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嵐の前
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「アンタ! どういうつもりなん!?
こんだけ助けてもろといて、裏切るやなんて
ホンマにアンタって女は人間のクズや!」
いきなりビンタしておいて、さらに大声で叫ぶ、派手なメイクの女…
「おい、何すんだ!」
多喜が慌てて間に入って、さらに、亮輔につかみかかろうとする女の両手首を掴んだ。
「なんや、アンタは!?ちょっと離しいや!!」
女は手を振り解こうと、体を左右に動かした。
「お前、いい加減にしろよ!いきなり何しやがるんだ!? 俺達はお前なんて知らねーよ!」
「本当よ。私はあなたの事なんて、全然知らないわ。」
亮輔は、思わず男の部分が出てキレそうになるのを必死に抑えながら、敢えて落ち着いた口調で言った。
「… そう言うたら声がちょっと違うような‥でも、顔は綾香そのものやし…」
女は少しトーンダウンしたが「綾香」という名前が出たことで、今度は逆に亮輔と多喜がたじろいだ。
「とにかく、人違いだよ。普通だったらタダじゃおかねえとこだけど、今回だけは見逃してやらあ。早く消えろ。」
多喜はヤクザの本領を発揮して睨みをきかせながらも、騒ぎを大きくするのは得策ではないと判断し、冷静な口調で言った。
女は不満げな表情を浮かべながら去っていった。
「気の強え女だぜ… 大丈夫ですか?
専務…」
「うん…大丈夫。」
亮輔は頬をさすりながら去って行く女の後ろ姿を目で追った。
「専務、あの女‥綾香って言いましたよね?」
「うん… 多喜、昨日私があんたに言ったこと覚えてる? 本物の綾香はもういないっていう話…」
「ええ…」
「綾香はこの街にいるわ。それも沢木組のシマにね。」
「えっ!? じゃあ…」
「そう。だから、今日ここに私達が来たことと、今の女に遭遇したことは決して偶然じゃないわ。 多分…」
「社長に何か企みがあると?」
「間違いないわ。」
「どうします?」
「今はまだ何も出来ないわ…」
二人は雑踏の中で、立ち尽くした。
こんだけ助けてもろといて、裏切るやなんて
ホンマにアンタって女は人間のクズや!」
いきなりビンタしておいて、さらに大声で叫ぶ、派手なメイクの女…
「おい、何すんだ!」
多喜が慌てて間に入って、さらに、亮輔につかみかかろうとする女の両手首を掴んだ。
「なんや、アンタは!?ちょっと離しいや!!」
女は手を振り解こうと、体を左右に動かした。
「お前、いい加減にしろよ!いきなり何しやがるんだ!? 俺達はお前なんて知らねーよ!」
「本当よ。私はあなたの事なんて、全然知らないわ。」
亮輔は、思わず男の部分が出てキレそうになるのを必死に抑えながら、敢えて落ち着いた口調で言った。
「… そう言うたら声がちょっと違うような‥でも、顔は綾香そのものやし…」
女は少しトーンダウンしたが「綾香」という名前が出たことで、今度は逆に亮輔と多喜がたじろいだ。
「とにかく、人違いだよ。普通だったらタダじゃおかねえとこだけど、今回だけは見逃してやらあ。早く消えろ。」
多喜はヤクザの本領を発揮して睨みをきかせながらも、騒ぎを大きくするのは得策ではないと判断し、冷静な口調で言った。
女は不満げな表情を浮かべながら去っていった。
「気の強え女だぜ… 大丈夫ですか?
専務…」
「うん…大丈夫。」
亮輔は頬をさすりながら去って行く女の後ろ姿を目で追った。
「専務、あの女‥綾香って言いましたよね?」
「うん… 多喜、昨日私があんたに言ったこと覚えてる? 本物の綾香はもういないっていう話…」
「ええ…」
「綾香はこの街にいるわ。それも沢木組のシマにね。」
「えっ!? じゃあ…」
「そう。だから、今日ここに私達が来たことと、今の女に遭遇したことは決して偶然じゃないわ。 多分…」
「社長に何か企みがあると?」
「間違いないわ。」
「どうします?」
「今はまだ何も出来ないわ…」
二人は雑踏の中で、立ち尽くした。
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