ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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懐柔編

空白のとき

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式場の外を、ガードマンが周りを警戒しながら歩いていたが、同僚が向こうから歩いてくると、敬礼のポーズを取った。

「そっちはどうだ?」

「異常なしです。」

二人は、そう言葉を交わすと、さらに近づき、小さな声で会話を続けた。

「まあ、こんな状況下で変な考えを起こす奴なんているわけないな。」

「そうですね。
我々警察もこうやって色んなところに配置されていますし。

ネズミ一匹入る余地はないってことです。」


そう、二人はただのガードマンではなく、大阪府警の警官が変装し、警戒していたのだ。


大阪府警はこの結婚式を無事に済ませるために多勢の警官を配置していた。

それは、垂水組との信頼関係があったからだ。

抗争という、昭和まで盛んに行われていたヤクザの風習みたいなものも、その後の警察や市民の力で封じ込めに成功し、今や抗争という言葉は死語となった。

しかし、昔の激しいヤクザのスタイルを求める大友組により、長らく続いた平和は破られ、一気に危機的な状態に舞い戻ったのである。

勿論、これを放置は出来ない。

かといってヤクザの抗争である。

ケンカを売られたら買うのがヤクザの習性であり、大切にしてきた矜持である。

大友組のケンカの相手は沢木組であり、その後ろにいる垂水組であった。

全面戦争になると、この大阪ミナミの街は火の海となり、どれだけ犠牲者が出るかわからない。

警察は、大友組を封じ込めると約束し、その代わりに、挑発に乗らないよう垂水組に伝えた。

垂水組は警察の条件を了承し、大友組の挑発に乗らず、沢木にも自制するよう命じたのだった。


警察としては、垂水組の誠意に応えるために、この結婚式を安全に終わらせる義務があった。

大人数で警戒にあたった甲斐があり、式は何事もなくスムーズに進行していった。


「よし、何とか無事に終われそうだな。」

ガードマンに変装していた警官の一人が、時計を見ながら呟いた


が…

次の瞬間、イヤホンにいきなり緊急連絡が入った。


「一階西側従業員用トイレに急行!」

という、逼迫した声で…



近くにいた警官が大急ぎでそのトイレにやってくると、中を調べるために入っていった。


「あっ!」


男子トイレの奥で、中年の男性が死亡していたのだ。
首に絞められた跡があった。


警察が周りを封鎖して調べる中、支配人の永山がやってきて、死亡した男と対面した。


「ウチの従業員で間違いありません。」


「この方は?」


「結婚式場で勤務の…」


「結婚式場?」


「はい…

あっ」


「どうされました?」


「服を着ていません」


たしかに、男性は下着姿のまま死んでいた。


「今日の朝はちゃんと制服を着て勤務に出てきてたんです。
今、やっている式にもスタッフとして参加しているはずなんですが…」


それを聞いた警官の一人は、ハッとして、思わず顔を上げた。
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