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町に帰って祝杯をあげました。

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 無事に町に帰った俺たちは、ルシアたちと一緒にファルカーギルドへと向かう。そこで狩った魔獣を引き取ってもらった。
 
「マグナ、アハト。それにリュインも。今日はありがとう……」

「おう! おっちゃんに頼まれたしな! いいってことよ!」

「フ……おかげでいろいろと楽しめました」

「うんうん! 四聖剣を狙っている〈フェルン〉の話も聞けたし!」
 
 その〈フェルン〉、最高ランクのファルクマスターだって話だし。きっとすっげぇ船を持っているんだろうな……。
 
 とにかくおっちゃんの頼まれごとはこれにて終了だ。この大陸や冒険者に対してあらためていろいろ知れたし、すごく充実した1日だったな。
 
 夕食はおっちゃんの奢りだし。タダ飯とタダ酒飲んで宿に帰るか……と考えていると、ルシアがどこかモジモジしていた。
 
「ほらマスター。言うならはやくしないと……」

「そ……そう、ね……」
 
 なんだ……? まだなにか用があんのか……? 

 もしかしたらこのあとの打ち上げのお誘いかな。たしかルシアたちも、おっちゃんの店を予約していたし。
 
「あの……あなたたち。よかったらなんだけど……」

「待て。ここでは目立つ。せっかくラングが個室を用意してくれているんだ、話はそこでもいいだろう」
 
 割って入ってきたのはオボロだった。言われて気づいたが、たしかに周囲の冒険者やギルド職員がこちらに視線を向けてきている。
 
 アハトは目立つからなぁ……と思っていたが、彼らの視線はルシアにも向いていた。
 
「……オボロの言うとおりだわ。マグナたち、このあと時間はある? よかったら一緒にどうかしら?」

「まぁ……俺はべつに構わないが……」

「わたしも構いませんよ」

「もちろんわたしも!」
 
 

 
 
「はっはっは! よく無事で帰ってきたな! ほらちゃんと料理は作っておいたぞ!」

「おお、サンキュー!」
 
 ラングは俺たちの顔を見るなり、安心したように笑顔を見せていた。そのまま二階の個室に通され、どんどん料理と酒が運ばれてくる。
 
「おいひー!」
 
 リュインはさっそく酒をガブ飲みしていた。〈フェルン〉サイズの食器やジョッキがあるのは、さすが魔獣大陸といったところか。
 
 俺も腹がへっていたので、遠慮なく飯を食っていく。

 ……くぅ! 味付けのこいソースがかかった肉を食い、一気に酒を飲むこの感触! たまらんぜ!
 
「よく食うなぁ!」

「ルシア。まずは初日を無事に終えられたこと、喜ばしく思う」

「あ……ありがとう。オボロ……レッドも」
 
 やはりこの3人、つい最近からの付き合いって感じじゃねぇな。たぶんずっと前からの知り合いなんだろう。ラングも含めて。
 
「いやぁ……すっげぇ冒険者になりたくて魔獣大陸に来たのによぉ。なんだか思っていた生活とちがうな……と思っていたんだよ。でも今日、いろいろあっただろ? あらためて冒険者っていいな……て思ったぜ!」
 
 酒でテンションが上がり、上機嫌で口を開く。これに興味を持ったのはルシアだった。
 
「……そうなの? ちなみにどこがいいと思ったのかしら?」

「おう! やっぱあれだな。未知のエリアを探索し、未発見の遺跡などを発見する……魔獣を狩るよりもそっちの方が、冒険者らしくていいと思ったんだよ!」
 
 これは本心だ。ああいう立派な船を持って魔獣大陸を巡る。ロマンがあっていい……!
 
「アハトはどうよ?」

「そうですね……それに関してはこの数日で、わかったことがあります」

「え? なんの話?」

「どうやらわたしは、魔獣と戦うよりも人と戦う方が向いているようです」

「聞きようによってはすっげぇ物騒だな……」
 
 たしかに今日も、魔獣相手に積極的じゃなかったもんなぁ。
 普段ならここぞとばかりに自分の力を振るいそうな場面だったのに。
 
「つまりは魔獣を狩って名声を得る……というよりは、それ以外の方法で冒険者としての名を高めていってもいいかと……そう思う次第です」

「なんだ、俺と同じじゃねぇか」

「フ……まぁ部分的にそう、と申しておきましょうか」

「どういう意味でぇ」
 
 だがアハトも冒険者を続けたいという気がありそうなのはわかった。
 気になることもあるけど。あとで確認しておくか。
 
「はは。すると〈アリアシアファミリー〉のような活動がしたいわけだ」

「イメージしているのはそこだなぁ」

「冒険者の基本は魔獣狩り。アリアシアはかなり特殊な例だ」
 
 まぁそうだな。そもそもギルドの敷いているルールからして、冒険者は魔獣を狩ってナンボの商売になっている。

 アリアシアも自組織の維持のため、そこは怠っていないだろう。
 
「でもファルクって、俺たちみたいな新人は簡単に結成できないんだろ? ラングの話だと、腕っぷしだけ強くても関係なさそうな感じだったし」

「……そうね。さまざまな国から人が派遣されて運営を行っているファルカーギルド……そこの認可を受けるのだもの。政治的な思惑が絡むことがあるのも事実よ」

「…………ふぅーん」
 
 いかにも意味ありげな感じだな。まぁ突っ込まないけど。

 という俺の考えなどまるで無視して、リュインは元気よく叫んだ。
 
「でもでも! ルシアたちはファルクを結成できたんでしょ!? たった3人なのに! ねぇねぇどうして!? わたしもマグナとアハト、リリアベルと一緒に〈リュインファミリー〉を結成したーい!」

「お前がマスターなんかいっ!」
 
 なんでや! つか聞きにくかったところを、どうどうと聞きやがった……!
 
 リュインの発言にレッドは苦笑し、オボロは無表情のままだ。ルシアは曖昧な表情を浮かべていた。

 ぜったい個別の事情があるな……! いや、わかっていたけど!
 
「ねぇねぇねぇねぇ! 教えてよルシアー!」
 
 しつけぇ! だがある意味ナイスだリュイン!

 俺が聞くよりも、彼女の方がまだ警戒されにくいだろう。そもそも言いたくなければ、いくらでもまるめこめそうだし。
 
 だがルシアは真剣な表情で俺たちに視線を巡らせた。
 
「そうね……マグナたちにはいろいろお世話になったし。すこしなら事情を話しても構わないわよ?」

「え? まじで?」

「やったぁ!」

「ええ。でもその前に……あなたたちに聞いておきたいことがあるの」
 
 一瞬だが、幼いルシアの顔つきがやや大人びて見える。なんとなく背筋が伸びそうになった。
 
「ねぇ……マグナ、アハト、リュイン。あなたたち……わたしのファルクにこない?」

「……………………」
 
 これは……あれか。いわゆるスカウトというやつか……。

 ルシアの言い方からして、断っても事情を聞かせてはくれるんだろうけど……。
 
 アハトも確認するように口を開く。
 
「それはわたしたちに、ルシアの軍門に降れということでしょうか?」

「え!? そ、そう言われるとものすごくえらそうに聞こえるわね……。ニュアンスはちがうけど、わたしをマスターとする組織で働かないか、という意味ではあるわ」
 
 やや焦った表情で、ルシアは言葉を続ける。
 
「互いにメリットのある提案だと思うのよ。わたしたちはまだどこのファルクにも目をつけられていない、マグナたちという人材を得ることができる。マグナたちもファルクに所属することで、魔獣大陸での活動がしやすくなるでしょう?」
 
 そこだけ聞くと、たしかにお互い損のない提案なんだよなぁ……。
 そもそも冒険者というのは、ファルクに所属していないと活動しにくいようにできているし。
 
 だが俺はまだどこかのファルクに所属するということに対して、肯定的に考えられなかった。その理由は2つ。
 
 1つ目は今さら上下関係のある組織で働きたくないという気持ちが大きいからだ。

 せっかく帝国軍人でなくなって、満足のいく人生を模索するための旅をしているところなのに。今すぐまたどこかの組織に所属するというのは、すこし抵抗がある。
 
 2つ目は、所属先のファルクに申し訳ないからだ。俺はその日どう生きるか、自分の意思で決めたい。毎日冒険者をやるとは限らないのだ。

 明日には転移装置を起動して王都に行き、金をばら撒いて遊んでいるかもしれない。
 
 ファルクに所属すると、その時の都合に合わせて勝手な行動はできないだろう。俺たちがいるいないで、行動計画が変わったりもするだろうしな。
 
 こうした理由から、ファルクに所属することに対して否定的だった。自分で立ち上げるのなら話は別なのだが。
 
 俺の表情をどう読んだのか、ルシアはすこし焦った表情で口を開く。
 
「もちろん待遇も厚くするわ。マグナの実力はよくわかったし。それに今なら、いずれ最大規模になるファルクの最古参メンバーになるのよ? なにせ結成初日だもの。将来は幹部も間違いなしだわ」

「そ……それは……いいな……!」

「でしょ!?」
 
 やべ、口が勝手に……! く……俺としたことが……! 

 だがかつてアイドルを後方で腕組みながら応援していた身からすれば、最古参メンバーというのは魅力的に思えてしまう……!
 
 オボロもフォローするように言葉を引き継ぐ。
 
「俺たちはどうしてもまだ少人数だからな。冒険者として、対魔獣戦で戦える人材は貴重だ。マグナは申し分ないし、おそらくアハトも相当な実力者なのだろう?」

「フ……わかりますか」

「あ……あぁ……」
 
 クールなオボロさんがすこしどもっている。
 でもこの様子だと、レッドとオボロの2人も、ルシアが俺たちを誘うことを知っていたんだな。
 
「……ちなみに待遇って?」

「聞いて喜びなさい。今ならなんと、わたしの使用していた杖磨きをさせてあげるわ! あとわたしが使用したあとの食器も洗わせてあげる!」

「いらねぇよ!」
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