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地獄絵図

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真弥にも大量のドラッグを投与した桐山は、体を自由にして、智がいる部屋に放り込んで、外から施錠した。


「桐山さん、あの男を自由にして大丈夫なんですか?」


達也は不安そうな面持ちで桐山に聞いた。


「あのドラッグをナメちゃいけませんよ。
もう、美智香さんの旦那さんは脳に相当ダメージを受け、これが現実か夢かわからない状況にあると思いますよ。

しばらくはトモちゃんと楽しくすごせるでしょう。
クスリが切れたらまた補充しなきゃなりませんがね
効いてる時間が短いのがあのクスリの難点です。」


「…」


「それよりも、佐藤さん

我々はビジネスの話をしなきゃならんでしょう。
今後の事について、少し打ち合わせしましょう。」



「あ、ええ
そうですね」


「既に一千万、残りの四千万もすぐに佐藤さんの口座に入ります。

ウチへの融資分の返済を差し引いてもまだ二千万は残るでしょう?
これでもう一度会社を立て直すのも可能なんじゃないですか。」



「…
まあ、それは…」


「どうしたんですか、佐藤さん」


「桐山さん、やはり私には会社を経営する才はなかった…
今さら言うのもなんですが、やっと現実を思い知らされました。」


「なるほど

それなのに、何故このような事を?」


「認めたくなかったからですよ。
この現実を…


美智香の才覚で会社が成り立っていたという、私にとってはどうしても認めたくない残酷な現実を。

そして、その感情が、いつしか美智香への嫉妬心、憎しみに変化していき、彼女が大切にしているものを破壊したいという衝動に駆られたんです。」


「なるほど。
実際にやってみると、怖くなったということですか」


「いえ、怖くなったというより、虚しくなった

そういう感じです」



「ならば自首する事をお勧めしますよ

あなたは前科もないし、何年か実刑を喰らえば、すぐに社会復帰出来るでしょう。
ただ、出所してからの長い人生をどう生きていくは想像力を働かせていただきたいですがね」


「…」



「エリート街道を歩んでこられた佐藤さんが、前科者として残りの人生を生きていく姿は私もイマイチ想像出来ませんが、まあ、なんとかなりますよ。」


「…」


「私は前科もあるし、もう刑務所暮らしは二度としたくないので、計画通り進めさせてもらいますよ。

ほら、隣の部屋からすごい声が聞こえてくるでしょう?

このネタを美智香さんに突きつけて、警察に行けないようにしてやります。」


「…」


達也は何も答えなかったが、もう引き返せない段階に来ている事を悟り、桐山の計画に最後まで従う事を、改めて決めたのだった。
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