オレ、母になる

tightening

祐希は、フツーの男子だった。

ほんの一年と少し前までは。


しかし、今は、外見は股間のペニス以外で、男だった痕跡を見つけることは困難、いや、不可能である。


それくらい女性化していた。


そもそも女として生まれてくるはずが、田子浦曰く、母のお腹の中で、性別決定の際に何らかのバグが生じ、男として生を受けた。

しかし、そんな下地があるからこそ、何らかのきっかけがあれば、このように一気に女性になってしまう可能性があったのだ。


祐希にとってのそれは、女性ホルモンの投与であり、これが体内に入った事により、一気に女性化したのだった。


勿論、肉体だけではない。

心理面でも急激に女性に近づき、今はもう、男性だった時の心象すら、ほぼ残っていない。


きっかけは、双子の姉のフィアンセを愛してしまった事からこのような事になったのだ、

しかし、結局は何も出来なかった。


彼を寝取ったところで、姉を悲しませるだけであり、誰も幸せにならない。

体が女性化するにつれ、そのような心境になっていった祐希は、実る事のない恋愛を諦めてしまった。


そして、後に残ったのは女性化したこの肉体と、著しく変化してしまった心象だけであった。


女性ホルモンの影響で、鬱になり、そして、異常に寂しがり屋になってしまった祐希は、その心の穴を埋めるべく、今、瑛太と繋がろうとしていた。