ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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代理戦争編

陽動

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庄山出所を翌日に控え、沢木組は臨戦体制と最大級の警戒体制に入っていた。


陣頭指揮に立つ山崎は、その参謀役の赤石功太に言った。


「赤石、今からオヤジを迎えにいくぞ。」

と‥


「待ってください。

オヤジは明日出てくるんとちゃうんですか?」


「アホっ、それはウソの情報や。
陽動作戦っちゅーやつや。

前々からウソの出所日をリークしておき、その前日に奴らを出し抜こうっていう算段や。」


「なるほど、それやったら大丈夫でんな。」



「いや、そんな簡単な事やない。

奴らもアホとちゃうやろうから、何処ぞで24時間体制で今も監視しとる筈や。

奴らに悟られんために、機動隊も近づけさせられんから、ピンポイントでの警護になるのがこっちとしても難しい。」


「それでも、ガチでやり合うにはあまりにもこっちが不利ですわ。

向こうは狙う場所がわかってて、こっちは何処から狙ってるのかわからないっていうのが。」


「まあ、そういうことや。

ベストな選択肢はない。ここはベターな選択をするしかない。」


沢木組の構成員四名は、潜伏先の垂水組所有の物流倉庫の事務所を出て、構内に停めてあった車に乗り込んだ。


メンバー的に言えば、赤石功太が運転するべきところだが、左腕を負傷しているために後部座席に座っていた。


「アニキ、えらい古い車でんな。

これも垂水組からでっか?」

赤石が車内を見渡しながら言うと、山崎は

「八十年代のやつやからな。

まだヤクザ同士の抗争が表立って行われてたとき、垂水組の先代、いや、その前の組長やったかが、防弾ガラスに超鋼板を使って装甲を厚くした車を特注で作ったんや。

まあ、抗争もなくなり、こんな車も必要ないと思てたら、令和の時代にドンパチやろうっちゃうアホが出てきたって話やな。」


「いやあ、江戸時代の武士と同じで、泰平の世の中で刀の使い方もわからんようになっていたんと同じ心境ですわ。」

功太の隣りに座る木村が呟くように言った。

「それ、どういう意味でっか?」

まともに学校に行っていない功太には、話の意味がさっぱりわからず、困惑した。


「ええか、これから行く大阪刑務所は正面の通りは見通しが良く、身を潜めるのには適してないが、逆を言えば狙われやすいっちゅーこっちゃ。

有利でも不利でもない。

勝負は門を出てから、オヤジを車に乗せるまでの僅かな時間や。
みんな気を引き締めてかかってくれ」

到着を前に、山崎は同行者三名に気合を入れた。


「でも、おかしな話でんなあ

そんなんやったら門の中まで車を入れさせてくれたら、こっちも苦労せんのに。」

ずっと黙って聞いていた田坂が、ハンドルを握りながらボヤいた。


「まあ、大阪府警が協力してくれる言うても、全面的にやなくて一部の部署がしてくれてるだけやからな。

刑務所の連中とは管轄、命令系統も全くの別もんやし、所詮はお役所仕事や。
迎えのヤクザの車を中に入れてくれるわけあらへん。」




現地に近づき、四名の顔に緊張感が広がっていった。
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