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1-4 反乱の狼煙
97 結末ですらない、ただの
「はあ……やばい。すげー気持ちよかった」
しんと静まり返った俺の部屋のベッドの上、泣き疲れて眠ってしまったフェルトの涙を指でぬぐいながら、俺はほうっとため息を吐いた。ダンジョンの中まで音は聞こえないけど、きっと外では宴会でもしてるだろう。
すうすうという穏やかなフェルトの寝息だけが聞こえる。
(なるほどね。自分のものだと思ってするセックスって、全然違うんだな……)
べたべたするだろうから浄化してあげたいとは思うけど、ケツから洩れてる俺の精子を見てると、このまま穢されたまま朝までほっときたい気もする。
ああ、腹壊すんだったっけ? ああ、腹壊さないように俺の精液改造すればいいのか。精子って生き物だもんな。
「はー」
しばらく精子垂れ流してるフェルトのケツを見ながら、動かずにぼーっとしている。
いろいろな起きた一日だったけど、最後にこんな幸せなセックスがあるならなんでもできる気がするなと、俺は万能感に浸っていた。ま、フェルトにとってこれが幸せかはわからないし、ユエが言ってたみたいに「俺が幸せにしてあげたい」だなんて思える日は来ないだろう。
それでも、フェルトを泣かせるのは俺じゃないと――俺がだめだった。大切にできる自信もないけど、フェルトが犬でいいって言ってくれたんだから、俺は俺にできる方法で〝できるだけ〟大切にしよ。
俺は立ち上がると、その辺にあった布で股間だけ雑に拭って、ポイッと床に捨てた。机の上に置きっぱなしだったグラスを手に取り、水をごくごくと飲み干す。
机の上には、森で拾った汚ない隷属の首輪が置いてある。カイルっていうやつが言ってたことから考えると、第二王女がフェルトのために持たせた首輪だ。忌々しい。
いろんなことが思い出されて、俺はチッと舌打ちをした。
カイルをフェルトに殺させたのは、よかったのかどうかはわからない。
ユエの魔法とはいえ、万能ではない。俺が焼いてしまったほうが、フェルトの心の傷は浅かったかもしれないけど、制限のあるユエの魔法の性質上、あれが最適な判断だったはずだ。ユエの魔法はまだ未解明なところが多すぎる。憤怒、――炎のほうはともかく、怠惰、――『時間』のほうは、宝石さんの部屋でまた研究しなくてはいけないとこだと思ってる。
まあ、今は気が動転してる上に、そのあと、なにも考えられなくなるまで俺にめちゃくちゃにされたんだから、フェルトが悲しみを自覚するのは明日以降だろう。
この首輪に魔法の気配はもうない。
念のため、保存できそうな箱を土壁さんに生成してもらい、その中に入れる。ユエの炎で燃やしてしまうのは簡単だが、ここは魔法のある世界だ。一体どんな情報がこの首輪に残されているのかわからないし、なにかリスクがありそうなことはなにごとも調査して納得したい。
それにしても――。
(たかが一介の平民騎士相手に、わざわざ搦め手まで使って隷属の首輪を出してくるか……?)
フェルト本人の感覚からすると、そこまで執着されているという認識がなかったはずだ。本人も第二騎士団が来た時点で、かなり驚いていたのだから。
通常は『調査中の事故』で処理されるはずの案件だったはずだ。どれくらいの確率で予測していのかはわからないが、『生きている』という前提のもと、カイルは隷属の首輪を持たされて送り込まれた。普通は戻らなかったら『死んでいる』と思われるのが常なわけで、そもそもの前提がおかしい。
理由はまだわからない、――でも、おそらくは、フェルトたちが戻らなかったことで、なにか問題が起きたに違いない。
問題が起きたのか、それとも、――これから問題が起きるのか。
「……フェルトのこと、どうするつもりだったんだろ」
反乱や騎士団のこともあるけど、このキラキラ爽やかな騎士様は、なにごとかの中心にいるような気がしてならない。
リンと三人で話してたとき、あのときはただの酔っ払い話だったけれども。もし、――もしも……
――フェルトが俺と出会わなければ。
それを考えてしまう。ただの勘でしかないけど、これはなにかの『分岐』――だったような気がするのだ。
なんで俺がここにいるのかってことを考えだすと、キリがないけど。偶然かもしれないし、そうじゃないかもしれないし。
(だって、神様も王様も出て来ないで、本だけしかもらってねーんだもん……)
誰のどういう思惑が働いているのか、たまたま俺だったのか、なんで俺だったのか、そういうそもそも論をはじめちゃうと結論が出るわけがないのだ。結局いつもこれ、いつも同じ「とりあえず、できることするしかねーか」ていうとこにしか行き着かない。
「あとは、革命な」
ハク先生、――改め、ハクラ・ラムレイは、どうやってここから反乱の火種を広げていくつもりなんだろうな。地球上の歴史から考えれば、人民が蜂起したとしても、そう簡単に革命はうまくいかない。
それを知ってか知らずか、ハクラ・ラムレイは『旗印』を探しているのだろうし、流れには『カリスマ』が絶対に必要だ。そして、その『カリスマ』も何代も続くわけではない。おそらく何百年単位で、王政、貴族政、それから、議会制のようなものを、繰り返しながら、その国を象る法律ができあがっていくだろう。
地球の歴史を思う。今はどの辺りのどこを体現しているところなのだろうか。
自分のことだけを考えれば、――グレンヴィルにいながら事態に関わらないことはできないだろうから、ダンジョンの整備が終わったら、どっか移住を考えるのもいいかもしれない。
今までは自分に力がなかったから選択肢も狭かったけど、今はユエのおかげでHPも膨大にあるし、MPは元から膨大な量あるからな。
すうすう眠るフェルトの寝息が聞こえる。
こぷっと音を立てて、俺の精子が中からこぼれ落ちた。栓でもして全部吸収でもさせようかなとか考えて、なんだそれと笑ってしまった。
(こんなに汚されちゃって……かわいそ)
俺は思いついたおかしな考えを振り切るように、ようやくフェルトに浄化の魔法をかけてから、毛布をかぶせてやった。
フェルトにつけられた首輪を指でなぞってみたら、あたたかな気持ちが広がった。
「俺のもの、――か」
ふわふわのくせっ毛を撫でながら、今は見えない美しい新緑の瞳を思う。
これからまた、どんな日常が始まるんだろうかと、俺は考えていた。
――俺が異世界で目を覚ましてからの、これまでの話が、『序章』ですらなく、ただの物語の『背景』でしかなかったなんて、まだ誰も気づいていなかった。
これから誰かにとっての『本編』が始まり、俺たちはその『物語』の、女の陰謀がひしめく『ゲーム』の中へと巻き込まれていくだなんて、考えてもみなかったのだ。
――――20禁乙女ゲーム『愛の革命♡メルティヘヴン』PLAYしますか?
>YES
.....TO BE CONTINUED
――――――――――――
どうもこんばんは!ばつ森です。
ここまで読んでくださって、本当に本当にありがとうございました!
このお話は3部構成の大長編です。
ここからちょっとお休みをいただいてから【第2部:乙女ゲーム開始編】を始めたいと思っております。ここからの展開が自分では大好きなので、ぜひおたのしみに!
★ 2024年3月 J.Garden55で【引きこもりの俺の冒険が~】第1部の本を販売予定です★
更新状況はTwitter/Xで。
ではまた!
ばつ森
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