ハカイジ

妻の思い

安田からの突然の提案に、レンも愛果も固まってしまい、何も言葉を発せなくなってしまった。


しかし、愛果は気を取り直し、レンに向かって語りかけた。

「レン

大丈夫よ。

あなたのためなら何だって出来るわ。

だから…」


愛果は、刑期十年短縮のために、覚悟を決めた。

フツーであれば、女性側が了承すれば、これ以上やりやすい事はない。


しかし、レンはもはや男ではなく、いや、男であることには変わりないが、男性としての機能を消失している。

女に興味もなければ、裸を見ても下腹部から湧き上がってくるような興奮がないのだ。

その感覚を一言で表現するなら…

まさに、無味乾燥

その言葉がピッタリといった心境だった。



「おい、イヤならムリにする必要はないんだぞ。

奥さん

おたくの元旦那は、やるつもりがないそうだ。

帰ってくれるかね？」　　　


「…」

愛果が言葉を失い、硬直する中

ようやくレンが顔を上げ


「やります。」


と、宣言した。



「ほう、チャレンジするか。

お前の四則演算の成績が悪いのはご愛嬌ってとこだな。

さすがに最愛の奥さんが相手だと、俄然やる気が出るってもんか。」


安田は、レンが自分の話に乗ってきたのが嬉しくて仕方なく、思わず笑みが溢れた。

愛果は、覚悟を決めて立ち上がった。