Dad, save me

フロイライン

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1990年当時、全ての大学病院にMRIが導入されており、2015年と変わらない検査が受けられるようになっていた。


俺も、親父のコネを使わせてもらい、無理を言って、急遽順番に入れてもらって検査をした。


体感的には、昨日結果を聞いたばかりで、検査自体も最近やった感じがする。
いや、実際に最近検査したのだ。
正確に言うと、検査をしたのは二十五年後の話だけど。



「特別に、すぐに結果を教えてもらえるようにしているから。

少し待っておいてくれ。」


親父は、俺にそう言うと、知り合いなのか、医師と二人で診察室のような部屋に消えていった。


「まあ、この検査は、形式的なもんだよ。
君が末期癌ということは変わりないのだから。


目的は、高野君が完成させたとされるガンの特効薬を使用することだ。

結果が出たら速やかに進めてもらおう。」


「はい…」


そうなんだよなあ

二十五年前という、生まれる前に来た俺は、自分が末期癌で余命が幾許もないことをすっかり忘れていた。

俺が生きるか死ぬかは、親父にかかってるんだ…


頼むぞ…


あ、そういえば…


「あの、山中先生」



「ん?

どうした」



「お母さん…

あ、いや

奈美さんはどうしてますか?」



「奈美…

ああ、田村君か」


「はい。」


「ちょっと待て

今、お母さんて言った?」


「はい。

言いました。」


「田村君と高野君が…」


「あの、未来の山中先生からは、三人でよく遊んだって聞いてますが…」


「うん、まあ…

そうだね…」 
 

山中教授は、なぜかこの時、少しヘンな表情になったのを、俺は見逃さなかった。


「母は、たしか…

山中先生や父と同じ大学にいたって…」


「ああ。
そうだよ。

言われてみればそうだな。

キミは田村君とそっくりじゃないか。

っていうか、瓜二つだよ。」


「周りからは、親父に全然似てないって言われてて…

みんな、俺のことをお母さん似だって…」


「まさしくそうだね。

化粧をしたらもっと似るんじゃないか。」


あ、そうか

俺は今、女になってたんだ。

うーん、ヘンな気持ち。


「俺、もうすぐ死んじゃう可能性が高いし、最後にもう一度、お母さんに会っときたいなって。

俺の事は知らないだろうけど。」



「そう言うな。

高野君の特効薬できっと治るよ。

だから、物事は前向きに考えるんだ。」


「はい。
すみません…」



「私の見立て通り、君が過去に来て高野君と接触してもタイムパラドックスは起きなかった。

奈美君と会っても何も起きないだろう。

検査の結果を聞いて、高野君から今後の治療方針を聞いたら、奈美君を呼び出して、飯でも食べに行こう。」


「はい。

ありがとうございます。」


俺は、山中教授に礼を述べた。

まあ、診断結果は変わらないだろう。

この気持ち…

どう表現したらいいのだろう。
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