ハカイジ

キーとなる人物

道下と愛果は、会話を続けていた。


「安田会長は、ご主人のように強制的に性転換させた元男性が好きで、借金で首が回らなくなった人間達を施設に送り込んでは、自分の慰み物にしてその欲求を満たしていました。」


「それは、私もレンがされたことを見てよくわかりました。」


「ただ、昔はそのような施設は存在せず、ただの強制労働施設があっただけです。」


「そうなんですか。」


「ええ。

今のような会長の欲望を満たす施設が出来たのは、ある人物の存在があったからです。

その人物の名前は桑原和人。」



「…」



「あなたのご主人も美しいが、桑原和人も優劣付け難いくらいの美貌の持ち主でした。」


「そんな人が…」



「桑原和人は、あの施設から唯一、外に出ることを許された人間なんです。」



「えっ！」



「つまり、あの桑原和人に匹敵するくらいの美貌の持ち主であるあなたのご主人も、決して希望を捨てるべきではない。

特にあなたはね。」



「はい。

ありがとうございます。

気持ちを張って我慢張ります。」


「少し待ってください。」


道下は、携帯をポケットから取り出すと、画面を見ながら手帳に何やら書き込み、そのページを破った。


「これをどうぞ。」



「なんですか？」


「桑原和人は、今ここにいます。


よかったら訪ねてみてはどうですか。

ご主人を早く解放するヒントをくれるかもしれません。」


愛果は、その紙を受け取ると、道下に頭を下げた。