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久しぶりに拠点に帰って、今後の方針を考えた。
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結局昨夜は半壊したギルンの屋敷の中でも、無事だった客室で一夜を過ごした。
ちなみにアハトさんとはいたしていない。彼女いわく「気分じゃなくなりましたので」とのことだ。……ちくしょう!
そして日が昇った今。俺たちはギルンからのお土産がたっぷり入った袋を持って、王都内某所に来ていた。
「よくこんな場所を見つけたな……」
「ファンタジー情緒あふれる世界の王都です。探索していて心躍りました」
実は早朝、アハトに頼んで転移装置をセットしておいてもらったのだ。どこに設置するか悩んだが、とりあえず王都内で人気のない場所をリクエストしておいた。
アハトが見つけた場所は、王都南西部に位置していた。かなり広い王都において、あまり人が住んでいなさそうなエリアだ。近くに民家はないし、道もまったく舗装されていない。
転移装置が設置されたのは、この区画の片隅だった。ちょうど草木も生えており、転移装置自体も目立ちにくい。
「つかこの辺り、石畳とかで整地されていないんだな。地面とかむき出しだし」
『これだけの広さを持つ都市だ、さすがにすべて整地はできないだろう』
道や地面が舗装されているのは、あくまで中心街とかの一部なんだろうな。
『転移装置自体はもう使える。この場は一度シグニールに帰還し、道具の整理といこう』
「ああ」
さっそく転移装置に乗る。そしてリリアベルが起動させると、次の瞬間には景色がシグニール内に変わっていた。
「え!? すご……!? 本当にキルヴィス大森林に戻ってきた!?」
初めての転移を経験したリュインは本気で驚いている。
そんな彼女を横目に、俺は荷物を下ろしていった。するとさっそく飛んできた複数のドローンが、それらを回収していく。
『いくつもの魔道具に、よくわからん素材……。うむ、上々だな』
「リアクター修理に使えそうか?」
『それはまだわからん。だが使えそうなものはマテリアルルームで加工していく』
とりあえずこんな感じで、これからもシグニールに素材を持ち込めば、リリアベルさんがいい感じにしてくれるということだろう。
『しかし辺境の星だからといって、油断はできんな。あの魔道具はわたしの方でも視界が潰された』
「ああ、あの……〈黒室〉といったか。あれはたしかに、初見では対応が難しいな」
次はちゃんと対策を考えているけど。
だが発動されてしまうと、一瞬とはいえ完全に視界がブラックアウトしてしまう。帝国宇宙軍の装備をもってしても、だ。
「魔力による身体能力の強化も初めて見たな。ありゃたしかに、並のヒューマンを超えている」
「リュインをさらった男よりも、ハルトの方がいくらかマシな強化ができていましたね」
「そうなの?」
俺から見れば、両者のちがいはよくわからなかったが。言われてみれば、ハルトの動きはかなりキレがあったと思う。
まぁ俺やアハトの敵じゃないけどな!
『あの現象も興味深かったな。リュイン、お前は身体能力の強化はできんのか?』
「できないわよ。それができるのは〈空〉属性の魔力を持つ者だけだもの」
「…………ん?」
『〈空〉属性? なんだそれは』
また不思議ワードが出てきた……! リュインは宙に浮くと、背中を反って人差し指を立てる。
「ふふん。いいわ、異世界人であるマグナたちにこのリュインお姉さんが教えてあげる! 魔力にはいくつか属性があるのよ!」
「ほう……」
リュインによると、魔力には5つの属性があるらしい。その中で身体能力が強化できるのは〈空〉属性の魔力とのことだった。
「他にもドカーン! ゴロゴロー! ……って、魔術が使えるのは〈月〉属性ね! ほら、この間の腐れアンデッドが使っていた魔術のことよ!」
「ああ……なるほど」
あいつは炎とか出していたしな。いわゆる「これぞ魔術だな!」というやつは、〈月〉属性に分類されるのだろう。
「あとは特殊なモノを具現化できるのが〈幻〉属性よ! 〈フェルン〉は基本的に、〈月〉か〈幻〉属性の魔力に覚醒するわ」
そしてなんの特徴もない〈無〉属性と、いずれにも当てはまらない〈星〉属性があるらしい。
つか〈幻〉属性の説明が聞いてもよくわからん。
『……まて。その言い方だと、覚醒する魔力属性には種族差があるのか?』
「んー……たぶんそうなんじゃない? わたしもよくわからないけど」
『ええい、肝心なところがいつも抜けおってからに……!』
いや本当に。いつも説明が大味なんだよな……。
「そういえばどこかで、男女でそれぞれまたちがう傾向があるとか聞いたような……? とりあえず魔力には5つの属性があるっていうことよ!」
魔道具は魔力を持ってさえいれば、属性関係なく発動させられるらしい。
しかしなんでそんな属性に分けられてんのかね……。血筋とか関係あるんだろうか。
たしか高位貴族ほど強い魔力が発現しやすいという話だったし。魔力の素養と遺伝は関係があるんだろう。この辺りもリリアベルが興味を持ちそうなテーマだ。
「属性は1人1種類のみなのですか?」
「基本的にはね! でも例外もあるわ」
「例外?」
「精霊と魔獣。あと竜魔族よ」
精霊化を果たしたものは、例外なく魔力を保有している。そして位が高まった個体は、複数の属性を保有しているらしい。
また討伐難易度が高い魔獣も、複数の属性を保有しているケースがあるとのことだった。
とくに伝説に謳われるような魔獣は、だいたい〈空〉属性となにかを持っているものらしい。
「いわゆる人種の中では、竜魔族だけが複数の属性を持つと」
「っていう話を聞いたことがあるってだけだけど! わたし自身は竜魔族を見たことないし~」
「そうなの?」
「うん。竜魔族は、なんとかっていう国くらいにしかいないのよ」
またざっくりしすぎた説明をしやがって……。
魔力についておおよその知識は得られたが、詳細な部分はすっぽり抜けている。
「まぁいいや。今日はシグニールで休むとして、明日からの計画を立てようぜ」
「さんせーい! お金はたくさんあるしぃ! 王都中の酒場をコンプリートしなくちゃ!」
「四聖剣はどうした!?」
こいつ、たぶん俺たちの中で一番酒好きだわ……! 見た目的には一番幼いのに……!
『方針はお前たちに任せる。わたしはしばらく素材の解析を進めているから、なにかあったら呼んでくれ』
そう言うと腕輪の光が暗くなる。実際にいなくなったわけではないから、声をかければどこからでも反応するだろうけど。
「では今後の方針を決めましょうか」
いつになくアハトもやる気に満ちている。ちょっと前までは自室に引きこもりたがっていたのに……!
「主な方針は2つになると思います」
「……2つ?」
「1つ目。王都に滞在し、四聖剣などの情報を集める。2つ目。魔獣大陸を目指す」
そうだ……そもそも俺もアハトも、冒険者として名を馳せたいんだった……!
金や食い物の心配がない以上、どうしても楽しいと思えることに集中したいものだ。
レグザさんから聞いた感じだと、冒険者は想像していたものとはすこしちがいそうだけど。だがそれはそれとして、魔獣のはびこる大陸で冒険するというのも心躍る。
「はいはーい! 確認させてー!」
「なんだ?」
「転移装置って、あと1個だよね? 増やせないの?」
リュインの疑問に対し、腕輪からではなく艦内スピーカーからリリアベルが答える。
『増やせるぞ。ただし時間がかかる。今しばらくは残り1個のままだ』
「ふんふん、なるほど……。それじゃやっぱり、魔獣大陸に行きましょう!」
そう言うとリュインは天井に指を向ける。なにを指しているんだ……。
「なぜです?」
「魔獣大陸は、各地の大陸との玄関口になっている港があるのよ。そこを起点にすれば……」
「大陸各地……いろんな国にアクセスしやすくなる、か」
この星にどれくらいの国があって、各国がどういう関係にあるのかはまったくわからないが。魔獣大陸に行けば、そこからいろんな国へ行けるかもしれない……か。
そう考えると、一度魔獣大陸に渡って転移装置を設置するのは有りかもしれないな。
うまくいけばシグニールを拠点にして、森の外と王都、魔獣大陸へ移動できるというわけだ。
「ならそれで行こう。魔獣大陸を目指しつつ、四聖剣の情報も集めるということで」
「いいでしょう。それで……リュイン。魔獣大陸へはどうやって行くのです?」
「え? 知らないわよ? 行ったことないもの」
つかえねぇ……! ま、まぁいい。それこそギルンに聞けばすむ話だ。
そんなわけで俺たちはこの日、シグニールでぐっすりと休んだのだった。
ちなみにアハトさんとはいたしていない。彼女いわく「気分じゃなくなりましたので」とのことだ。……ちくしょう!
そして日が昇った今。俺たちはギルンからのお土産がたっぷり入った袋を持って、王都内某所に来ていた。
「よくこんな場所を見つけたな……」
「ファンタジー情緒あふれる世界の王都です。探索していて心躍りました」
実は早朝、アハトに頼んで転移装置をセットしておいてもらったのだ。どこに設置するか悩んだが、とりあえず王都内で人気のない場所をリクエストしておいた。
アハトが見つけた場所は、王都南西部に位置していた。かなり広い王都において、あまり人が住んでいなさそうなエリアだ。近くに民家はないし、道もまったく舗装されていない。
転移装置が設置されたのは、この区画の片隅だった。ちょうど草木も生えており、転移装置自体も目立ちにくい。
「つかこの辺り、石畳とかで整地されていないんだな。地面とかむき出しだし」
『これだけの広さを持つ都市だ、さすがにすべて整地はできないだろう』
道や地面が舗装されているのは、あくまで中心街とかの一部なんだろうな。
『転移装置自体はもう使える。この場は一度シグニールに帰還し、道具の整理といこう』
「ああ」
さっそく転移装置に乗る。そしてリリアベルが起動させると、次の瞬間には景色がシグニール内に変わっていた。
「え!? すご……!? 本当にキルヴィス大森林に戻ってきた!?」
初めての転移を経験したリュインは本気で驚いている。
そんな彼女を横目に、俺は荷物を下ろしていった。するとさっそく飛んできた複数のドローンが、それらを回収していく。
『いくつもの魔道具に、よくわからん素材……。うむ、上々だな』
「リアクター修理に使えそうか?」
『それはまだわからん。だが使えそうなものはマテリアルルームで加工していく』
とりあえずこんな感じで、これからもシグニールに素材を持ち込めば、リリアベルさんがいい感じにしてくれるということだろう。
『しかし辺境の星だからといって、油断はできんな。あの魔道具はわたしの方でも視界が潰された』
「ああ、あの……〈黒室〉といったか。あれはたしかに、初見では対応が難しいな」
次はちゃんと対策を考えているけど。
だが発動されてしまうと、一瞬とはいえ完全に視界がブラックアウトしてしまう。帝国宇宙軍の装備をもってしても、だ。
「魔力による身体能力の強化も初めて見たな。ありゃたしかに、並のヒューマンを超えている」
「リュインをさらった男よりも、ハルトの方がいくらかマシな強化ができていましたね」
「そうなの?」
俺から見れば、両者のちがいはよくわからなかったが。言われてみれば、ハルトの動きはかなりキレがあったと思う。
まぁ俺やアハトの敵じゃないけどな!
『あの現象も興味深かったな。リュイン、お前は身体能力の強化はできんのか?』
「できないわよ。それができるのは〈空〉属性の魔力を持つ者だけだもの」
「…………ん?」
『〈空〉属性? なんだそれは』
また不思議ワードが出てきた……! リュインは宙に浮くと、背中を反って人差し指を立てる。
「ふふん。いいわ、異世界人であるマグナたちにこのリュインお姉さんが教えてあげる! 魔力にはいくつか属性があるのよ!」
「ほう……」
リュインによると、魔力には5つの属性があるらしい。その中で身体能力が強化できるのは〈空〉属性の魔力とのことだった。
「他にもドカーン! ゴロゴロー! ……って、魔術が使えるのは〈月〉属性ね! ほら、この間の腐れアンデッドが使っていた魔術のことよ!」
「ああ……なるほど」
あいつは炎とか出していたしな。いわゆる「これぞ魔術だな!」というやつは、〈月〉属性に分類されるのだろう。
「あとは特殊なモノを具現化できるのが〈幻〉属性よ! 〈フェルン〉は基本的に、〈月〉か〈幻〉属性の魔力に覚醒するわ」
そしてなんの特徴もない〈無〉属性と、いずれにも当てはまらない〈星〉属性があるらしい。
つか〈幻〉属性の説明が聞いてもよくわからん。
『……まて。その言い方だと、覚醒する魔力属性には種族差があるのか?』
「んー……たぶんそうなんじゃない? わたしもよくわからないけど」
『ええい、肝心なところがいつも抜けおってからに……!』
いや本当に。いつも説明が大味なんだよな……。
「そういえばどこかで、男女でそれぞれまたちがう傾向があるとか聞いたような……? とりあえず魔力には5つの属性があるっていうことよ!」
魔道具は魔力を持ってさえいれば、属性関係なく発動させられるらしい。
しかしなんでそんな属性に分けられてんのかね……。血筋とか関係あるんだろうか。
たしか高位貴族ほど強い魔力が発現しやすいという話だったし。魔力の素養と遺伝は関係があるんだろう。この辺りもリリアベルが興味を持ちそうなテーマだ。
「属性は1人1種類のみなのですか?」
「基本的にはね! でも例外もあるわ」
「例外?」
「精霊と魔獣。あと竜魔族よ」
精霊化を果たしたものは、例外なく魔力を保有している。そして位が高まった個体は、複数の属性を保有しているらしい。
また討伐難易度が高い魔獣も、複数の属性を保有しているケースがあるとのことだった。
とくに伝説に謳われるような魔獣は、だいたい〈空〉属性となにかを持っているものらしい。
「いわゆる人種の中では、竜魔族だけが複数の属性を持つと」
「っていう話を聞いたことがあるってだけだけど! わたし自身は竜魔族を見たことないし~」
「そうなの?」
「うん。竜魔族は、なんとかっていう国くらいにしかいないのよ」
またざっくりしすぎた説明をしやがって……。
魔力についておおよその知識は得られたが、詳細な部分はすっぽり抜けている。
「まぁいいや。今日はシグニールで休むとして、明日からの計画を立てようぜ」
「さんせーい! お金はたくさんあるしぃ! 王都中の酒場をコンプリートしなくちゃ!」
「四聖剣はどうした!?」
こいつ、たぶん俺たちの中で一番酒好きだわ……! 見た目的には一番幼いのに……!
『方針はお前たちに任せる。わたしはしばらく素材の解析を進めているから、なにかあったら呼んでくれ』
そう言うと腕輪の光が暗くなる。実際にいなくなったわけではないから、声をかければどこからでも反応するだろうけど。
「では今後の方針を決めましょうか」
いつになくアハトもやる気に満ちている。ちょっと前までは自室に引きこもりたがっていたのに……!
「主な方針は2つになると思います」
「……2つ?」
「1つ目。王都に滞在し、四聖剣などの情報を集める。2つ目。魔獣大陸を目指す」
そうだ……そもそも俺もアハトも、冒険者として名を馳せたいんだった……!
金や食い物の心配がない以上、どうしても楽しいと思えることに集中したいものだ。
レグザさんから聞いた感じだと、冒険者は想像していたものとはすこしちがいそうだけど。だがそれはそれとして、魔獣のはびこる大陸で冒険するというのも心躍る。
「はいはーい! 確認させてー!」
「なんだ?」
「転移装置って、あと1個だよね? 増やせないの?」
リュインの疑問に対し、腕輪からではなく艦内スピーカーからリリアベルが答える。
『増やせるぞ。ただし時間がかかる。今しばらくは残り1個のままだ』
「ふんふん、なるほど……。それじゃやっぱり、魔獣大陸に行きましょう!」
そう言うとリュインは天井に指を向ける。なにを指しているんだ……。
「なぜです?」
「魔獣大陸は、各地の大陸との玄関口になっている港があるのよ。そこを起点にすれば……」
「大陸各地……いろんな国にアクセスしやすくなる、か」
この星にどれくらいの国があって、各国がどういう関係にあるのかはまったくわからないが。魔獣大陸に行けば、そこからいろんな国へ行けるかもしれない……か。
そう考えると、一度魔獣大陸に渡って転移装置を設置するのは有りかもしれないな。
うまくいけばシグニールを拠点にして、森の外と王都、魔獣大陸へ移動できるというわけだ。
「ならそれで行こう。魔獣大陸を目指しつつ、四聖剣の情報も集めるということで」
「いいでしょう。それで……リュイン。魔獣大陸へはどうやって行くのです?」
「え? 知らないわよ? 行ったことないもの」
つかえねぇ……! ま、まぁいい。それこそギルンに聞けばすむ話だ。
そんなわけで俺たちはこの日、シグニールでぐっすりと休んだのだった。
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