ハカイジ

フロイライン

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伝説のN H

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「あの、また施設に戻られるんですか?」


愛果は、ここまで送ってくれた男に、車の外から声をかけた。


「はい。
戻ります。」


「あの、よかったらお茶でも飲んでいかれませんか?」


「えっ」


「また何時間もかけて大変でしょう。

よろしければ少し休んでいってください。」


男は一瞬、戸惑いの表情を見せたが、愛果の屈託のない笑顔にやられて、その言葉に甘える事にした。


愛果の住んでる部屋は、ワンルームで、狭いながらもきちんと掃除がされていて、清潔な部屋だった。

男は、場違いな感じがしたのか、少し赤面して部屋に上がった。


「あの、お名前は何ておっしゃるんですか?」


「え、私ですか?

あの、道下と申します。」


「道下さん、よろしくお願いしますね。」


愛果は、お茶を差し出しながら道下に言った。

慈愛夢グループの社員にしては、温厚で少し気弱な感じさえする道下は、ぺこりと頭を下げ、お茶を一口飲んだ。


「道下さん」


「はい?」


「あの安田会長って方は、どんな人なんでしょうか。」


愛果は、先ほど対峙していた安田のことを質問した。


「いえ、私は中途採用でして、会長とはほとんどお会いした事がなくて…」


「あー、中途採用だから、他の人と違って感じがいいんですね。」


愛果は、笑って頷いた。

すると、道下は


「あの、さっき私は、ご主人が会長のお気に入りだと話しましたが、何年か前に会長に気に入られて、すぐに施設を出た人間がいたんです。
せっかくですから、その話をさせて下さい。」

と、愛果に伝説の人物の話を始めた。
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