オレ、母になる

垣根

「そろそろ帰るわ。」


瑛太は、立ち上がると


「ご馳走様でした。」

と、あらためて、作ってもらった食事の礼を言った。



「ううん。

来てくれてありがとう。」


祐希は、また寂しそうな表情を浮かべて言った。


瑛太は、そんな祐希の姿を見て、一瞬、我を忘れてしまった。




そして、気が付いたら…
　

祐希を強く抱きしめていた。



「えっ…」


祐希も、突然のことに、思わず声が出てしまった。


瑛太は、しばらく抱きしめていたが、すぐに我に返り、その手を離し、顔を真っ赤にして


「ごめん！」


と、頭を下げた。



「瑛太…」



瑛太は、真希に、密かに想いを寄せていた。

しかし、言い出す事が出来ずにいるうちに、真希に恋人が出来て、学校から去っていった。


今の祐希は、真希そのものであり、外見での区別は全くつかない。


それが錯覚を起こさせたのか、つい、抱きしめてしまったのだった。



「本当にごめん…


それじゃあ、帰るわ。

飯、ありがとう…美味しかった。


…」


瑛太は、ぎこちなく謝意を伝えると、そのまま玄関に向かおうとした。

しかし


「待って」


祐希は、瑛太の腕を持って引き留め、こっちを向かせると、徐に抱きつき、キスをした。


今度は、祐希の方から能動的に来たため、瑛太もそのまま受け入れ、唇を合わせ、舌を捻じ入れた。