引きこもりの俺の『冒険』がはじまらない!〜乙女ゲー最凶ダンジョン経営〜

ばつ森⚡️8/22新刊

文字の大きさ
100 / 119
1-4 反乱の狼煙

97 結末ですらない、ただの

しおりを挟む
 

「はあ……やばい。すげー気持ちよかった」

 しんと静まり返った俺の部屋のベッドの上、泣き疲れて眠ってしまったフェルトの涙を指でぬぐいながら、俺はほうっとため息を吐いた。ダンジョンの中まで音は聞こえないけど、きっと外では宴会でもしてるだろう。
 すうすうという穏やかなフェルトの寝息だけが聞こえる。

(なるほどね。自分のものだと思ってするセックスって、全然違うんだな……)

 べたべたするだろうから浄化してあげたいとは思うけど、ケツから洩れてる俺の精子を見てると、このまま穢されたまま朝までほっときたい気もする。
 ああ、腹壊すんだったっけ? ああ、腹壊さないように俺の精液改造すればいいのか。精子って生き物だもんな。

「はー」

 しばらく精子垂れ流してるフェルトのケツを見ながら、動かずにぼーっとしている。
 いろいろな起きた一日だったけど、最後にこんな幸せなセックスがあるならなんでもできる気がするなと、俺は万能感に浸っていた。ま、フェルトにとってこれが幸せかはわからないし、ユエが言ってたみたいに「俺が幸せにしてあげたい」だなんて思える日は来ないだろう。

 それでも、フェルトを泣かせるのは俺じゃないと――俺がだめだった。大切にできる自信もないけど、フェルトが犬でいいって言ってくれたんだから、俺は俺にできる方法で〝できるだけ〟大切にしよ。

 俺は立ち上がると、その辺にあった布で股間だけ雑に拭って、ポイッと床に捨てた。机の上に置きっぱなしだったグラスを手に取り、水をごくごくと飲み干す。

 机の上には、森で拾った汚ない隷属の首輪が置いてある。カイルっていうやつが言ってたことから考えると、第二王女がフェルトのために持たせた首輪だ。忌々しい。
 いろんなことが思い出されて、俺はチッと舌打ちをした。

 カイルをフェルトに殺させたのは、よかったのかどうかはわからない。
 ユエの魔法とはいえ、万能ではない。俺が焼いてしまったほうが、フェルトの心の傷は浅かったかもしれないけど、制限のあるユエの魔法の性質上、あれが最適な判断だったはずだ。ユエの魔法はまだ未解明なところが多すぎる。憤怒イラ、――炎のほうはともかく、怠惰アセディア、――『時間』のほうは、宝石さんの部屋でまた研究しなくてはいけないとこだと思ってる。
 まあ、今は気が動転してる上に、そのあと、なにも考えられなくなるまで俺にめちゃくちゃにされたんだから、フェルトが悲しみを自覚するのは明日以降だろう。

 この首輪に魔法の気配はもうない。
 念のため、保存できそうな箱を土壁さんに生成してもらい、その中に入れる。ユエの炎で燃やしてしまうのは簡単だが、ここは魔法のある世界だ。一体どんな情報がこの首輪に残されているのかわからないし、なにかリスクがありそうなことはなにごとも調査して納得したい。
 それにしても――。
 
(たかが一介の平民騎士相手に、わざわざ搦め手まで使って隷属の首輪を出してくるか……?)
 
 フェルト本人の感覚からすると、そこまで執着されているという認識がなかったはずだ。本人も第二騎士団が来た時点で、かなり驚いていたのだから。
 通常は『調査中の事故』で処理されるはずの案件だったはずだ。どれくらいの確率で予測していのかはわからないが、『生きている』という前提のもと、カイルは隷属の首輪を持たされて送り込まれた。普通は戻らなかったら『死んでいる』と思われるのが常なわけで、そもそもの前提がおかしい。

 理由はまだわからない、――でも、おそらくは、フェルトたちがことで、なにか問題が起きたに違いない。
 問題が起きたのか、それとも、――これから問題が起きるのか。


「……フェルトのこと、どうするつもりだったんだろ」


 反乱や騎士団のこともあるけど、このキラキラ爽やかな騎士様は、なにごとかの中心にいるような気がしてならない。
 リンと三人で話してたとき、あのときはただの酔っ払い話だったけれども。もし、――もしも……


 ――フェルトが俺と


 それを考えてしまう。ただの勘でしかないけど、これはなにかの『分岐』――だったような気がするのだ。
 なんで俺がここにいるのかってことを考えだすと、キリがないけど。偶然かもしれないし、そうじゃないかもしれないし。

(だって、神様も王様も出て来ないで、本だけしかもらってねーんだもん……)

 誰のどういう思惑が働いているのか、たまたま俺だったのか、なんで俺だったのか、そういうそもそも論をはじめちゃうと結論が出るわけがないのだ。結局いつもこれ、いつも同じ「とりあえず、できることするしかねーか」ていうとこにしか行き着かない。

「あとは、革命な」

 ハク先生、――改め、ハクラ・ラムレイは、どうやってここから反乱の火種を広げていくつもりなんだろうな。地球上の歴史から考えれば、人民が蜂起したとしても、そう簡単に革命はうまくいかない。
 それを知ってか知らずか、ハクラ・ラムレイは『旗印』を探しているのだろうし、流れには『カリスマ』が絶対に必要だ。そして、その『カリスマ』も何代も続くわけではない。おそらく何百年単位で、王政、貴族政、それから、議会制のようなものを、繰り返しながら、その国を象る法律ができあがっていくだろう。
 地球の歴史を思う。今はどの辺りのどこを体現しているところなのだろうか。

 自分のことだけを考えれば、――グレンヴィルここにいながら事態に関わらないことはできないだろうから、ダンジョンの整備が終わったら、どっか移住を考えるのもいいかもしれない。
 今までは自分に力がなかったから選択肢も狭かったけど、今はユエのおかげでHPも膨大にあるし、MPは元から膨大な量あるからな。

 すうすう眠るフェルトの寝息が聞こえる。
 こぷっと音を立てて、俺の精子が中からこぼれ落ちた。栓でもして全部吸収でもさせようかなとか考えて、なんだそれと笑ってしまった。

(こんなに汚されちゃって……かわいそ)

 俺は思いついたおかしな考えを振り切るように、ようやくフェルトに浄化の魔法をかけてから、毛布をかぶせてやった。
 フェルトにつけられた首輪を指でなぞってみたら、あたたかな気持ちが広がった。


「俺のもの、――か」


 ふわふわのくせっ毛を撫でながら、今は見えない美しい新緑の瞳を思う。
 これからまた、どんな日常が始まるんだろうかと、俺は考えていた。


 ――俺が異世界で目を覚ましてからの、これまでの話が、『序章』ですらなく、ただの物語の『背景』でしかなかったなんて、まだ誰も気づいていなかった。

 これから誰かにとっての『本編』が始まり、俺たちはその『物語』の、女の陰謀がひしめく『ゲーム』の中へと巻き込まれていくだなんて、考えてもみなかったのだ。





 ――――20禁乙女ゲーム『愛の革命♡メルティヘヴン』PLAYしますか?


 >YES





 .....TO BE CONTINUED







――――――――――――

どうもこんばんは!ばつ森です。
ここまで読んでくださって、本当に本当にありがとうございました!

このお話は3部構成の大長編です。
ここからちょっとお休みをいただいてから【第2部:乙女ゲーム開始編】を始めたいと思っております。ここからの展開が自分では大好きなので、ぜひおたのしみに!

★ 2024年3月 J.Garden55で【引きこもりの俺の冒険が~】第1部の本を販売予定です★



更新状況はTwitter/Xで。
ではまた!

ばつ森
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...