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理想と現実
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「園長先生、お話がありまして…
少しお時間をいただけませんか。」
翌日、遥は覚悟を決め、園長の四谷早紀のところに行った。
「話?
ええ、いいわよ。
まあ、そこに座って。」
早紀の夫で理事長である雅雄と兼用で使用している部屋に遥を呼び、向かい側のソファに座るように言った。
遥は、お辞儀をして着座すると、早速本題に入った。
「園長先生、実は…
三月いっぱいで退職させていただきたいと思いまして…」
「えっ…
石川先生、辞めるって…」
さすがにそのような話が出るとは思ってもみなかったのか、早紀は驚いて、思わず遥の顔を見た。
「申し訳ございません。
ワタシのような者を雇っていただいたのに、一年で辞めることになり…」
「石川先生…よかったらワケを聞かせて」
「はい。
あの…
この度、結婚する事になりまして…」
「えっ、結婚?」
「もちろん、園長先生もご存知のようにワタシは女性ではありませんので、籍には入れませんが。
いわゆる事実婚のような形で…」
「そうなの。
それはよかったわね。
おめでとう、石川先生。」
「ありがとうございます。
まさか、自分が結婚できるなんて夢にも思っていなかったもので…」
「それで、退職したいっていう話なのね。」
「はい。
申し訳ありません。」
「石川先生
私が詳しくはわかってないだけかもしれないから、失礼な事言ったらごめんなさいね。」
「あ、いえ
どうぞ。」
「石川先生がこの幼稚園教諭っていう仕事をすごく好きだっていう事は、私も側で見ていて、ひしひしと伝わってきたんだけど…
結婚しても続けるっていう道はなかったのかなって。」
「はい。
ワタシは幼稚園の先生になりたくて、学校でもその道に進むために勉強しました。
最初は男性として頑張ろうと思っていたのですが、大学の時、自分の性の違和感に我慢できなくなり、女性として生きる事を決めたんです。
これで、幼稚園教諭への道は閉ざされたかと思いましたが、理事長と園長先生のおかげで、こうして女性として採用していただきました。
その事については感謝してもしきれません。」
「何を言っているの。
感謝するのは私達の方よ。
あなたのように素晴らしい先生に来てもらえて、この上ない喜びよ。
だから、あなたには先生を続けて欲しいなって…」
「実は、今度結婚する相手の男性には子供がいまして…
まだ年中さんなんですが、お母さんが亡くなってから、シングルファーザーの家庭で、ずっと寂しい思いをしてきたんです。
だから…
これからはワタシが付いていてあげたい…
そう思ったんです。」
遥は自分の胸の内を早紀に熱く語った。
少しお時間をいただけませんか。」
翌日、遥は覚悟を決め、園長の四谷早紀のところに行った。
「話?
ええ、いいわよ。
まあ、そこに座って。」
早紀の夫で理事長である雅雄と兼用で使用している部屋に遥を呼び、向かい側のソファに座るように言った。
遥は、お辞儀をして着座すると、早速本題に入った。
「園長先生、実は…
三月いっぱいで退職させていただきたいと思いまして…」
「えっ…
石川先生、辞めるって…」
さすがにそのような話が出るとは思ってもみなかったのか、早紀は驚いて、思わず遥の顔を見た。
「申し訳ございません。
ワタシのような者を雇っていただいたのに、一年で辞めることになり…」
「石川先生…よかったらワケを聞かせて」
「はい。
あの…
この度、結婚する事になりまして…」
「えっ、結婚?」
「もちろん、園長先生もご存知のようにワタシは女性ではありませんので、籍には入れませんが。
いわゆる事実婚のような形で…」
「そうなの。
それはよかったわね。
おめでとう、石川先生。」
「ありがとうございます。
まさか、自分が結婚できるなんて夢にも思っていなかったもので…」
「それで、退職したいっていう話なのね。」
「はい。
申し訳ありません。」
「石川先生
私が詳しくはわかってないだけかもしれないから、失礼な事言ったらごめんなさいね。」
「あ、いえ
どうぞ。」
「石川先生がこの幼稚園教諭っていう仕事をすごく好きだっていう事は、私も側で見ていて、ひしひしと伝わってきたんだけど…
結婚しても続けるっていう道はなかったのかなって。」
「はい。
ワタシは幼稚園の先生になりたくて、学校でもその道に進むために勉強しました。
最初は男性として頑張ろうと思っていたのですが、大学の時、自分の性の違和感に我慢できなくなり、女性として生きる事を決めたんです。
これで、幼稚園教諭への道は閉ざされたかと思いましたが、理事長と園長先生のおかげで、こうして女性として採用していただきました。
その事については感謝してもしきれません。」
「何を言っているの。
感謝するのは私達の方よ。
あなたのように素晴らしい先生に来てもらえて、この上ない喜びよ。
だから、あなたには先生を続けて欲しいなって…」
「実は、今度結婚する相手の男性には子供がいまして…
まだ年中さんなんですが、お母さんが亡くなってから、シングルファーザーの家庭で、ずっと寂しい思いをしてきたんです。
だから…
これからはワタシが付いていてあげたい…
そう思ったんです。」
遥は自分の胸の内を早紀に熱く語った。
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