少し間に合わなかった。
何もかもが手遅れで、欲したものは目の前で手からすり抜けていった。
いつも失ってから気づく。大事なものだけが手に入らない。
うんざりだった。
女ひとり奪うことなど、いとも容易いことだった。
身も心も粉々に砕いて、生き人形にしてやるつもりだった。
だが──。
ぐぢゅっっ!
「あんっ」
濡れて掠れたかぼそい声が、最後の糸を断ち切った。
ぐいと身体を起こし、華奢な身体をひといきに組み敷く。足首をつかみ、腰を高く上げさせ、身体を折りたたむ。きっと息苦しいほどに圧迫している。乱暴に扱うと折れてしまいそうな白い裸体が、哀れに軋んでいる。
不安げにおののく唇。震える睫毛。揺れる瞳。
深く曲げさせた脚を開き、泡立つ花口めがけて、体重をかけた。
「ッッッ───…!」
もはやひとり遊びなど許さない。
奥を穿ちながら、芽芯を捏ね、胸の実を弾く。
「あああああああああぁぁっっ!!!」
「堕ちるなら、もろともに」
びゅくびゅくと己のしるしを最奥に刻んで、熱い身体を折れそうなほど抱きしめた。
失神してしまった細い身体を腕に抱き、小さな顔を掌中にすくう。
一晩じゅう泣きはらし、汗や唾液や何やかやでどろどろに汚れていた。
細い眉は悲しげに寄せられ、睫毛がぴくぴくと揺れて痛々しい。
すり、と指の背を頬にすべらせる。
いつも幸せそうに笑っていた小さな唇が哀れを誘う。
一生見ている他ないと思っていたそれに、震える唇で、初めて触れる。
風が過ぎるほど幽(かす)かに。
愛で撫でるほどおずおずと。
*
部屋の外が騒がしい。
近づいてくる荒々しい足音。
必死に引き止める使用人達の声。
猛り狂う怒号。
──ああ、帰ってきたのか。
ずず、と彼女の中から己を抜いた。
ひくひくと喘ぐ花唇が、こぷん、こぷん、とよだれをこぼして泣いている。
見ても見ても見飽きない。
外ではがつんがつんと扉が叩かれている。
鍵を打ち壊す派手な音がした。
ばたーーーんと扉が打ち破られて、朝の光が差し込んだ。
終わらない夜が明け、甘美な夢が果てる。
第一章 完
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
たくさんの人に読んでいただき、嬉しく思います。
エロが主題(!)だったため、設定等の記述は限界まで省きました。
省きすぎてわかりにくかった方にはすみません。
思う存分ねちねちエロエロを書きたおせて、私自身はとても楽しく書けたお話でした。
ありがとうございました。
そして二章に続きます。
引き続きお読みいただけると嬉しいです。
umi拝
応援ありがとうございます!
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