ハカイジ

真相

「おはようございます…」


レンは、その野太い声の女に頭を下げ、挨拶をした。
大いに動揺しながら。


「新人さん？」


「えっ…

はい…」


「いつ来たの？」


「一ヶ月くらい前に。」


「そうなんだね。
じゃあ新人さんだ。

よろしくね。」


「あの、男性の方なんですよね？」


「そうだよ。

キミと同じ。

ここに連れて来られて、手術されたの。」



「何でそんな事を…」



「地下勤務を希望したからよ。」


「それは自分もそうなんですけど…

まさか、こんな事をされるとは思ってもみなかったもんで。」


「そのうちわかるわ。

なんでこうなってしまったかっていう理由がね。」


「あの…教えていただけませんか。
その理由ってやつを。」


レンが執拗に質問すると、別の人間が近づいてきて


「ここでは私語は厳禁なのよ。」

と、レンがそれ以上喋ることを制止した。


さらに、続けて


「でも、あなたが合流したって事は、今日からワタシ達と一緒に体操をしたり、食事をしたり出来るって事なのよ。

昼休みにあなたの質問に何でも答えてあげるわ。

だから、もう黙って。」


と、言って、列に並ぶように言った。


レンも素直に詫びて、言われた通り、列の後ろに並んだ。



しばらくすると、中年で、自分達と同じようにジャージ姿で、ガタイのいい男が建物から出てきて、列の前に来た。
どうやら、体育教官のようだ。


「みんな、おはよう。」



「おはようございます。」


容姿は女性だが、声は全員野太く男声だった。


「始める前に、新人を紹介する。

平野蓮

前へ。」


レンを手招きし、自分の横に来させた。


「みんなと同じように地下勤務を希望した為に、処置を施され、今日から合流する事になった。

それでは、平野

みんなに一言挨拶をしろ。」


レンは、何が何だかわからなかったが、言うとおりにしないと、とんでもない事になりそうな気がしたので、慌てて頭を下げて挨拶をした。

「平野蓮と申します。

よろしくお願いします。」


と。


「みんな、仲良くしてやってくれ。


それじゃあ、授業を始めよう。」


教官の男は、レンを列に戻すと、準備体操を行うように指示を出した。