オレ、母になる

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ワタシの正体

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「キミは、本来女としてこの世に生を受けるはずだった。

胎児の性別は、受精時に父親の精子が持つX染色体とY染色体のどちらが母親の卵子と結合するかによって決まる。

卵子は常にX染色体を持っており、精子がX染色体を持っていれば女の子（XX）、Y染色体を持っていれば男の子（XY）になるってわけだ。

だが、ごく稀に、一卵性双生児でも性別が異なるケースが報告されている。
これは、受精卵の性染色体がXXY型であった場合、分裂時にXX（女）とXY（男）に分かれることで、異性の一卵性双生児となる可能性があるのだ。
しかし、このようなケースは非常に稀であり、キミら以外には、世界に3組もいないくらいだ。

そして、キミについてだが、私が今話したパターンとは別で、男になり、生まれてきたケースであると、判断している。」

長々と興奮気味に話す田子浦に、祐希は少しうんざりしながら、耳を傾けていたが

「では、先生

ワタシが男として生まれてきた理由は一体何なんでしょうか？」

と、答えを聞くとを急ぎ、早口で質問した。

「一言で言うならば、ゲノムのバグだよ。」

「ゲノム？

バグ？…」

「まあ、医学用語としては不適切だが、ゲノムの突然変異、若しくは、性別の決定に関わる遺伝子が影響を受けた。

それもキミだけが…」

「おっしゃっている意味がよくわかりません。」

「そうだね。

少し、わかりやすく説明しよう。

本来、キミは女として生まれてくるべきだった。
しかし、何らかの条件が重なり合い、男として生まれてきた。

つまり、少しのきっかけを与えれば、キミの性別は簡単にひっくり返る状況にある。」

「…」

「いま、キミはたしか、ホルモン治療を行い、女性的な体になっているね。」

「はい…」

「それこそが、きっかけであり、背中を押す行為なのだよ。

いくら素養があっても、男が女性ホルモンの注射をして、そのような大きな胸になる事は、絶対にない事だよ。」

田子浦は、そう言い切った。

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