どんぐり

フロイライン

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愛しい人

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「お邪魔しまーす」

海里がそう言って、靴を脱いで家に上がろうとすると

「ワタシ以外誰もいないし、そんなこと言わなくていいの。」


ヒロトは、振り返り、少し呆れた口調で言った。


「てかさあ

この家に頻繁に来すぎて、もう自分の家みたいな感覚だよ。

遠慮も全然しねーし。」


「だったら、泊まってきなよ。

ねえ」



「いや、明日も学校あるし…」



「なんだ、つまんない」


「そう言うなって。

俺ら受験生だぜ。

ここに来てるだけでも、かなりヤバいことだって。」



「それはそうだけど…


ねえ、海里」



「なんだよ。」


「男の姿で女の心のワタシに慣れた?」


「どういうこと?」


「体が女のワタシについては受け入れてくれたけど、男の体になったワタシには、ちょっと…って感じだったわよね?」
  

「まあ、それは…

うん…」


「でも、ワタシの今のこの状態に、慣れてきたかなあって」


「それは、多少はね…」



「よかったあ。


でも、キスは出来ないよね?」


「それは、ムリかなあ…」


海里は、そう言うと、じっとヒロトの顔を見つめていたが、しばらくして


「出来ないこともない」  


と、呟いた。


「えっ、ホントに!?」


ヒロトは、海里の意外な答えに、頬を紅潮させ、嬉しそうに言った。
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